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*目次 [#a581a2dc]

#contents


*はじめに [#l55711b6]

 Gが[[群]]、HがGの[[部分群]]とする。このとき、集合gHは{gh;h∈H}の集合そのものであり、gを含むHの左剰余類、Hg={hg;h∈H}をgを含むHの右剰余類である。右剰余類の集合をG/H、左剰余類の集合をH\Gと表す。

 [[左剰余類]]同士の演算(aH)・(bH)=(a・b)Hと定義して、[[群]]を作りたい。

 このとき、演算が代表元の取り方によらないことを確かめなければならない。~
 具体的にいうと、次が成り立つことである。

「aH=a'H,bH=b'H」⇔「(a・b)H=(a'・b')H」

 これが成り立つためには、「任意のa,b∈G;h,h'∈Hに対して、(ah)(bh')=(ab)h''を満たすh''∈Hが存在すること」が必要十分である。

 この関係式を整理して、正規部分群を定義する。

*正規部分群 [#tac5a0cd]

#divid(s,thorem)
[定義]正規部部分群~
Hは群Gの部分群であるとする。~
&mimetex("\forall x \in G, \forall a \in H; x^{-1} \circ a \circ x \in H");であるとき、Hは''Gの正規部分群(normal subgroup)''であるという[1]。
[定義]Hは群Gの部分群であるとする。~
&mimetex("\forall a \in G, \forall h \in H; a^{-1}ha \in H");を満たすときに、部分群Hは''Gの正規部分群(normal subgroup)''と呼ぶ。
#divid(e,thorem)

#divid(s,thorem)
[定理]正規部分群の条件は次のように変えることもできる。いずれも同値である[2]。
[定理]正規部分群の条件は次のように変えることもできる。いずれも同値である。

+∀a∈G;Ha=aH
+∀a,b∈G;a≡SUB{l};b (mod H)⇔a≡SUB{r};b (mod H)
+∀a,b,c,d∈G;a≡SUB{l};b (mod H)∧c≡SUB{l};d (mod H)⇒ac≡SUB{l};bd (mod H)
+∀a∈G;aHaSUP{-1};⊂H
+∀a∈G;aHaSUP{-1};=H

 ただし、Ha=aHとはha=ah(h∈H)((これが成り立つことを共役という。))を意味するのではなく、ha=ah'(h,h'∈H)となるHの元h,h'が存在することを意味している((このことから、明らかに共役ならば正規部分群の条件を満たすことがいえる。))。
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明]

[1](1)⇒(2)

 左合同・右合同の定義より成り立つ。

[2](2)⇒(3)

a≡SUB{l};b (mod H)~
⇔a≡SUB{r};b (mod H)~
⇒ac≡SUB{r};bc (mod H)~
⇔ac≡SUB{l};bc (mod H) ←(*)

 また、同様にしてc≡SUB{l};d (mod H)⇒bc≡SUB{l};bd (mod H) ←(**)

 (*)(**)と推移律より、ac≡SUB{l};bd (mod H)が成り立つ。

[3](3)⇒(4)

 b∈aH⇔aH=bH⇔a≡SUB{l};b (mod H)より、(3)の命題は次のように書き換えられる。b∈aH,d∈cH⇒ab∈acHである。つまり、∀a,c∈G;aH・cH⊂acHである。

 c=aSUP{-1};を代入すると、

aH・cH⊂acH~
aH・aSUP{-1};H⊂aaSUP{-1};H=eH=H~
∴aH・aSUP{-1};⊂H

 また、aHaSUP{-1};⊂aH・aSUP{-1};Hなので、aHaSUP{-1};⊂H

[4](4)⇒(5)

 (4)のaは任意なので、aSUP{-1};で考えると、aSUP{-1};Ha⊂Hが成り立つ。

 Hの任意の元をhとすると、aSUP{-1};ha∈Hであるから、Hのある元h'があって、aSUP{-1};ha=h'となる。よって、h=ah'aSUP{-1};∈aHaSUP{-1};となるから、H⊂aHaSUP{-1};である。

 また、仮定(4)と組み合わせて、aHaSUP{-1};=Hが成り立つ。

[5](5)⇒(1)

 aHの任意の元はah(h∈H)と表されるので、

ahaSUP{-1};~
∈aHaSUP{-1};~
=H (∵仮定(5))

