はじめて商標登録に挑戦した話~「ハッキング・ラボ」編

2021年3月19日

はじめに

一時期Pythonが商標登録されてしまったことが話題になりました。このようなことは他の場面でも起こりえます。

「ハッキング・ラボ」シリーズの読者、サークルメンバーとその支援者たちのおかげで、「ハッキング・ラボ」コミュニティが盛り上がっています。
そんな中、前述の「Pythonの商標登録問題」のように、まったく関係のない第三者に「ハッキング・ラボ」の商標を取られてしまうと、その盛り上がりに水をさすことになってしまいます。これを阻止するために、自腹を切って「ハッキング・ラボ」の商標を取ろうと決意しました。
結果として商標を取ることができたので、皆さんと共に思う存分「ハッキング・ラボ」を拡張していけます。今後、ハッキング・ラボが全世界に広がり、コミュニティを通じて仲間たち同士が切磋琢磨してスキルアップしていければ本望です。

登録商標とは

以下のサイトがわかりやすいですので、参照ください。

費用

業者に頼った場合、最終的に次の項目についての費用が掛かります。

  • 調査料
  • 出願手数料
  • 印紙代(出願用)
  • 登録手数料
  • 印紙代(登録用)

ポイントは出願する区分が増えれば、その分だけ丸々増えるということです[1]業者によっては複数区分なら割引するところがあるかもしれませんが、印紙代は実費なので割り引かれることはありません。

例えば1区分の総額が5万円だったら、2区分であれば10万円かかるということです。

取得までの流れ

登録業務サービスを探す【2019年6月6日】

自力で書類を作ったり申請したりするのは大変なので、業者に頼ることにしました。

いくつかの候補の中から、特許業務法人のToreruに決めました。

調査依頼【2019年6月7日】

Toreruの場合、区分数に関係なく調査料は無料です。

調査依頼を出すと、電話での簡単なヒアリングがあります。事前に「ハッキング・ラボ」について調べてくれたらしく、『ハッキング・ラボのつくりかた』 『ハッキング・ラボのそだてかた ミジンコでもわかるBadUSB』の著者であることを伝えました。

ただし、商標出願した「ハッキング・ラボ」という用語を単体で使用した実績はありません。あくまでタイトルに「ハッキング・ラボ」が共通して含まれているだけです。こういった場合は、早期審査の対象にはならないようです。早期審査にならなくても問題ないことを伝えました。

調査完了【2019年6月10日】

2日後ぐらいに、調査完了メールが届きました。調査報告書も添付されていました。

調査結果はA判定。登録の可能性は十分高いことがわかりました。

メールから抜粋

調査報告書には「当てはまりそうな区分」「その見積もり」などが記載されています。

ハッキング・ラボでは9、16、41、42の4区分が関連しそうだと示されていました。

また「関連する他人の商標」として以下の例が示されており、興味深かったです。

  • HappyHacking
  • DIGITAL DATA HACKING
  • HACKING BLOCKER
  • ハッキングブロッカー
  • POWERFUL BACKING
  • Hi Packing…ソニー株式会社が取得。
  • パッ王【パッキング】

商標出願の申込みをする【2019年6月10日】

問題がなさそうだったので、そのまま商標出願の申し込み手続きをしました。

4区分だとコストがそれなりにかかるので悩みましたが、最終的には提示された4区分に対して申し込みました。

また、支払い方法はまとめ払い、存続期間は10年としました。

費用の総額は約23.5万円です。

費用の内訳

自腹としてはきつい金額ですが、皆の「ハッキング・ラボ」を守るための経費と考えました。
元を取るぐらい「ハッキング・ラボ」シリーズの執筆を続けなければなりませんね😅

商標出願完了の通知【2019年6月11日】

Toreruから「商標出願完了のご報告」というメールが届きました。

特許庁の審査結果の到着は約14ヶ月後なんで、気長に待ちましょう。

ところで、Twitter上には商標登録を監視しているボットアカウントがあり、それに補足されました[2]このアカウントを見ていると社会での流れの一部が垣間見られるので、リストに追加することをおすすめです。。日付的には6月11日のツイートなので、ここからも出願が提出されたと判断できます。

登録査定の結果が出た【2020年4月30日】

Toreruから「審査結果のご報告」というメールが届きました。内容によると、登録査定がOKだったので、このまま特許庁への登録料納付手続きを進めるという連絡でした。

