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参考:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 | 消費者庁

はじめての株主優待クロス【ほぼノーリスクでマクドナルドの優待を入手する】

2022年10月13日

目次

はじめに

いつもブログをご覧いただきありがとうございます。

セミリタイア・ミジンコのIPUSIRONです😀

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独断と偏見によるセミリタイアへの必須度

項目概要
シーン増やす力
本来投資に使えない資金(生活防衛資金など)を有効活用して、お金を増やす。
金銭的リターン株主優待で得た商品(商品券やクオカードなど)を売ることで現金を得られる。
十分な余裕資金があれば、ちょっとやるだけで年6~10万円ぐらいを期待できる。頑張れば年数十万円も可能だが、手間がかかりすぎる。
金銭的コスト優待クロスにはコストがかかるが、銘柄選びとコスト管理をしっかり行えばコストよりリターンの方が圧倒的に大きい。
時間的リターン特になし。
時間的コスト株主優待の権利を得るのに、数十分×銘柄数ぐらいの時間的コストがかかる。現金化するにはさらに時間がかかる。
総合ランク(S>A>B>C>D)セミリタイアへの必須度はAランク
優待クロスは確かにお得だが、これだけではセミリタイアをほぼ実現できない。あくまで補助的に活用することで、資産を増やせる。得られた資産は再投資することで、結果的にセミリタイアが近づく。
ミジンコ的には「生活防衛資金でまとまったお金を放置するぐらいであれば、優待クロスに活用したほうがお得」といえる。
セミリタイア・ミジンコ指標

本記事を読むにあたっての前提知識

株主優待について知らない方はまず以下の記事を読んでください。

株主優待クロスとは

クロス取引とは株の「買い」と「売り」を同時に同じ数だけ取引することです[1]証券会社によっては「つなぎ売り」「両建取引」とも呼ばれます。。同時に行うことが「クロス」と呼ぶ所以です。株主優待クロス(以下、優待クロスと略す)とは、クロス取引を活用してほぼノーリスクで株主優待を入手する手法です。

クロス取引とは、ある銘柄の注文において、同一銘柄、同数量の買い注文と売り注文を同時に発注し、約定させる取引をいいます。

https://www.rakuten-sec.co.jp/web/domestic/stock/rule/cross.html

優待クロスは証券会社が推奨している、合法的な手法です[2]証券会社にとっては取引数が多ければ多いほど儲かります。。安心して株主優待を入手できます。

「現物買い」と「信用売り」の状態で株主優待の権利を獲得します。権利確定日前後は株価が急激に変動しがちですが、その影響をまったく受けません。なぜなら「買い」と「売り」を同時に持っているので、株価が上がっても下がっても相殺されるからです。よって、優待クロスのわずかなコストを支払うだけで、株主優待を得られることになります。

優待クロスの特徴

メリット

  • ほぼノーリスクで株主優待(以降、優待と略す)を得られる。
    • 銘柄の値動きはまったく関係なく、失うのは証券会社に支払う少々の手数料のみ。
    • 一般に優待目当てで大金を投じるのはリスクがあるが、優待クロスでは値動きをまったく気にすること必要がないので、大金を投入してそれに応じた大量の優待を得られる。
  • 得られた優待が金券や割引券などであれば、金券ショップやフリマアプリで容易に現金化できる。
  • ある種「ノーリスク、ローリターン」といえる。
    • 優待クロスはタダ取りではなく、コストとの戦い。その戦いに勝ってこそ「ノーリスク」になる。
    • 一社に対して優待クロスをしてもローリターンかもしれないが、資金に余裕があれば複数社に対して同時に優待クロスをすればよい。そうすればトータルでミドルリターンを狙える。
    • 「ノーリスク」ゆえに、余剰資金ではなく、生活防衛資金といった本来株式投資に使うべきではない資金を活用できる。これが大きい。
      • この辺はIPO投資と似ているかもしれない。
    • 積極的に優待を狙える。たくさん優待の権利を得れば、頻繁に株主優待が届き毎日が楽しい。
  • 優待が大好きな人、注文のスケジュール調整が好きな人と相性がよい。

