[定義]G:群、H:Gの部分群、a∈Gとする。
aH:={ah|h∈H}
Ha:={ha|h∈H}
[定義]左剰余類・右剰余類
G:群、H:Gの部分群、a∈Gとする。
このとき、Hを法としてaと左合同であるGの元全体の集合を、aのHを法とする左剰余類(Hの左剰余類)という。
また、Hを法としてaと右合同であるGの元全体の集合を、aのHを法とする右剰余類(Hの右剰余類)という。
[例]、
(位数2の巡回部分群)とする。
このとき、GがHを法として、どのように分類されるか調べる。
Gの要素 | aH |
以上から、のときのaHは
であり、
のときのaHは
である。
例えば、のとき、
より、|aH|=2で、|H|=|aH|を満たしている。
よって、
また、|G|=4、|H|=2、|G:H|*1=2であり、|H|=|G:H|が成り立つ。つまり、Hを法とした左剰余類の集合の濃度とHの集合の濃度が一致している。
さらに、|G|=|G:H|・|H|が成り立つ。 ◇
[例]加法群とする。
「(Hを法とする左剰余類の集合)=(aHの集合)={H, 1+H}」であるから、|Z12:H|=2
また、|G|=12、|H|=6より、|G|=|G:H||H|が成り立っている(ラグランジュの定理が成立していることを示す一例)。
[定理]G:群、H:Gの部分群とする。
このとき、|H|=|aH|
[証明]Hの任意の元h,h'に対して、「h=h'」⇔「ah=ah'」が成り立つ。
よって、部分群の集合Hの元hに対して、左剰余類の集合の元aHが対応することは左剰余の定義からいえる。また、Hの中で一致する元のときは、aHの中で対応する元も一致する。よって、全単射になる。
したがって、|H|=|aH| □
次の定理は「集合の濃度」であることに注意すること。「Hの左剰余類の集合の濃度」とは「aHの集合の濃度」を意味する。
[定理]G:群、H:Gの部分群とする。
このとき、「Hの左剰余類の集合の濃度」と「Hの右剰余類の集合の濃度」は一致する。
[証明]が成り立つ。
よって、左剰余類の集合の元aHに対して、右剰余類の集合の元Ha-1を対応させると、これは全単射になる。
したがって、左剰余類の集合の濃度と右剰余類の濃度は一致する。 □
[定義]指数
G:有限群、H:Gの部分群とするとき、Hの左剰余類の集合の濃度をGにおけるHの指数といい、|G:H|で表す。
[例]|G:{e}|=|G|、|G:G|=1
[定理]ラグランジュの定理
G:有限群、H:Gの部分群とする。
このとき、|G|=|G:H|・|H|が成り立つ。
[系]
G:有限群、H:Gの部分群とする。
このとき、Hの位数はGの位数の約数である。即ち、|G|||H|が成り立つ。
[補足]位数が素数である群は真部分群を持たない巡回群である。 ◇
[系]
G:有限群とする。
∀a∈Gにおいて、aの位数はGの位数の約数である。即ち、|a|||G|が成り立つ。
[証明]aによって生成されたGの巡回部分群<a>を考える。
[系]「|G|||H|」より、<a>はGの部分群なので、|<a>|は|G|の約数である。
また、[定理]「∀a∈G:|<a>|=|a|」が成り立つ。|
よって|a|は|G|の約数である。 □
[系]
G:有限群とする。
「|G|=n」⇒「∀a∈G, an=e」
[証明]ここで、|a|=mとおく。
[系]「|a|||G|」より、∃l∈Z, n=mlを満たす。
an=aml=(am)l=el=e □
この系はn回演算すると、必ず単位元に一致することを意味する(ただし、n回演算しなくても、単位元に一致する可能性がある)。
この系を既約剰余類群に適用すると、オイラー規準と対応している。