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*目次 [#pac895b9]

#contents


*紙 [#m7f93414]

-伝説によれば、紙は[[中国]]の武帝の臣・蔡倫【さいりん】によって、紀元105年に発明されたという。
-中国人は700年間に渡って製紙法の秘密を守った。
--しかし、サマルカンドに侵入したイスラム教徒に捕えられた中国人によって、秘密の製紙法が伝えられた。やがてその知識は[[ヨーロッパ]]に広まり、[[水]]が豊富な地域のあちこちに製紙工場が建てられた。水はパルプを作るのに必要だからである。
-繊維の中に[[セルロース]]を多く含む植物や、[[木綿]]や[[亜麻]]【あま】などの天然繊維でできたぼろ布から作られた紙はごく上質とされる。
-ぼろ布から作った紙は丈夫で長持ちするが、木材パルプから作った現代の紙は寿命が短い。
--酸をたくさん含んでいるためにすぐに黄ばんで、ぼろぼろになる。
-紙から色々な形の部分を切り出して組み立てる模型を''ペーパークラフト''と呼ぶ。
-紙は[[中国]]の四大発明の1つである。
--その他には、[[印刷術]]・[[火薬]]・[[羅針盤]]がある。
-これまでに発見された中で最も古い紙(パピルス紙は除く)は、1986年に甘粛省【かんしゅくしょう】天水市放馬灘【ほうだたん】の古いお墓から見つかった。これを地名から''放馬灘紙【ほうだたんし】''という。
--放馬灘紙は2200年くらい前の紙だと考えられている。
--放馬灘紙は植物の[[麻]]の繊維からつくられた麻紙【まし】で、くねくねと曲がった線や真っ直ぐな線が書かれていたことから、元は大きな地図で死者を埋葬するときに胸に置かれたのではないかといわれている。
-[[絹]]が通った道は[[シルクロード]]と呼ばれているが、紙も同じ道を通って運ばれた。
-手作業による紙すきを最初に機械で行おうとしたのが[[フランス]]のルイ・ロベールである。
--ルイ・ロベールは1798年に紙すきができるしょう紙機を発明した。しかし、時代はちょうどフランス革命中であり、実用化はされなかった。
-ルイ・ロベールのしょう紙機を改良し、実用化に成功したのは[[イギリス]]のフォードリニア兄弟である。
--フォードリニア兄弟はルイ・ロベールのしょう紙機の権利を譲り受け、改良を重ねて、紙すきから乾燥まで行える連続的な流れを持つしょう紙機の実用化に成功した。
-[[渋沢栄一]]は日本の生活や文化発展のためには紙の大量生産が必要不可欠と考え、1873年にしょう紙会社(後の王子製紙)を作った。
-かつてボロ布を紙の原料としていた頃、イギリスや[[ドイツ]]ではボロ布の不足により死者に服を着せてはいけないという法律を作った。
--原料不足に陥った[[アメリカ]]は、[[エジプト]]から大量の[[ミイラ]]を輸入し、ミイラが身に付けていた亜麻布【あまぬの】を原料に使った。
-模造紙は日本の紙をヨーロッパが真似て、その紙を再び日本の製紙会社が真似たためにその名が付いた。
-トイレットペーパーは[[水]]に溶けるように繊維だけでできている。
-1903年に教科書で使われる紙が洋紙に代わり、洋紙は着実に広まっていった。
-クラフト紙の「クラフト」とはドイツ語で「強い」という意味。
--物を入れても破れないように原料には針葉樹が使われている。
--手提げ袋や包装紙、封筒などに使用されている。
-[[リトマス試験紙]]はヨーロッパで羊毛などの染料として使われていたリトマスゴケが語源になっている。
-紙の重さを量る単位として、坪量【つぼりょう】がある。
--坪量は1mSUP{2};あたりの重量をグラムで表した単位である。
-B判は日本独特のサイズであり、[[和紙]]の美濃紙【みのがみ】の大きさがもとになっている。
-紙を作るときに古紙が少しでも原料に混ざっていたら、再生紙と呼ぶ。
-酸性の薬品で作られた紙は傷みやすいため、現在の紙は中性の薬品で作られている。
-古紙の利用を普及するために、古紙再生促進センターがグリーンマークを制定している。
-紙の原料となるチップは、海外から船で運ばれてくる。
-チップは元々ある樹木から作られるわけではなく、製材残材【せいざいざんざい】((建築用の木材を作るときに出る端材などの使わない部分のこと。))や建築不適材((曲がっていたり細かったりして建築に向かない木のこと。))、建築廃材((木造の家を取り壊した時に出る廃材。))、間伐材((間引きなどの森林の手入れをしたときに出る木材。))、製紙原料用に新しく植林された木などから作られる。
--つまり、チップによって環境破壊が進むというのは間違いである。
-紙を作る過程で出る廃液のことを黒液【こくえき】と呼ぶ。
--木材の中で紙になるのは主にセルロースやヘミセルロースという成分である。残りのリグニンなどの成分は紙にはならず黒液になる。
--工場はこの黒液を燃料と利用することで、無駄をなくしている。
-紙に鉛筆で[[文字]]が書ける理由は、繊維と繊維の間の凸凹に鉛筆の芯の粉が載るためである。
--一方、消しゴムで消せるのは、凸凹の間にある芯の粉が[[ゴム]]にくっついて取れるからである。
-辞典のように厚い本には、インディアペーパーという薄い紙が使われる。
--インディアペーパーは普通の紙よりも薄いのに印刷された文字が裏から透けて見えず、軽いのが特徴である。
-紙は虫に弱い。
--特に、シバンムシ、シロアリ、[[ゴキブリ]]が紙に被害を与える虫の御三家といわれている。
-紙の原料となる木にはユーカリが適している。
--ユーカリは成長が早いので、たった8年で紙の原料として収穫できるくらい大きくなる。
---ユーカリは成木【せいぼく】になると100mくらいの高さになる種類もある。
--ユーカリはオーストラリア原産の木で600種類以上もある。植林の対象になるのはそのうちの10種類程度。
-製紙会社が保有する海外の植林地は牧草地や荒れた農地に植林するので、生態系の回復に貢献している。
-ホテルなどでトイレットペーパーが三角に折られているのは、清掃済みを他のスタッフに伝える目印としてのが始まり。

