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*目次 [#xa5f6c25]

#contents


*犯罪心理学とは [#k6ac630f]

・犯罪者と犯罪行動の心理を研究する科学である。

・犯罪心理学は、始まって比較的新しいですが、独特の歴史を持つ学問です。 

・イタリアの医学者ロンブローゾに始まるとされています。 

 彼は大勢の犯罪者を実際に診察して、彼らの体格や身体的・心理的特徴を調査し、犯罪者には普通の人にはない変質兆候が高い確率で認められると信じた。 

・ロンブローゾの研究方法は、犯罪を行う主体としての犯罪者という個体の研究から出発するもので、犯罪生物学と呼ばれた。

 これに対して、社会学的な要因を研究する立場が、犯罪社会学である。社会変動・経済的条件・文化葛藤・価値などに関する議論に始まったが、これは個々の犯罪者よりも、社会全体の犯罪性を研究対象とする点で、犯罪生物学とは対照的である。 

・犯罪心理学は、犯罪学の一部である犯罪生物学の、そのさらに一部門である。

-犯罪学 
--犯罪社会学 
--[[犯罪生物学]]
---犯罪心理学 
---犯罪精神医学 
---犯罪人類学


*犯罪心理学の分類 [#yfdf51ef]

 次のように分類されることもある。

-社会学的犯罪学 
--社会学から影響
---人口統計的変数や集団変数と犯罪との関連を検討する。
---集団や社会全般、およびそれらが犯罪行為に及ぼす影響に焦点を当てる。 
-心理学的犯罪学 
--心理学から影響
---個人の犯罪行動に焦点を当てる。
---犯罪者の行動と心的プロセスについての科学。 
-精神医学的犯罪学 
--精神医学から影響
---現代の観点では行動の心理学的規定因と社会的環境との相互作用を検討する。
---伝統的観点では犯罪行動の無意識的で生物学的な規定因を探る。
2人の法精神医学者の発言を引用する。「犯罪者が自らの行いの理由を完全に知っていることはまれである」(Abrahamsen、1952)、「犯罪者が犯罪者たるのは自らの内なる無意識的力のためである」(Roche、1958)
---精神分析理論も精神力動理論も、行動が状況に応じて変化することは認めているが、こうした多様性を説明しうる永続的で一般性のある力動的傾向や動機的傾向が根底に存在すると結論付ける。


*犯罪心理学の対象 [#a8d1c3b1]

-人はなぜ犯罪を犯すようになるか。
-犯罪を犯す人々と犯さない人々との間には、心理学的特性の違いがあるか。 
-罪の裁きを受けた後に、我々はどのようにして彼らを再び市民社会の中に迎えたらよいか。 
-など


*犯罪心理学の難しさ [#p22a8d50]

 犯罪心理学が持つ難しさのひとつに、対象の多様性と異質性がある。犯罪という概念は元々社会的・法律的なものであって、心理学的に定義された者ではない。これが、知覚心理学や発達心理学や異常心理学と、犯罪心理学が違うところといえる。

 我々文明国では、一定の法律や規則が決められており、その中で罪となる行為が規定されている。これを定義上での犯罪と呼ぶことにする。この定義上の犯罪の概念は、我々個人個人が心に抱く悪や罪のイメージとは一致しないことがある。例えば、車を運転していて、制限速度50[km/h]のところを51[km/h]で走れば、道路交通法に違反するが、心に抱く罪には該当しないだろう。また、今日だれしもこういったことは絶対に犯さないとはいい切れないだろう。犯罪者と呼ばれるのはたまたまそれが発覚して逮捕された人々だけである。つまり、我々は基本的に全員が犯罪者であるが、犯罪者として裁かれるのは運の悪い人間かへまな人間だけであるともいえる。こうした前提に立つと、犯罪心理学の研究対象は人間全体であるというのとほとんど変わらないことになってしまう。

