・心は層から成る。
・次の3つの層がある。
例：「泥酔状態で無意識に家に帰ってきた」という場合は、前意識に該当する。
・夢が悩みを前意識層へ連れてくる。ただし、層が上がるとき、形を変える。
・過去に思い出したくないほどつらい体験が無意識の層に押し込められることがある。これを精神分析で掘り出せば、今まで理由がわからず悩んでいたことを解決できる可能性があるのだ。
・精神分析的に考えると、（主体の外部にある）「私」というものを主体そのものと構造的に錯認して生き思考している以上、人間は皆程度の差はあれ狂っていることになる。そのため、精神分析では、自我は治療の拠点にはならない。
・人間の失敗には、無意識の意志が働いていることがあり、これを錯誤【さくご】行為と呼ぶ。
・錯誤行為における意志は、あくまでも無意識から送られてくるものであるだけに、極めて微妙である。それは大まかに3つの段階に分けられる。
・その人が持っている元々の心の体質を知る方法。
・心の体質がわかれば、陥りやすい悩みや問題を予測しやすく、治癒しやすい。
・人の心には3つの要素があり、それらが影響しあって人格を形成しているという。
・自我には次の4つの機能がある。
・葛藤を抑えるには、フロイトは「自我を鍛えよ」と語っている。
・超自我が強すぎると、インポテンツ（ED）になりやすい。
・泥棒も人殺しも正々堂々と衆人環視の中で犯罪行為におよんだりしないのは、良心の制御が働くからである。良心とは聖人君子に備わっている善の天性などではなく、あくまで罰から自分のみを守るための自己監視機能に他ならないのである。
・にんげんんは、「エス」→「自我」→「超自我」の順で真理の層が育っていく。
用事は食べたいときに食べ、遊びたいときに遊び、それが満たされないときに泣き叫ぶ「エス」まみれの状態から、禁止や罰を与えられる環境の中に移されていく。子供は、心の底から親に見捨てられてしまうのではないかという不安や恐怖を抱く。その不安・恐怖から、自分で自分の行動を監視・規制するようになっていく。これが「良心の芽生え」である。
・この良心が生まれる場所は、フロイトによれば、自我を通り越した超自我の中にある。というのは、見捨てられるかもしれないという恐怖は、超自我による厳しい自我の抑制を呼び起こすからである。
・無意識は1層ではなく、2層構造（個人的無意識、集合的無意識）である。
・一人の人は人間という個体群の一部である。ユングは、その点に着目し、自我に対する個我という概念を生み出した。犬や猫に、種族共通のアイデンティティがあるように、人間にも個体群としてのアイデンティティがあるはずだという発想である。
・ユングはこの考えを推し進め、一人の人間の無意識に対して、人間という種族に共通の無意識が存在することを主張した。
例えば、西洋の神殿には女神像が祀られ、日本の寺院には菩薩像が祀られる。ユングは、女神と菩薩が、共に母性を象徴する体の線を持つことを指摘し、さらに世界各地に見られる曼荼羅（神の世界、宇宙を表す図）が同様の構図で描かれていることを発見した。
ユングによれば、「女神、菩薩、曼荼羅の元となる信仰は、意識の薄れたトランス（催眠）状態の中で生み出される。よって、それらは意識下の無意識が漏らしたイメージに他ならない」
・ユングはそうした人間共通の無意識を集合的無意識と呼んでいる。ユングが描いた心理層では、「個人→家族→部族→民俗→人類」という具合に、深い層に下りていくに従い、人間共通の無意識へと広がる構造になっている。つまり、一人の人間の最も深い深層心理には、個人の歴史ではなく、人類の歴史が係わっているというわけである。ただし、この発想は、様々な神経症の原因を一人の人間の過去に求めるフロイトからすれば、ゆゆしき大反論を意味した。
例えば、フロイトは一人のドイツ人女性が陥った不安神経症の原因を幼児期の虐待であると結論付けた。そこに、ユングの理論が割り込んだ途端、その原因は彼女が生まれる二千年前のゲルマン民族の時代にあるということにもなりかねないのである。その決定的な違いが結局二人を決別させることになった。
・ヨーロッパでは17世紀のデカルトが「我思う、ゆえに我あり」式の自我を中心とした哲学を打ち立てて以来、個人崇拝の精神が貫かれ続けてきた。アンチ個人を背景とする集合的無意識は、フロイトのみならず、すべての西洋人科学者にとっての反逆的な発想だったのである。
一方、東洋では数千年の昔から自我なるものは幻想で、自己を捨て去るところに真の存在があるという哲学が発達してきた。その意味で、ユングの心理学は極めて東洋的ということもできる。日本でユングの人気が高いのは、このせいかもしれない。
