FDの時代に突入すると、プロテクトをはずす側とつける側のいたちごっこが本格的に始まった。よって、FDのプロテクト技術の歴史を知ることはプロテクトの基本を学ぶことに繋がる。
FDやHDはハードウェアそのものの中で「READ」(読み込み)と「WRITE」(書き込み)の機能が隣り合うように設計されている。そして、それに合わせるようにOS内部のデバイスドライブ部分で読み込みと書き込み機能が隣りあわせで用意されている。
一方、CD-Rドライブは元々CD-ROMドライブという読み込みだけの装置に書き込み機能を追加したものといえる。よってハードウェアとして読み込みと書き込みの機能が隣り合っていないので、別個となっている。
ゆえに、FDやHDはエディタなどで直接開いたり書き込んだりできるが、CD-Rは書き込む場合別途にライティングソフトウェアを用意して、書き込むための特別命令が必要になるわけだ。ちなみに、CD-Rに対する書き込みはBURNになる。
FDが読み込み・書き込みが簡単にできるのは、この2つの操作がハードウェア、ソフトウェア共に1対1に対応しているので、同じ場所を読んで、同じ場所に書き込むということを可能にしているからである。この特徴はディスクを丸ごとコピーするのが簡単であるといことを示唆している。そもそも、FDはコストを押さえながら、手軽にアクセスできるように作られたメディアだからである。
FDプロテクトには次の2段構えで構成されているという基本原則がある。
プロテクトセクタとプロテクトチェックルーチン両方が存在して意味があるのであって、片方では意味がない。
セクタは領域や区画を意味しており、個々の特殊なデータはセクタの中に存在する。しかし、実際にはプロテクトチェックを行う際に、ドライブの読み込みの最小単位がセクタであるため、プロテクトセクタと呼ばれる。
現在、CD-ROMなどで利用されているプロテクトの多くは、これらの派生に過ぎない。例えば、あるプロテクトセクタを1つ用意して、それをチェックするためのチェックルーチンを微妙に変えて3つ用意されば、合計3(=1×3)種類のプロテクトがあるといえる。そしてプロテクトセクタを4つ用意して、それをチェックするためのチェックルーチンが5つ用意すれば、合計20種類のプロテクトができあがる。
業務用ドライブではエラーの発生するセクタ(プロテクトセクタ)を意図的に書き込むことができる。FDから読み出されたデータをチェックルーチンでチェックして、全部一致すればオリジナルと判定される。
それに対して、民生用ドライブではプロテクトセクタを再現できない。よって、プロテクトセクタをうまくコピーできない。ということは元々プロテクトセクタがあったセクタは正常なセクタとなっている。これを読み出して、チェックルーチンでチェックすると、プロテクトセクタがうまくコピーできないので全部一致しない。よって、コピー品だと判定される。
プロテクトセクタとチェックルーチンによるプロテクトを回避する方法が分かるはずだ。コピー品を作る場合は業務用ドライブを利用してコピーすればよい。そうすれば、うまくプロテクトセクタもコピーできるからである。
チェックルーチンでは次のように判断している。
このチェックルーチン部分を書き換えて、次のようにしてしまう。
こうすれば、コピー品がオリジナル、オリジナル品がコピー品だと判断される。こうすれば、コピー品を起動できるわけである。
書き換え作業自体は簡単だが、どこを書き換えたらよいのかを調べるにはそれなりのスキルが必要である。
スキルのない人でも間単にコピーを実現するソフトウェアとして、コピーツールが誕生した。様々なコピーツールがあり、これらは「バックアップツール」や「デュプリケータ」という呼び名で売られていた。具体的な製品名で言えば、PC88用のソフトウェアをコピーする「ウィザード88」などがあった。
コピーツールはパラメータ型とフォーマット再現型などがある。これを次に表でまとめておく。