 しかし、犯罪者という言葉に接するときに我々の心の中に浮かぶイメージは、定義上での犯罪とは異なり、特別なイメージがあるはずだ。例えば、残忍で冷酷な殺人鬼、一見人あたりのよさそうな狡猾な詐欺師、野獣のような強姦累犯者、陰湿で鬱屈した放火人などである。これらのイメージの土台は、明文化された法律の規定の有無にかかわらず、一定の行為を罪や悪と捉える人類共通の認識といえる。これを''自然犯罪''と呼ぶことにする。

 そして、一般の人々は、これらの犯罪者の存在や行為の中に、自分の市民的意識から抑圧し追放しおおせた原始的な衝動(攻撃衝動や性衝動など)の亡霊のようなものを見るのである。 

 したがって、犯罪心理学には、犯罪者の科学的研究を通して彼らの心理を把握し、刑事政策や社会の福祉に貢献するという実務的な目的の他に、我々人間一般の心の中に秘められている異常性や本性を、特定の個体を通して研究するという、いわば人間学的な目的を持っている。


*人が残酷になってしまうのは何故か [#wcd1979f]

**没個性化 [#weeff751]

・人間は、悪魔的なコスチュームを付け、個人の感覚を失ったときの方が残酷になる。たとえ悪魔的なコスチュームであっても、それぞれ個性的であったり素顔が出ていたりしては、その効果は出ない。 

・心理学者のジンハルドは、そうした没個性化に、すべての反社会的行動の原点があるとしている。 

・没個性化は、大量虐殺のような社会的残虐行為だけでなく、暴徒の群れ、心ないフーリガン、集団リンチといった様々な形で表出する集団的行動に共通して使用される概念である(Postmes & Spears、1998)。

・しかし、没個性化には必ずしも群集が関連してはいないし、大人数を必要とするわけでもない。 

・その効果は変装、仮面、皆が着ているユニフォーム、あるいは周辺が暗いことによって達成される。 

・人々はアイデンティティが失われると口汚く、攻撃的で、暴力的になる。 

・この現象は、歴史を通して、戦いに備える兵士が出陣のための化粧や仮面や衣装を見につけてきた理由の説明となるかもしれない。現代の兵士、ゲリラ、軍事顧問でさえ、理由の説明となるかもしれない。 

・また、没個性化はKKK(Ku Klux Klan:クー・クラックス・クラン)のようなグループのメンバーが日中は一見立派な市民であるのに、夜は暴力的で頭巾を被ったテロリストへと簡単に戻ってしまうことへの説明に役立つかもしれない。 

・しかしここでも、気質やその他の要因が何も作用していないと仮定するのは単純化しすぎる。


**グリーンによる職業犯罪類型 [#ue211f6b]

|職業犯罪|詳細|
|組織的犯罪|企業や機関による違法行為|
|専門職的犯罪|職務中に犯罪の機会があって行われる違法行為|
|政府役人による犯罪|政府役人における違法行為|
|個人的犯罪|企業や組織に所属する個人が、自らの利益や金銭的利得のために行う違法行為|

**ホワイトカラー犯罪 [#u0690ba2]

・アメリカの犯罪学者サザーランドは、『ホワイトカラー犯罪』の中で、エリートサラリーマンの犯罪の特徴は「組織的証拠隠滅、口裏合わせ」と「罪悪感の欠如」にあるという。 

・サザーランドによれば、企業犯罪は、組織的証拠隠滅と口裏合わせによって隠蔽されてしまうので、ほとんどが不起訴になるという。 

・集団の知的レベル、判断力の水準は、人間ひとりのそれよりも格段に劣るという心理作用がある。企業犯罪もこれに当てはまる。 

・しかし、企業犯罪の場合は、犯罪が起こる理由はそれだけではない。サザーランドは、ホワイトカラー犯罪が起きる理由を分化的接触理論によって、次のように説明している。 

 ''分化的接触理論''とは、犯罪は犯罪者個人の心理や性格、遺伝的素質によって起きるのではなく、人々の社会的相互作用の過程で学習される行動だとする考え方である。つまり、ホワイトカラー犯罪は、その時代に即したサラリーマンや企業にとってある意味で正常な日常行為であり、学習されるべき大人の知恵だというのである。これは罪悪感のない確信犯といえるのではないだろうか。



