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目次

アリストテレス

  • 紀元前384年〜322年。
  • ギリシアのイオニア系植民地スタゲイラに生まれた。
  • 若き日のアレキサンダー大王を教える。
    • 資料が残されているわけではないが、アリストテレスはアレキサンダー大王に軍事遠征を科学的な観測に利用するように促したことと推測される。その甲斐あってか、アレキサンダー大王は軍事遠征に地図製作者たちを同行させた。そのとき製作された地図は残されていないが、武将たちが記した記録は残り、それが何世紀も後になって地図を製作するときの資料になった。
  • ギリシア哲学を総合して、初めて体系的な哲学を作り上げて、ヨーロッパ哲学の基礎を据えた。
  • アリストテレスの学園=リュケイオン
  • 当時の学問の中心はアテネであり、そこではソクラテスの弟子のプラトンがアカデメイアという名の学校をつくって教えていた。一七歳から三七歳までの20年間を、アリストテレスはこのアカデメイアで学んだ。アリストテレスの勉強ぶりはものすごく、「読書家」というあだ名をつけられたほどである。先生のプラトンも「他の弟子たちには拍車をかける必要があるが、彼には手綱がいる」といっている。
  • 紀元前348年、もしくはその翌年に先生のプラトンが死んだ直後に、アリストテレスはアテネを去った。アカデメイアの教育が理論と数学にかたより、アリストテレスの好んだ博物学を軽んじたこと、死の直前のプラトンがアカデメイアの後継者としてアリストテレスよりもはるかに才能のおとる自分の甥を選んだこと、当時のアテネとマケドノアが敵対関係にあり、アリストテレスがマケドニア派とみなされていたことなどがその理由であるとされている。
  • プラトンほどピタゴラス学派に傾倒してはいなかったが、ピタゴラスの考え方の多くを広範囲に及ぶ自身の著作に取り入れた。
    • アリストテレスはピタゴラス教団の人々を「不潔な菜食主義者たち」と呼び、嫌っていたとされる。
  • 形式論理学の規則を体系化した。
  • 地球は球体であり、その周りを太陽と月が回転していると説いた。
    • ピタゴラス、ピロラウスたちが地球が球体であることを説き、その後プラトンとアリストテレスという権威による後押しで、人々の心にしっかりと根を降ろすことになった。コロンブスの頃には、ほとんどの人が地球が球体であると思っていたのである。
  • キリスト教イスラム教もそうだが、中世の思想の根幹にはアリストテレス哲学の原理がある。

倫理学の出発

 アリストテレスは、「あらゆる人間の営みは善を追及する」(『ニコマコス倫理学』1094A1〜2)という認識から倫理学を始める。

 人々が「良い」というとき、どういうことをいっているかを考えた点が独創的である。この思索の結果、「全ての存在者は、本来その存在者に課せられた機能を十分に果たすとき、良いのである」(2097B24〜5)という結論に達した。つまり、その存在者の本来的自己の実現、あるいはその存在者の優秀性(アレテー)の発揮こそが、「良い」のである。

 現在では、「自己実現が幸福である」という思想は常識かもしれないが、これはアリストテレスのこの「自己本来の働きの発揮が善である」という思想のうちにあるのである。

アリストテレスの思想

アリストテレスの自然観

 この頃は自然科学と文科科学とは分かれていなかった。自然科学から文科科学まですべてが哲学であった。そのため自然哲学と呼ばれることもある。

 アリストテレスは、人類が自然の中でどういう位置にあるかということを議論している。

 まず四階建ての一番下層に、生物でない無生物がある。当時は元素の存在は知らなかったので、無生物はただ元素というものにあたる、つまり無生物界を構成する要素には4つあるだろうと考えられていた。地というのは土である。天体・山などは全部土である。

 無生物の上には生物界がある。この生物界は3つの階層に分かれる。この階層的なものの考え方は今からいうと間違いである。しかし当時はやはり人というものをピラミッドの頂点においた階層的な考え方から、どうしても免れることはできなかった。

 生物界の一番根本に植物がある。植物は無生物とどこが違うかというと、ギリシャ人たちは面白いことをいった。生物と無生物の違いとして、生物にはプシケー(psyche)というものがあり、無生物にはプシケーがないという。プシケーとは英語の心理学(psychology)のもとになっている言葉で、「心」にあたる。それでは一体どのように生物で具現化しているかというと、それは無生物にはない形で生物に現れているわけである。植物は栄養をとって生育して、生殖によって繁栄する。こういうものが植物にはすでに見られるというわけである。

