8ビットCPUが登場したばかりの当時、現場の技術者にとって、マイクロプロセッサベースのシステムは従来のランダムロジックやシーケンス回路をソフトウェア制御するシステムと比べてまったく異なる分野のものであった。そこで、マイクロプロセッサのメーカー会社は、現場におけるマイクロプロセッサの認知度を上げるために、トレーニングキットという形で販売した。トレーニングキットとは、主に現場の技術者向けで、マイクロプロセッサのソフトウェア制御を習得させるための教材である。そうしたトレーニングキットの中で、CPU・RAM・ROM・パラレルI/Oポート・シリアルI/Oポートなどを1枚の基板上に乗せてあるものを、ワンボードマイコンと呼ぶ。
16ビットCPUはかなり構造が複雑になっており、学習用のアセンブリ言語の取扱いが困難であったため、16ビットのワンボードマイコンが少数ながら存在するが、ほとんど普及しておらず、次第に終焉を迎えた。
仕事のためではなく、自分の趣味として、コンピュータを手作りする人たちをコンピュータホビイスト(アマチュアコンピュータリスト)と呼ぶ(手作りといっても、近年の自作PCのユーザーとはまったく異なる)。
ワンボードマイコンの中心であるCPU(厳密にはMPU)に関しては、別のカタログになっていることが多く、キット自体のカタログにはCPUの詳細が書かれていないことが多い。しかし、どのCPUを選ぶかは、プログラミングやインタフェースの拡張のしやすさを決めてしまう重要な要素であるので、購入の際にはCPUのことを深く検討するべきである。そこで、最低でも次の項目をチェックしておくこと。
8080系は半導体技術主導型であり、アドレッシングモードが直接・間接の2種類しかなく、割り込みも比較的単純である。ただし、資料が豊富というメリットがある。
一方、6800系はコンピュータ指向型であり、メモリのアクセス幅は8080系と同じだが、アドレッシングモードを7種類持っている。また、単一バス方式を採用しているため、入出力命令が不要である。
8ビットのマイコンは一般に64Kバイトまでのメモリにアクセスできるように設計されている。しかし、普通のワンボードマイコンの購入時には、そのうちのほんの一部が実装されているのみで、後は必要に応じて購入する必要がある。ワンボードマイコンに内蔵されているメモリはROMとRAMの2種類があり、容量としては1,024バイトから4,096バイトのROMと、128バイトから1,024バイトのRAMを持っているのが普通である。つまり、通常のワンボードマイコンではRAMとROMの比率が7:3から5:5になっている。
[補講]SDK-85はROMの容量が多くなっとおり、RAMはデータエリアとして使用できるくらいしか用意されていない。これはプログラム関係をすべてROMに焼き付けて使用する産業用アプリケーションのためのサンプル品としてのキットであるからだろう。 ◇
また、ROMにはすでにメーカー側でモニタープログラムやデバッガが書き込んであり、組立後すぐに16進キーボードを使用してプログラミングが可能となっている。