*犯罪者の分類 [#m0ad0419]

**アシャフェンブルグの説 [#x2dc81d8]

 アシャフェンブルグは犯行様式から次の7つに分類した。 

-偶然犯人 
-激情犯人 
-機会犯人 
-予謀犯人 
-類犯者 
-習慣犯人 
-職業犯人


**グルーレの説 [#pa32600d]

 グルーレは動機から次の5つに分類した。 

-傾向からの犯罪者 
-薄弱からの犯罪者 
-熱情からの犯罪者 
-名誉確信からの犯罪者 
-困窮からの犯罪者


**ゼーリッヒの説 [#re7b0055]

 ゼーリッヒは犯罪の生の形式と犯罪者の性格類型から、これをセットにした犯罪者の類型を考えた。 

-労働嫌忌からの職業犯人 
-抵抗力薄弱からの財産犯人 
-攻撃性の暴力犯人 
-性的抑制力のないための犯罪者 
-危機犯罪者 
-原始反応犯罪者 
-確信犯人 
-社会的訓練の欠陥からの犯罪者 

 なお、小田晋は、ゼーリッヒの犯罪者の類型に従い、日本の犯罪者・非行少年を研究・追試した。


**ジェンキンスの説 [#w792b386]

 ジャンキンスらは、500例の少年の記述的特徴94を選んで、項目のクラスタ分析を試みて、次の3群に分けた。 

-社会科されていない攻撃型 
-過度に禁圧された型 
-擬似的に社会化された型


**精神医学の診断類型 [#uf72f533]

 精神医学の診断類型は、そのまま犯罪者の分類にも用いられる。 

-正常な犯罪者 
-精神薄弱の犯罪者 
-精神病質の犯罪者 
-精神病の犯罪者


*体型と犯罪 [#c26cc6e1]
*犯罪と身体的特徴 [#c26cc6e1]

**シェルドンの理論 [#c91d3dac]
**シェルドンの体型分類法 [#c91d3dac]

・シェルドンは、アメリカ合衆国において、似てはいるが、よりすぐれた体型の分類を開発し、体型と非行とを関連付けた。 
-シェルドンは、アメリカ合衆国において、似てはいるが、よりすぐれた体型の分類を開発し、体型と非行とを関連付けた。 
-シェルドンの方法は''ソマトタイピング(体型分類法)''と呼ぶ。
-シェルドンは広範囲に身体の測定値を記録化して集め、次の体型に分類した。

・シェルドンの方法はソマトタイピング(体型分類法)と呼ぶ。

・シェルドンは広範囲に身体の測定値を記録化して集め、次の体型に分類した。

|体格|気質|
|内胚葉型(ぶよぶよしている)|社交的、食べるのが好き。|
|外胚葉型(きゃしゃで細い)|控えめ、内向的。|
|中胚葉型(筋肉質で逆三角形)|大胆、競争好き。|
|均整|上記の混合。|


**脳と犯罪 [#e6f5ccdc]

-犯罪者の脳のレントゲン線撮影をすると、高率に異常所見や境界域の所見が発見される。
-西山詮は医療少年院で精神病質と判断された非行少年51人の[[気脳写]]を試み、40%に異常を認めて、脳室系の拡大と、爆発性・気分易変性との関係を主張した。
-福島章は東大病院神経科で精神鑑定を受けた20例の精神病質犯罪者の気脳写を調べた結果、65%に異常所見を認めた。そして、シュナイダーの惰性欠如にあたる犯罪者には、左右の脳室の大きさが著しく違うアンバランスな脳が多いことが発見された(非対称性の脳室拡大)。
-ハンブルク大学のボクニクによると、犯罪者の58%に気脳写で異常が認められ、特に風俗犯・窃盗犯に高率であったという。
-一般人口中の異常所見率は10%以下であるので、犯罪者では非常に高いことがわかる。