 よって、ahaSUP{-1};=h'∈Hが成り立つ。

 ah=h'a∈Haとなるので、aH⊂Haが成り立つ。同様にしてHa⊂aHも示される。

 したがって、aH=Haが成り立つ。 □
#divid(e,proof)

 Gが可換群のときは、∀a∈G;aH=Haが成り立つ。よって、可換群の部分群はすべて正規部分群である。
#divid(s,thorem)
[定理]Gが[[可換群]]なら、すべての部分群は正規部分群である。
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明]Gが可換群のときは、∀a∈G;aH=Haが成り立つ。

ゆえに、可換群の部分群はすべて正規部分群である。 □
#divid(e,proof)

#divid(s,notice)
例1:(Z,+),(ZSUB{n};,+),(QSUP{*};,・),(RSUP{*},・),(CSUP{*};,・),(MSUB{n};(K),+)などはすべて可換群であるので、その部分群はすべて正規部分群である。
[例](Z,+),(ZSUB{n};,+),(QSUP{*};,・),(RSUP{*},・),(CSUP{*};,・),(MSUB{n};(K),+)などはすべて可換群であるので、その部分群はすべて正規部分群である。

例えば、Zの部分群mZは正規部分群である。
例えば、Zの部分群mZは正規部分群である。 ◇
#divid(e,notice)

#divid(s,notice)
例2:C上のn次特殊線形群SLSUB{n};(C)は、n次一般線形群GLSUB{n};(C)の正規部分群である。
[例]C上のn次特殊線形群SLSUB{n};(C)は、n次一般線形群GLSUB{n};(C)の正規部分群である。 ◇
#divid(e,notice)

 正規部分群が重要である理由は、正規部分群Hの剰余類同士の二項演算を決めることができるという点である[3]
 正規部分群が重要である理由は、正規部分群Hの剰余類同士の二項演算を決めることができるという点である。

#divid(s,notice)
[例]SSUB{3};の部分群では、A={ε,σ,σSUP{2};}による[[類別]]は、左剰余類と右剰余類は一致する。つまり、次が成り立つ。

-S=A+αA
-S=A+Aα

よって、AはSSUB{3};の正規部分群である。 ◇
#divid(e,notice)

#divid(s,thorem)
[定理]
-G/Hの単位元はeH(=H)である。
-G/Hの逆元は(aH)SUP{-1};=(aSUP{-1};)Hである。
#divid(e,thorem)


*正規部分群の例 [#g5a7d5c6]

#divid(s,thorem)
[定理]群Gにおいて、Gの中心Z(G)は正規部分群である。
#divid(e,thorem)

#divid(s,thorem)
[定理]Gの部分群Hの指数が2の部分群は正規部分群である。~
即ち、[G:H]=2⇒H:正規部分群
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明][3]
[証明]G=H+gH=H+Hgは、Gの右剰余類と左剰余類への分割である。

 G=H+gH=H+Hgは、Gの右剰余類と左剰余類への分割である。

 この分割で類は共通元を持たないので、gH=Hgでなければならない。よって、Hは正規部分群である。 □
この分割で類は共通元を持たないので、gH=Hgでなければならない。よって、Hは正規部分群である。 □
#divid(e,proof)

 この定理はよく使われる。

#divid(s,thorem)
[定理]群の準同型写像φ:G→Hの核Ker(φ)はGの正規部分群である。
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明][4]
[証明]任意にη∈Ker(φ),a∈Gをとるとき、

 任意にη∈Ker(φ),a∈Gをとるとき、

φ(aηaSUP{-1};)~
=φ(a)φ(η)φ(aSUP{-1};) (∵φは準同型写像であるから)~
=φ(a)φ(aSUP{-1};) (∵Kerの定義)~
=1

 よって、aηaSUP{-1};∈Ker(φ)が成り立つ。 □
よって、aηaSUP{-1};∈Ker(φ)が成り立つ。 □
#divid(e,proof)

*正規部分群の性質 [#m95baf47]


#divid(s,notice)
[補講]ガロアは正規部分群による分解を''固有分解''と言っている。これを発見することにより、方程式論を征服した。
[補講]ガロアは正規部分群による分解を''固有分解''と言っている。これを発見することにより、方程式論を征服した。 ◇
#divid(e,notice)

