トランジスターのスイッチング作用
目次
はじめに
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トランジスターとは
トランジスターは、増幅作用(信号を増幅する)やスイッチング作用(スイッチのように回路をON/OFFする)を持つ部品です。
トランジスターは20世紀最大の発明ともいわれています。トランジスターが発明される前は、真空管やリレーが使われていました。トランジスターの発明により、電子回路の集積化が始まりました。マイクロプロセッサーに内蔵されたトランジスターは、人の目には見えないほどの大きさになっています。
バイポーラトランジスター
トランジスターには様々な種類がありますが、単にトランジスターというときはバイポーラトランジスタを指します。これは異なる特性を持つ2種類の半導体(N形半導体とP形半導体)を組み合わせて作られています。そして、その組み合わせにより、NPN型トランジスターとPNP型トランジスターに大別されます。
トランジスターの3つの電極
トランジスタには3つの電極があり、それぞれエミッタ(E)、コレクタ(C)、ベース(B)と呼ばれています。
エミッタ(E) | 電子あるいは正孔(プラスの電荷)を放出する電極。 |
コレクタ(C) | エミッタから放出された電荷を集める電極。 |
ベース(B) | エミッタとコレクタ間を流れる電流の量を制御するために使う。 |
FET
バイポーラトランジスターはベースに電流を流すことでスイッチングを実現していました。一方、FET(Field-Effect Transistor:電界効果型トランジスター)という電子部品を使うと、ゲートに電圧をかけることでスイッチングを実現できます。FETはバイポーラトランジスターより大電流を制御するのに向いています。
FETの分類
FETは、ゲートの構造から次のように大別されます。
- 接合型FET(Junction EFT)…JFETと呼ばれる。ゲートに半導体が接合している。
- ショットキー型
- MOS型…MOSFET(Metal Oxide Field-Effect Transistor:モスフェット)あるいはMOS-EFTと呼ばれる。ゲートに酸化シリコンで被膜された絶縁体が接合している。
MOSFET
MOSFET(MOS-FET)は導体と絶縁物質のいくつかの層をサンドイッチにした構造を持つ電子回路です。
MOSFETは高速化と集積化が飛躍的に進歩したため、現在では広く使われています。
次の画像は実際のMOSFETの外観です。左から2SK4150(250[V]、0.4[A])、BS170(60[V]、0.5[A])、EKI04047(40[V]、80[A])です。
大電流が流せるように、放熱用のヒートシンクを取り付けるための穴を備えているものがあります(上図の一番右)。
3本の端子があり、それぞれゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)に割り当てられています。どの端子がどれに対応するかはデータシートを確認する必要があります。
CMOS
CMOS IC(単にCMOSとも呼ぶ)は、原理の異なるMOSFETによって構成されたICです。
MOSFETの構造
バイポーラトランジスターはN形半導体とP形半導体の三層構造でした。MOSFETもN形半導体とP形半導体で構成されていますが、図のような構造になります。N形半導体がベースであればNチャネルMOSFET、P形半導体であればPチャネルMOSFETといいます。
NチャネルMOSFET | nMOSトランジスター | DとSがN形半導体 |
PチャネルMOSFET | pMOSトランジスター | DとSがP形半導体 ※NチャネルMOSFETの逆バージョン。 |
他に、丸で囲む外囲器を省略したバージョン、矢印ではなくバブル(丸)で表現したバージョンもあります。
ベースとなるN形半導体(あるいはP形半導体)の両端に、P形半導体(あるいはN形半導体)が埋め込まれています。ベースの中央部の上には絶縁体の薄い膜があり、その上に金属の膜が乗っています。ここからゲートという端子が出ています。また、両端の半導体からはソースとドレインという端子が出ています。
回路図におけるMOSFETの記号は、矢印の方向によってNチャネルMOSFETなのかPチャネルMOSFETなのかを識別できます。
MOSFETを用いたスイッチ回路
ここではNチャネルMOSFETを例にして解説します。3つのパターンに分けて、MOSFETの内部でどうなっているのかを見ていきます。