**犯罪と染色体異常 [#eea983d5]

-通常ヒトの染色体は2個であり、男性ならXY、女性ならXXである。しかし、3個の染色体を持つ個体があり、これにはクラインフェルター症候群(XXY)と、XYYの2種類がある。
-浅香昭雄らの調査によると、XXY,XYYのいずれも少年鑑別所・少年院・教護院などでは一般人口中の頻度よりも高頻度に見出され、特に医療少年院における頻度が高いという。
-XXY個体の犯罪には、気分変動や脳障害に基づくと思われる衝動的な窃盗・性犯罪・放火などが多い。
--この受動・攻撃犯罪の多い理由は、彼らの多くが知能に劣り、性格的にも受動的・不活発で女性的であることから説明できるという。
-XYY個体の犯罪には衝動的で攻撃的なものが多く、身長が著しく高く、身体の異常を伴うことも多い。
--かつては「危険な生まれつきの悪党」などと呼ばれたが、環境に恵まれれば犯罪に陥らないケースが多い。



*知能と犯罪者 [#h892e1de]

-ゴダード、ロンブローゾ、ウッドワードなど多くの学者によって、犯罪者は非犯罪者より知能が低い可能性が高いと結論付けたが、現在では非行少年と飛行のない少年との間には知能の有意の差はないとされている。 
-今日では、精神薄弱の診断は知能テストによってIQを測定し、これを参考にして行うことが多い。 
-IQ70未満を精神薄弱としている。
--これは知能の分布を正規分布と仮定し、その標準偏差の2倍のところで線を引いたものである。この定義によると、一般人工の精神薄弱者の割合は約2.7%となる。 
-また、IC70〜80の間を精神薄弱と普通域の中間として境界域と呼ぶこともある。最近のDSM-IIIでは、IQ70〜85を境界域と定義しており、診断基準は一定していない。 
-次の分類は、アメリカ精神薄弱協会によるものである。 

|''知能指数''|''標準偏差σによる表現''|''分類''|
|〜24|100-5σ|最重度(profound)|
|25〜39|100-4σ|重度(severe)|
|40〜54|100-3σ|中等度(moderate)|
|55〜69|100-2σ|経度(mildb)|
|70〜85|100-σ|境界線(orderline)|


*犯罪と親子関係 [#fea1933b]

**黒い羊の仮説 [#sd55f9ea]

・アメリカの女流精神分析学者ジョンソンとスズレクの提出した仮説。この仮説は、親と子の間で起こる病理現象の一種であるが、しばしば立派な両親の子供に不良少女や非行少年などが見られることを巧みに説明できる。


*犯罪と双生児 [#v15a56cc]

-一卵性双生児は遺伝形質がまったく同一であるから、一方が精神病になったりすると、もう一方も同じ精神病になる率が高いと考えられていた。
--これを''一致率''と呼ぶが、二卵性双生児は卵の違った兄弟なので、当然一致率は低い。
-犯罪における一卵性双生児の一致率は素因論の優勢であった戦前の研究では7割前後の成績で、しかも犯行の種類や手口まで奇妙なほど類似するという学者までいた。
--この当時の研究は双生児の調査組数も少なく、しかも一卵性・二卵性の判定法の
信頼性も低かったので素因論は下火になったが、デンマークのK・クリスチャンセンが1973年に行った研究によると、一卵性双生児の一致率は67組中35.8%で、二卵性双生児でも114組中12.3%であり、素因の影響を完全に否定できない成績を残している。


*参考文献 [#x2fe8a2e]

-『犯罪心理学入門』
-『こころの科学75 精神鑑定』
-『精神分析が面白いほどわかる本』
-『犯罪心理が面白いほどわかる本』
-『犯罪心理学 行動科学のアプローチ』
-『狂気と犯罪』
-『犯罪の心理学 なぜ、こんな事件が起こるのか』
-『かんたんな工夫で身を守る!1人暮らしの防犯マニュアル』