#divid(s,thorem)
[定理]群Gの自明な部分群はどちらもGの正規部分群である。
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明]Gの自明な群とはG自身と、単位群{e}のことである。

[1]N=Gのとき

gSUP{-1};ng∈G=Nであるため、GはGの正規部分群になる。

[2]N={e}のとき

gSUP{-1};ng~
=gSUP{-1};eg (∵Nの元はeしかないため、n=e)~
=gSUP{-1};g~
=e~
∈N

よって、NはGの正規部分群になる。 □
#divid(e,proof)

#divid(s,notice)
[例][[対称群]]SSUB{3};において、巡回部分群N=<(1 2 3)>={(1), (1 2 3), (1 3 2)}は正規部分群になる。

N~
=<(1 2 3)>~
=<d> (∵群表から)~
={d,dSUP{2};,dSUP{3};}~
={e,d,f} (∵群表から、dSUP{2};=f、dSUP{3};=e)

後は、n∈{e,d,f}(=N)、g∈{a,b,c,e,d,f}(=G=SSUB{3};)それぞれで、gSUP{-1};ng∈Nであることを確認する。

-nに注目
--n=eのとき
---gSUP{-1};eg=gSUP{-1};g=e∈N
--n=dのとき
--n=fのとき
-gに注目
--g=aのとき
--g=bのとき
--g=cのとき
--g=eのとき
---n,gどちらもNの元であり、演算について閉じているため、gSUP{-1};ng∈Nは明らか。
--g=dのとき
---n,gどちらもNの元であり、演算について閉じているため、gSUP{-1};ng∈Nは明らか。
--g=fのとき
---n,gどちらもNの元であり、演算について閉じているため、gSUP{-1};ng∈Nは明らか。

残りの、n∈{d,f}、g∈{a,b,c}の組み合わせの6パターンで、gSUP{-1};ng∈Nであることを確認する。

-n=d∧g=aのとき
--aSUP{-1};da=aba=ba=f∈N
-n=f∧g=aのとき
--aSUP{-1};fa=afa=ca=d∈N
-n=d∧g=bのとき
--bSUP{-1};db=bdb=cb=f∈N
-n=f∧g=bのとき
--bSUP{-1};fb=bfb=ab=d∈N
-n=d∧g=cのとき
--cSUP{-1};dc=cdc=ac=f∈N
-n=f∧g=cのとき
--cSUP{-1};fc=cfc=bc=d∈N

以上より、どの場合でもgSUP{-1};ng∈Nが成り立つため、NはSSUB{3};の正規部分群である。

一方、<(1 2)>={(1), (1 2)}はSSUB{3};の部分群になるが、正規部分群にはならない。

なぜならば、<(1 2)>={e,b}であり、次のように計算できる。

aSUP{-1};ba~
=aba (∵群表から、aSUP{-1};=a)~
=da~
=c

cは<(1 2)>に属しないからである。 ◇
#divid(e,notice)

 群Gを部分群Hで剰余類に分割するとき、左剰余類を使うのと右剰余類を使うのとでは結果が異なることがある。しかし、Hが正規部分群のときは、左剰余類と右剰余類が一致しする。つまり、どちらのクラス分けを使っても、同じクラス分けになる。

#divid(s,thorem)
[定理]Nが群Gの正規部分群ならば、Gの任意の元aに対して、aN=Naが成り立つ。
#divid(e,thorem)

 上記の式の左辺が左剰余類、右辺が右剰余類である。

#divid(s,proof)
[証明]

[1]aN⊂Naを示す

集合aNの元はan (n∈N)という形に表すことができるので、次が成り立つ。

an~
=anaSUP{-1};a (∵e=aSUP{-1};a)
=(aSUP{-1};)SUP{-1};naSUP{-1};a~
∈Na (∵NはGの正規部分群で、aSUP{-1};∈G、n∈Nであり、(aSUP{-1};)SUP{-1};n∈Nであるから)

よって、集合aNの元はすべてNaに属する。

[2]Na⊂aNを示す

集合Naの元はna (n∈N)という形に表すことができるので、次が成り立つ。

na~
=aaSUP{-1}na (∵e=aaSUP{-1};)~
∈aN (∵NがGの部分群であるため、aSUP{-1}na∈Nが成り立つから)
∈aN (∵NがGの部分群であるため、aSUP{-1};na∈Nが成り立つから)