[1]ゲートに何も接続されていないとき(オープンのとき)
⇒PN接合のダイオードと同じであり、N形半導体からP形半導体へ電流は流れない。
⇒負荷に電流が流れない。
[2]ゲートがソースと同電位(ここではGND)であるとき
⇒[1]の場合と同じ理由により、負荷に電流が流れない。
[3]ゲートに正の電圧を加えたとき
⇒金属は導体、P形半導体は半導体である。この2つが絶縁体を挟んでおり、これは一種のコンデンサと同等の構造といえる。
⇒ゲートに電圧がかかると、半導体に電気は流れないが、金属に正の電荷が貯まる。
⇒ソースおよびドレインのNチャネル半導体の電子がゲートに引き寄せられ、両者間のPチャネル半導体に入る。
⇒絶縁体の境界にあるP形半導体が、N形半導体に変化する。このP形からN形に変化した部分をNチャネルという[1]「P形からN形に反転したこと」と「Nチャネルが非常に薄いこと」から、反転層と呼ばれることもあります。。
⇒Nチャネルは一種の橋のような役目を果たし、ドレインからソースまでにN形半導体になる。
⇒電子はN形半導体を移動できるので、ドレインとソースに接続した回路に電流が流れる。
⇒負荷に電流が流れる。
NチャネルMOSFETはゲートに電圧を加えるとドレイン・ソース間が短絡して電流が流れる
以上により、ゲートに電圧を加えるかどうかで電流の流れをON・OFFできます。これはスイッチ回路そのものといえます。NチャネルMOSFETはゲートにHighを入力したときに、電流が流れます。このような方式をアクティブH駆動といいます。
逆にLowを入力した際に電流が流れる方式をアクティブL駆動といいます。
NチャネルMOSFETとPチャネルMOSFETのスイッチ作用
ここではNチャネルMOSFETの構造に注目して解説しましたが、PチャネルMOSFETも同様に考えることができます。ゲートに負の電圧を加えるかどうかで、電流の流れを制御できるのです。
NチャネルMOSFETにおいてドレイン・ソース間に電流が流すために必要なゲート電圧をしきい電圧(スレッショルド電圧)Vtと呼ばれます。典型的な値は0.3~0.7[V]です。
MOSFETのスイッチングの各パターンまとめ
スイッチの挙動を対応するように、流れるときをON、流れないときをOFFとします。
ゲートがVcc(1) | ゲートがGND(0) | |
NチャネルMOSFET | ON | OFF |
PチャネルMOSFET | OFF | ON |
MOSFETのスイッチモデル
NandGameでの解説を理解しやすいようにするため、ここからはnMOS・pMOSという表現に切り替えます。
※解説は『ディジタル回路設計とコンピュータアーキテクチャ 第2版』(翔泳社刊)を参考にしました。
MOSFETは完璧なスイッチではない
nMOSトランジスターはゲートがVDDであるとき、ドレイン端子からの出力は0~VDD-Vtの範囲になります。つまり、nMOSトランジスターは0の出力は得意ですが、1の出力は苦手であるということです。
同様にして考えると、pMOSトランジスターは1の出力は得意ですが、0の出力は苦手です。
それぞれの得意なことを組み合わせることで、論理ゲートを作れるのです。
NandGameでは「CMOS NANDゲート⇒CMOS NOTゲート」という流れで学習します。CMOS NOTゲートの方が基本となるので、先にこちらの挙動を理解すべきです。
トランジスター vs. リレー
トランジスター | リレー | |
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長期の信頼性 | 抜群 | 限定的 |
DP・DT構成の可否 | No | Yes |
大容量スイッチングの能力 | 限定的 | 優れる |
交流電流のスイッチングの可否 | 通常はNo | Yes |
小型化への適合性 | 通常はNo | 選択肢なし |
熱への過敏性 | 抜群 | 非常に限定的 |
高速でスイッチングする能力 | 甚下 | ほどほど |
低電圧小電流での価格優位性 | 抜群 | 限定的 |
高電圧小電流での価格優位性 | No | Yes |
OFF時の漏れ電流 | Yes | No |
References
↑1 | 「P形からN形に反転したこと」と「Nチャネルが非常に薄いこと」から、反転層と呼ばれることもあります。 |
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