実物を見る場合でも、なぜそれが３次元のものと見えるかは難しい問題である。網膜に映る外界の像は2次元のスクリーンのようなもので、決して奥行きがない。
角膜手術で初めて目が見えるようになった人は、一週間ぐらい目の前の縞々模様をどうみたらいいか判らなく困るそうだ。よって、遠近法による大きさの判別は学習による結果とわかる。
滝の流れをしばらく見つめてから、周囲に目を移すと、静止しているはずの岩が、滝の流れとは逆に上へ上へと動くように見える。また、走っている電車の窓から外を眺めているとき、電車が止まると、駅が前へ動いていくように感じる。これは運動残像という現象からそう見えるのである。この残像は目をできるだけ動かさないときのほうが、より強く表れる。
また、夜間飛行のパイロットや深い霧に包まれた登山家たちにとって、とても危険な現象がある。暗闇に1個の光点を動かさずに提示する。少し離れたところから、この光点をしばらく目を凝らして見ていると、光点は色々な方向に揺れ動くように見えてしまう。これを自動運動という。