*紙の作成 [#yc541b63]

 紙を作るには、大きく次の3つの作業が必要である。

+植物から繊維を取りだす。
+取りだした繊維をしなやかにする。
+紙をすく。

**植物から繊維を取りだす [#i35def1d]

-木材から取り出した植物繊維を''木材パルプ''という。
--現在使われている紙のほとんどは木材パルプから作られている。
-18世紀中頃までのヨーロッパでは、紙の原料は昔ながらのぼろ布であった。ぼろ布は新しい綿や麻より値段が安く、植物の繊維そのものなので、繊維を取りだす作業がいらなく、割合簡単に紙にすることができたのである。
-18世紀頃になると紙の使う量が増えたので、ぼろ布だけでは紙の原料として足りなくなってきた。足りなくなれば値段も上がる。そのため、ぼろ布に代わる、紙の原料が必要になったのである。
-1719年に[[フランス]]のレオミュールが、大きな蜂の巣を見て、木から紙が作れるかもしれないと思った。
--蜂の巣は小さな木の屑をかためて作ってある。木を小さく砕いて、大きく固め直している。そして、巣の表面は紙に似ているのである。
--こうして木材から紙を作る研究が始まり、[[ドイツ]]のシェッフェルは実際に蜂の巣を湯でとかして紙を旁、研究内容を発表した。
-1845年にドイツのケラーという技師が木材を繊維にする機械を作り上げた。これで作られたパルプを''[[砕木パルプ]]''という。
-砕木パルプが発明された頃から、パルプの研究がさかんになり、色々な薬品で木材を溶かして、植物の繊維を取りだす方法が発明された。
--このように薬品を使って作ったパルプを''[[化学パルプ]]''という。
-1851年に[[イギリス]]で[[苛性ソーダ]]([[水酸化ナトリウム]])を使った、ソーダパルプが作られた。
-1867年に[[アメリカ]]で[[硫黄]]などを使った、亜硫酸パルプが作られた。
-1884年に[[ノルウェー]]のダールという人が硫酸塩などを使った、クラフトパルプを作った。
--クラフトパルプは現在生産されているパルプ全体の60%以上を占めている。
-紙を燃した結果によって、混ぜ物の種類がわかる。
--広告の紙の燃えかすは灰色だが、たくさん残ったのは紙の中の填料と、表面に塗られた材料が残ったからである。
---灰の手触りからも、填料や表面に塗ってある材料が粘土のようなものであることがわかる。
--新聞紙は表面加工がしてないので、広告の紙よりも灰の量は少なくなる。
--ティッシュペーパーには填料が含まれていないため、灰はほとんど残らない。


