原子が隙間だらけということは、物質のほとんどは隙間である。例えば、地球全体の物質を隙間がないぐらいに潰すと、リング1個になってしまうぐらいスカスカなのである。
見ることと存在を確かめることは別物である。ラザフォードの実験では原子の存在が知ることができたが、見ることまではできない。そこで、走査型トンネル顕微鏡を使えば、原子そのものを見ることはできないが、原子の配列を見ることができる。
走査型トンネル顕微鏡は、直径が数ミクロンという極めて細い金属の針をプラスに帯電させ、その針で金属の表面を動かす。
金属の中には自由電子というマイナスの電気を持った自由に動ける電子があることは知られている。
顕微鏡側の針はプラスなので、金属内の自由電子はそれに引き寄せられる。その際に、金属の原子の並びにおける凸凹に応じて、引き寄せられる電気の力の強弱が出てくる。例えば、円が2つ並んでいたとき、上の点と円周上の点の間の距離は走査する位置によって異なってくるからである。
この飛び出てくる電子を増幅すると、金属の表面の原子の配列がわかるのである。
電子が電子軌道から飛び出して自由電子になるには、エネルギーバンドギャップという壁を越えなければならない。電子軌道が原子核に遠いほどその壁は低く、原子核に近いほどその壁は高い。つまり、原子の束縛が強いので、電子が飛び出るにはたくさんのエネルギーが必要になるわけだ。
この壁の部分を禁止帯（禁制帯）、電子がある部分を充満【じゅうまん】帯、自由電子がいるところを伝導帯という。電子は禁止帯にいることはできない。だから、ある程度のエネルギーを持っていても、それを乗り越えるだけのエネルギーでなければ、壁は越えられず充満帯にいなければならない。この充満帯が、実は電子の軌道である。また、禁止帯というのは、軌道の間の部分である。伝導帯というのは、電子がそれまでいなかったところであり、ここには入った電子は自由に動き回ることができるようになる。
絶縁体、半導体、導体をエネルギーの観点から見てみよう。
水素分子の分子軌道ψは次のようにかける。
ψ=c1φ1+c2φ2
分子軌道を求めるということは、各原子軌道の係数を求めることと、分子軌道のエネルギーを求めることである。
水素の分子軌道法の計算を行うと、2つの水素原子の原子軌道φ1およびφ2から、水素分子の分子軌道は2個求められる。この2つの分子軌道をψ1,ψ2とする。ψ1は元になる原子軌道のエネルギーより低く（安定）、ψ2は元になる原子軌道のエネルギーより高くなる（不安定）。
水素分子の場合、2つの水素原子は２つの分子軌道に全く等価に貢献するので、c1とc2の絶対値は等しくなる。
2つの分子軌道の式は次のようになる。
ψ1=φ1/√2+φ2/√2 および ψ2=φ1/√2-φ2/√2
（1/√2という係数が現れる理由は、∫ψ2dτ=1であるから）
ψ1を電子が占めると安定化して、2つのH原子をきつく結合して離れにくくなる（共有結合になる）。そこで、ψ1のような分子軌道を結合性分子軌道と呼ぶ。それに対して、ψ2に電子が入ると、その状態のエネルギーは元の電子の原子の状態のエネルギーより高くなるので、この状態になることは通常ない。もしψ2に電子が入ると、むしろ2つの電子を離す働きが起きるので、ψ2を反結合性分子軌道と呼ぶ。
重量とは引力による重さであり、質量は引力に関係無いそのものの重さである。よって、陽子・中性子・電子の重さには質量が使われる。
| 陽子 | 1.673×10-27[kg] |
| 中性子 | 1.675×10-27[kg] |
| 電子 | 9.110×10-31[kg] |
上記の質量から、次のような関係がわかる。