よって、集合Naの元はすべてaNに属する。

したがって、[1][2]より、aN=Naが成り立つ。 □
#divid(e,proof)

 正規部分群では左剰余類と右剰余類が一致するため、それらを単に[[剰余類]]という。

*正規部分群の[[直積]] [#vdd77638]

#divid(s,thorem)
[定理]GSUB{1};,GSUB{2};:群、HSUB{1};,HSUB{2};:それぞれの正規部分群とする。~
&mimetex("H_1 \times H_2");は&mimetex("G_1 \times G_2");の正規部分群であり、次が成り立つ。~
&mimetex("(G_1 \times G_2) / (H_1 \times H_2) \simeq (G_1/H_1)\times(G_2/H_2)");
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明]自然な全射準同型写像を組み合わせて、全射準同型写像&mimetex("G_1 \times G_2 \to (G_1/H_1)\times(G_2/H_2)");を作れば、その核は&mimetex("H_1 \times H_2");である。 □
#divid(e,proof)

*単純群 [#kad6f059]

#divid(s,thorem)
[定義]単純群~
群Gが自明な部分群{e}とG以外に正規部分群を持たないとき、Gを''単純群''という。
#divid(e,thorem)



*正規部分群以外のコセット [#i2bdb7eb]

 正規部分群以外のコセットはそれ自体では群ではない。

#divid(s,thorem)
[定理]群Gの正規部分群があった場合、GをHで分解した個セットは群になる。
[定理]群Gの正規部分群があった場合、GをHで分解したコセットは群になる。
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明]Hが正規部分群であるとは、Gのすべての元に対して、αH=Hαが成り立つことを意味する。

Gの分解をG=H+αH+βH+γH+…とすると、次が成り立つ。

αHβH~
=αβHH (∵Hβ=βHだから)~
=αβH

αとβはGの元なので、αβもGの元である。つまり、αβHはコセットのどれかになる。

剰余群の単位元はHである。また、αHの逆元はαSUP{-1};Hとなる。

よって、

αHαSUP{-1};H~
=ααSUP{-1};HH~
=εH~
=H
=H □
#divid(e,proof)


*正規部分群による剰余類 [#c275ab12]

 Nを群Gの[[正規部分群]]とするとき、GのNによる剰余類の1つ1つを元と考えて(集合を元と捉える)、剰余類全体の作る集合をG/Nという記号で表す。

例:GがNによって、3つのクラス(剰余類)N,aN,bNに分かれたとする。
#divid(s,notice)
[例]GがNによって、3つのクラス(剰余類)N,aN,bNに分かれたとする。

このとき、

G/N={N,aN,bN}

が成り立つ。 ◇
#divid(e,notice)

 つまり、G/Nは集合の集合である。

**G/Nに演算を定義する [#m476e273]

 集合G/Nに次の方法で積を定義する。

(aN)(bN)=abN

 「aN=a'N∧bN=b'N」⇒「abN=a'b'N」を確かめておく必要がある。

#divid(s,thorem)
[定理]Nが群Gの正規部分群のとき、集合G/Nに(aN)(bN)=abNで積を定義すれば、G/Nは群になる。
#divid(e,thorem)

 G/Nは群になるが、この群をGのNによる''[[商群]]''という。

*参考文献 [#i3efaab8]

-[1]『情報科学のための代数系入門』4章:群 §3:群からの群構成法 pp.57-67
-[2]『群・環・体入門』第2章:群 §5:正規部分群、剰余群 pp.109-112
-[3]『すうがくぶっくす7 ガロワと方程式』第3章:群の概念 3.5:正規部分群、剰余類群 pp.56-57
-[4]『共立講座 21世紀の数学8 環と体の理論』
-[5]『群論なんかこわくない』
-『情報科学のための代数系入門』4章:群 §3:群からの群構成法 pp.57-67
-『群・環・体入門』第2章:群 §5:正規部分群、剰余群 pp.109-112
-『すうがくぶっくす7 ガロワと方程式』第3章:群の概念 3.5:正規部分群、剰余類群 pp.56-57
-『共立講座 21世紀の数学8 環と体の理論』
-『群論なんかこわくない』
-『応用代数学入門』