**取りだした繊維をしなやかにする [#k9653aa5]

-植物以外のどんな繊維であってもよいというわけではない。
--ナイロンの繊維を細かくして、水に混ぜて、紙と同じようにすいてみても、息をふきかけただけで飛んでしまうほこりみたいなものしかできない。
-植物繊維なら、木材パルプを水でといて紙を作ることができるわけではない。
--こうして作ったものは綿を水の中でちぎり、あみですくって作ったものと同じである。つまり、ぶよぶよでとても使い物にならないのである。手でもむと、ほこりとなって、ばらばらになってしまう。
-紙の繊維はのりのようなもので固めているわけではなく、繊維同士の力によってくっついているのである。
--[[和紙]]には「ねり」と呼ばれるのりが、また一部の紙には[[デンプン]]が加えられているが、紙の繊維の結びつきの基本はのりではない。
-植物の繊維同士がくっつくには、植物の繊維を水につけ、叩解【こうかい】((叩き、ほぐすこと。))しなければならない。
--ナイロンの繊維はいくら叩解しても、植物の繊維のような変化(しなやかな繊維が互いにおしあって、接しあう面積が大きくなり、繊維が毛ばだてば絡みやすくなる)が起きないため、紙にならないのである。

**紙をすく [#x2776a61]

-紙を抄【す】くことを''抄紙''【しょうし】という。
-昔は1枚1枚手ですいていたが、現在では抄紙樹などで能率的に作られる。
-柔らかい繊維の間から水がなくなると、繊維と繊維がきつくより合わさるのである。
--例えば、柔らかい毛筆を水の中に付けると、毛先が広がる。そして、持ち上げ、水から出すと、毛先はぎゅっと縮まる。一方、油絵用の絵筆のような硬い毛のもので同じことをしても、毛筆のようにはならない。
-叩解した植物繊維は水により、水素結合され、しっかり繋がりあうのである。


*紙の縦と横 [#g380a543]

-繊維に沿って破るとまっすぐに、繊維を横切って破るとぎざぎざに破れる。繊維の並んでいる方向を''紙の縦(縦目)''、それと直角の方向を''紙の横(横目)''という。
--破り口を虫眼鏡で見ると、紙の繊維の多くが決まった方向に並んでいることがわかる。
-紙をすくときに、動く金網の上に、どろどろと紙のもとを注いで作る。このとき、金網の動く方向に、繊維が自然に並び、紙の縦と横ができる。
--手ですいた和紙には、縦と横の区別はない。

*紙の裏と表 [#y3bb785c]

-網に当たった方が裏、その反対側が表になる。
-ローラーを掛けてあるので区別がつきにくいものもあるが、裏はわずかに網の目が残っていて、表よりもざらついている。
-2つ折りにして1円玉の縁でこすると見分けられることがある。
--紙の表はてん料が多く付着しているので、1円玉でこすると黒い跡が付くからである。

*紙の曲がりやすさ [#d4cedeee]

-[[正方形]]の紙を机のは字から垂らす。直下に向きをかえて垂らすと、前と紙の垂れ方が異なる。
--薄くてはっきりしない紙は小さくしてやってみる。
--また、画用紙のように厚い紙の場合は、紙のはじにおもりの[[クリップ]]をつければよくわかる。
-紙は繊維にそっては曲がれやすいが、それと直角には曲がりにくい。
-大きな紙をくるくる巻くときは繊維の縦・横を考えると簡単にまくことができる。
-本や新聞紙の紙は必ず縦目になっている。
--横目だと垂れやすいため、読みにくい。特に新聞の場合は普通は両わきをもって読む。そのとき横目になっているとダラッた折れやすく、読みにくくなってしまう。
-紙に水蒸気をあてて、その横方向が伸びたとする。すると縦が繊維の方向だとわかる。
--紙の形が丸くなっている場合に紙の横と縦を見分けるために使える。

*紙の混ぜ物 [#vc8b0c7c]

**填料【てんりょう】 [#v17c6179]

-紙を不透明にし、裏の文字や絵を見えにくくする。
-普通の紙では10〜15%ぐらい含まれている。
-白い粘土やロウ石を使う。

**サイズ [#pdc5d021]

-インクがにじまないようにするための薬品。
-化学合成したミツヤニなどが使われる。

**染料・蛍光剤 [#m3560557]

-紙に色をつけたり、白く見せたりするための薬品。
-ツルツルした紙には、特に填料が多く含まれ、さらに紙の表面にもつや出しの材料がたっぷりと塗りつけてある。

*参考文献 [#yb4dc060]

-『ビジュアル博物館 文字と書物』
-『学研まんがでよくわかるシリーズ35 紙のひみつ』
-『人間の知恵1 紙のはなし』