 その上に動物がある。動物ももちろん植物と同じように栄養をとって生殖もするが、動物はそれに加えて感覚というものを持っている。つまり動物は五感に相当するものを持っているというわけである。もうひとつ動物が大切なのは、運動するというわけである。つまり動く、だから動物というわけである。

 そして最後に、ピラミッドの頂点にある人はなにかというと、人の心は理性だということである。もちろん感覚・運動・栄養・生殖という要素もあるが、動物・植物には理性がない。

サルの存在

 ところがギリシャの哲人たちを悩ました存在があった。それが猿である。ギリシャにはサルはいなかった。当時ギリシャはエジプトあたりと交易をしていたので、エジプトあたりのサル(おそらくヒヒ)がギリシャにもペットとして持ち込まれたのだろう。

 ギリシャ人たちが不思議に思ったのは、「なぜサルヒトに似ているか」ということである。今では進化論によってヒトとサルが親戚であることがわかっているが、当時のヒトには進化など想像外のことであった。ある人はサルを解剖までしている。彼は「サルは見かけだけでなく、体の中までヒトと似ている」ということを発見した。しかしこの疑問には誰も答えることができず、結局ギリシャ人は仕方なく「サルはヒトまねをしているのだ」という説明をした。

存在

 アリストテレスは存在を次の4種類に分類した(『形式上学』第6巻第2章)。

  • カテゴリーとしての存在
  • 可能態・現実態としての存在
  • 真としての存在
  • 付帯性としての存在

 しかし、これらをさらに統一的にまとめあげることはしなかった。

 その後、トマス・アクィナスがアリストテレスのうちに潜在的にあった意図をキリスト教信仰の光の下で明確化しました。トマス・アクィナスによれば、「存在する」とは「自らたつ」ということなのである。それが実態であることに他ならない。カテゴリーとは、述語として語られる存在の様々な意味を言うが、それらの中で実体が最も優れた意味での存在であり、その他のカテゴリー(性質、量、関係、時間、空間、能動、受動など)は実体に依存して存在するにすぎない二次的な存在なのだ。

例:「プラトンは、前387年にアテネ郊外にアカデメイアを設立した」という文章があったとする。
 この文章が表している事態は、次のようになる。

事態カテゴリー
前387年時間
アテネ郊外空間
設立した能動
プラトン実体

イデアに対する考察

 アリストテレスは現象や個物を第一義的な存在物と考えたため、イデア自体が自存することを認めなかった。アリストテレスにとって、イデアというものがもしあったとしても、それは個物の中に入っているものでなければならなかったのである。

 一方、プラトンはイデアを個物にとりつくと考えたため、とりついたイデアが個物を変化させて、自分の似像を作らせると考えることができた。

 また、イデアが個物を離れてしまえば、個物は素材に還元されてしまう。それに対して、アリストテレスはイデアは個物に内在すると考えたために、個物の変化原因をイデアに背負わせることができなくなった。

 そこで、アリストテレスは、現在の個物に具現しているイデアを現実態、未来の個物に具現するであろうイデアを可能態とみなし、現実態から可能態への変化原因をイデアとは別に考案する必要が出た。このようにして、アリストテレスは現象の背後に、質量因、形相因(イデア)、運動因、目的因という四因を設定した。

アリストテレスの言動・文献

  • 昔々、数学者ユークリッドがプトレマイオス一世に数学(その頃は幾何学)を教えてたところ、プトレマイオス一世はユークリッドに対して、「君の原論(ユークリッドの書いた幾何学のバイブル)によらないでも、幾何学を学ぶ近道はないか」と尋ねました。ユークリッドは即座に「幾何学には王道はありません」(王様だけが楽して学ぶ方法はない。それが学問ですということだろう)と答えたと伝えられている。
  • 「高名な芸術家たちはうつ病であり、狂人が多い」
  • 「下層の人間は、生まれながらにして奴隷である。すべての下級の人間と同じように、奴隷たちは、主人の規則に従うほうがよい。奴隷たちは、主人と生活をともにしているのだ。職人たちは、主人とあまり密接には繋がっていないが、彼らも奴隷になれば、それに比例して腕が上達するものだ。もっと身分の卑しい機械工は、また特別の違った奴隷仕事を持っている」

参考文献

  • 『ヨーロッパ思想入門』
  • 『構造主義科学論の冒険』池田清彦
  • 『らくらく入門塾 「心」の専門家になる!臨床心理学のはなし』
  • 『数学の天才列伝』(ニュートンプレス)
  • 『ゲノムから進化を考える5 ヒトはいかにして生まれたか』
  • 『COSMOS 下』
  • 『ポアンカレ予想を解いた数学者』