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*目次 [#j6e0d324]

#contents


*聴覚説 [#rf4806a6]

 音波が耳に届いてから、それを知覚するまでの過程を説明する説を''聴覚説''という。視覚の場合に比べると、聴覚の生理学的メカニズムはまだよくわかっていない。

 [[音声]]を聞く過程で神経系が関係しているのは内耳の有毛細胞からであるが、神経機構については内耳の部分に関しては若干の知識が得られているものの、中枢神経系に関してはほとんど解明されていない。


*聴覚説の種類 [#qad73d93]

 聴覚説は場所説と頻度説の2つに大別される。どちらが正しいかはまだ決着が付いていない。

 現在では、周波数の差を音の高さの諭して知覚することに関して、すべての周波数に関しては場所説が、低い周波数に関しては頻度説が一定の役割を果たしていると考えられている。これらの考え方のいずれかが正しいかの結論はまだ難しい。


**場所説 [#cafde72e]

 内耳の蝸牛の中にある基底膜は音波の振動が伝わると、それに反応して振動する。どの部位が反応するかは、与えられた音波の振動数によって異なる。その場所の違いが音の高さの違いにつながるという考え方を基本とする説である。


***共鳴説(ピアノ説、ハープ説) [#g5cb48e8]

 共鳴説はヘルムホルツによって提唱された説である。訓練された聞き手がある複合音を聞いたときに、その中に含まれる成分音を聞き分けることができたことは、オームの音響法則からわかる。訓練された聞き手は、複合音を構成する正弦波それぞれを分析しながら、純音として聞き分けられ、それぞれに対応する高さを聞くのである。

 ヘルムホルツは基底膜にはピアノやハープの弦のように多数の繊維が横に張られており、1本1本の繊維はその長さが音の周波数にそれぞれ対応していて、特定の周波数の高さに対応して特定の部位が共鳴すると考えた。基底膜上で神経繊維は決まった部位にあり、それぞれが脳へと伸びており、そのため与えられた音にある神経繊維が共鳴すると、その神経線維が一致する高さがその音の高さとして知覚されると考えたのである。

 共鳴説は特定の神経繊維と神経興奮とが結びついていると考えている点において、ミュラーの提唱した特殊神経エネルギー説と同じ考え方に立っている。しかし、現在ではミュラーの説もヘルムホルムの説もどちらも否定されている。


***位置説(進行波説) [#u0c880cb]

 ベケシーは人の死体の蝸牛を用いて基底膜の振動を詳細に観察した。その結果、音が与えられると、その周波数に応じて基底膜上に進行波が生じることと、その進行波の最も振幅の大きい位置は音の高さによって異なることを発見した。音の高さは基底膜上の位置によって符号化され、それが脳に伝えられて高さの知覚が行われると考えた。このような説を''位置説(進行波説)''という。現在でも最も有力な説とされている。

 基底膜において周波数分析が行われることは、現在までに明らかにされている事実である。しかし、実際には人の周波数弁別はかなり鋭敏である。例えば、標準刺激を1,000Hzとしたときは、約3Hzの差で音の高さの違いがわかる。しかし、それらの周波数に対する基底膜上の最大振幅の領域は、互いに重なり合っており、特に低周波数の音において重なり合いは顕著である。このような重なり合いがあるのに、わずかな周波数の差異を識別できるという点がまだ謎である。


**頻度説 [#n0418db6]

 音の高さに対応している内耳神経の興奮頻度に基づいて周波数分析が行われ、音の高さが知覚されるという説である。


***電話説 [#hcbdc7e8]

 ラザフォードらは、蝸牛は単に音波を神経興奮に変換しているに過ぎず、いかなる音の周波数もそのまま神経興奮の形に置き換えられ、中枢に伝えられると考えた。よって、周波数分析は内耳のレベルで行われるのではなく、大脳中枢で行われると考えた。つまり、音の高さの感覚を決定するのは、神経興奮の頻度であると考えたわけである。この仕組みは、電話が音波を電流に変えるときと同じであるため、この説を''電話説''という。

 この電話説では、内耳は[[電話]]機と同じ働きをし、音波という機械振動を単に神経興奮という電気信号に変えるだけの役割を持つ。音の高さの決定や複合音の分析などは、すべて大脳中枢で行われると考えるわけだ。

 しかし、[[ニューロン]]が電話線と同じ方法で信号を伝えることはなく、現在ではこの説は誤りであることが示されている。


***斉射説 [#q39c52c0]

 ウィーヴァーとブレイは、[[猫]]の第8脳神経に電極を当てながら、猫の耳に音を入れて、電極から取った電流を増幅して音波に還元したところ、元の音とそっくり同じ音が聞こえ、話し声を容易に聞き分けられることを発見した。これを''ウィーヴァー・ブレイ効果(Wever-Bray effect)''という。

 この事実からウィーヴァーらは、神経繊維には刺激に対して反応ができない時期(''不能期''という)があるが、たとえ1本の神経繊維はせいぜい毎秒1,000回以下のインパルスしか生じないにしても、多数の繊維が一緒に働くならば音の周波数情報は頻度によって伝えることができると考えた。つまり、個々の細胞は交互にインパルスを発射するので、神経全体としての興奮を考えれば、高い周波数の音も知覚できるのではないかと考えたのである。これを''斉射説''という。



*参考文献 [#a6bbb74f]

-『音の世界の心理学』