約14ヶ月がかかると聞いていましたが、今回は10ヶ月ほどで処理が進んだようです。

商標を獲得【2020年5月1日】

Toreruから「登録手続完了のご報告」というメールが届きました。

J-PiatPatで調べると、商標が登録されていることを確認できました。

「商標出願2019-082499」の照会

ステータスでは「継続」になっています。

商標登録証が到着する【2020年5月22日頃】

5月20日にToreruから「登録証到着のご報告」というメールが届きました。登録証原本が届いたので、郵送にて送るという内容でした。

到着した原本は次の通りです。大切に保存します。

商標ハッキング・ラボ
区分第9類、第16類、第41類、第42類
登録番号第6250305号
登録日2020年5月8日
期限(満了日)2030年5月8日
(状況によっては商標権を更新する可能性あり)
出願番号商願2019-082499
出願日2019年6月11日
  • 区分9:家庭用テレビゲーム機用プログラム,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,コンピュータソフトウェア用アプリケーション(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,電気通信機械器具,電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータートロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子応用機械器具及びその部品,電子計算機用プログラム,電子出版物
  • 区分16:シール,印刷物,手帳,書籍,日記帳,文房具類,定期刊行物
  • 区分41:教育又は娯楽に関する競技会の企画・運営,セミナーの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,技芸・スポーツ又は知識の教授,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),書籍の制作,図書の貸与,図書及び記録の供覧,電子出版物の提供,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。)
  • 区分42:ウェブサイトの作成又は保守,デザインの考案(広告に関するものを除く。),電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,インターネットセキュリティに関する指導及び助言,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),クラウドコンピューティング,コンピュータシステムの分析,コンピュータセキュリティに関する指導及び助言,コンピュータ技術に関する助言

無事はじめての商標登録に成功しました!

なお、Toreruではマイページが次のように表示されるので、今どの段階なのかがわかりやすいです。

マイページ

FAQ

商標を登録されましたが、「ハッキング・ラボ」という用語を使うことは問題ありますか?

結論からいえば、「ハッキング・ラボ」シリーズの宣伝になるのであれば、基本的に問題ありません[3] … Continue reading

例えば、商標の区分に該当し、かつ商用目的であっても、本(商業誌・同人誌)の中で『ハッキング・ラボのつくりかた』を取り上げたり、「ハッキング・ラボ」という用語を使ったりするだけであれば問題ありません。

逆に問題の可能性があるケースは次の通りです。ただし、事前に連絡があり、私が関与あるいはOKを出したものは除きます。

  • 「ハッキング・ラボ」というワードを含むセキュリティサービスを提供する。

「ハッキング・ラボのつくりかた」の内容を実験した結果を、Webの記事、Twitterなどで投稿してよいですか?

まったく問題ありません。事前に許諾する必要性もありません。

ハッキング・ラボの輪を広げるために、むしろどんどん使ってください。

Twitterであれば、「#ハッキングラボ」というハッシュタグを入れてもらえると検索しやすいです。

「#ハッキングラボ」での検索結果

勉強会で『ハッキング・ラボのつくりかた』を使ってもよいですか?

まったく問題ありません。事前に許諾する必要性もありません。

セキュリティ研修・講習、大学の講義、塾の講座で『ハッキング・ラボのつくりかた』の内容をそのまま使ってもよいですか?

問題ありません。

セキュリティに興味を持つ人が増えてくれれば本望です。

可能であれば、その場で生徒さんたちに『ハッキング・ラボのつくりかた』を宣伝してくれるととても嬉しいです。

その他のイベントで「ハッキング・ラボ」シリーズの本を取り上げてもよいですか?

私が著者になっている本であれば、基本的に問題ありません。

もし心配であれば、私宛にお問い合わせください。

TV、ラジオで『ハッキング・ラボのつくりかた』が映っても問題ありませんか?

問題ありません。ご一報くだされば、こちら側でも番組を宣伝します。

実際にこういう事例もあります。

Youtube等の動画配信で『ハッキング・ラボのつくりかた』について触れる際に許可は必要ですか?

本の紹介、内容の引用の場合は、許可は不要です[4]連絡してもらえれば、こちら側から動画を宣伝することもありえます。

本の中のイラストを引用する場合には、状況が異なります。文章に関しては私が執筆しましたが、イラストについては出版社側が清書しているためです。引用の範囲内なら問題ないはずですが、念のために出版社の法務部門にお問い合わせして、掲載許可を取ってください。

翔泳社サイト内>「Contact Us」

過去にYoubetuで紹介したいという事例がありました。その際にも許諾は降りています。詳細は次の記事を参考にしてください。

商標権侵害する可能性のある商品やサービスを提供したい、あるいはすでに侵害していた

個別に対応しますので、私宛にお問い合わせください。

おわりに

商標を取得して10年は保護されます。
その間は「ハッキング・ラボ」シリーズを書き続け、ハッキング・ラボをさらに拡張していきたいと思っています。
しかしながら、皆さん一人一人の力も必要としますので、今後もよろしくお願いします。

References

References
1 業者によっては複数区分なら割引するところがあるかもしれませんが、印紙代は実費なので割り引かれることはありません。
2 このアカウントを見ていると社会での流れの一部が垣間見られるので、リストに追加することをおすすめです。
3 サークル「ミライ・ハッキング・ラボ」のメンバーは、自身の著作物のタイトルに「ハッキング・ラボ」を入れてもまったく問題となりません。サークル名が由来であり、それをメンバーは使う権利があります。私がOKを出す云々というのはおかしい話です。
4 連絡してもらえれば、こちら側から動画を宣伝することもありえます。