デメリット

  • コストの計算や管理が大変。
  • (慣れるまで)面倒で時間がかかる。
    • 銘柄の選定、売建注文のタイミング、複数回の取引注文(単に株を持っているだけではなく、いちにち信用であれば現引したり、権利獲得後にクロス注文を解消したりする)
    • そのため初心者が挑戦しにくい。優待クロスのことを理解している人でも、面倒のため卒業する人もいる。優待クロスで消費する時間を使って、別の方法でそれ以上に稼いだ方がよいと考える人もいる。
  • 普通に株(現物)を購入する行為と比べると、より多くの資金になる。
  • 優待クロスの認知度が高まり、人気のある銘柄を優待クロスしにくい。
  • 優待クロスばかりに熱中して、他の投資がおろそかになりがち
    • 上昇相場であれば、優待クロスで数万円を得るより、普通に現物株を保有してキャピタルゲインを狙った方が効率がよい(ただし、リスクはある)。
  • 月によって利益にばらつきが出る。
    • 3月・9月権利の銘柄は多いので、そのときは忙しく利益を出しやすい。
  • 思惑から外れたことによる失敗リスクがある。
    • 制度信用の逆日歩リスク、両建に失敗するレアケース、誤発注のリスク、いちにち信用の現引忘れリスク。
  • インデックスファンドを積立投資していれば、毎日証券口座にログインする必要がない。また、日々のニュースに無関心でもいられる。
    • しかし、株主優待クロスではクロス取得のために何度も証券口座にログインしなければならない。そのため、どうしても自分のポートフォリオの含み益や含み損が目に入り、一喜一憂してしまいがち。株主優待クロス自体は暴落にまったく影響を受けないというメリットがあるが、インデックスファンドは影響を受けているはずなので少なからず精神をかき乱される恐れがある。
    • この課題を解消するには、株主優待クロス用の口座とインデックスファンドの積立投資用の口座を別にすることが挙げられる。
  • 世間的には非難される行為とみなされることがある。そのため、優待クロスをやる人を「優待乞食」とけなす人がいる。
    • 優待クロスは法律的にまったく問題ないし、証券会社は積極的に推奨している方法である(証券会社は手数料を儲けたいため)。
    • 逆に、会社側や(現物だけを持つ)株主にとっては優待をタダ取りされるだけの邪魔な行為とされがち。

優待クロスに挑戦する前に

いきなり優待クロスに挑戦するのではなく、以下の条件に合致してから挑戦してください。

  • 現物株で株主優待を何度か得たことがある。
  • 信用取引の口座を開設済みである。
    • 信用取引が未経験でもなんとかなる。私自身優待クロスで初めて信用取引を試した。
    • ただし、信用取引の基本的な概念と用語を理解しておく。
      • 各証券会社が信用取引を推奨するためにわかりやすいパンフレットを公開している。それを読んで信用取引のメリット・デメリットを把握しておこう。

信用取引

信用取引とは、現金や株式を担保として、証券会社からお金を借りて株式を買ったり(信用買い)、株券を借りてそれを売ったり(信用売り)する取引のことです。

預けた担保の評価額の約3倍までの信用取引ができます。

いくらあれば優待クロスにチャレンジ可能か?

結局いくらあればよいのか気になる人も多いと思いますので、先に結論を述べます。

30~40万円の銘柄を優待クロスするのであれば、現金40~50万円があればできます。

この金額が必要といっているだけであり、なくなるわけではないので安心してください。最終的には優待クロスのコストに相当する、少額の数十~数百円程度を消費するだけです。

保証金は最低30万円

それでは、この金額はどうやって求められたのかについて解説します。

信用取引特有の用語や考え方がありますが、最初は基本だけ抑えておけば十分です。
用語がどうしても頭に入らなければ、後半の実践編を読んでみるのが手っ取り早いでしょう。

保証金(委託保証金)とは保証金現金(信用取引用の預り金にある現金)と代用有価証券の評価額の合計値になります。

信用取引をするには保証金として最低30万が必要です。

しかしながら、優待クロスをするには30万円では足りません。

ギリギリだと金利や貸株料などがかかった際に30万円を下回ってしまいます。すると、30万円を満たすまで信金を追加しなければならない状態(追証という)になります。

余裕を持った金額が必要です。

保証金率は約定代金の30%以上

保証金率(委託保証金率)は、保証金を建玉約定代金で割って100をかけた数字です。

委託保証金率=(保証金現金+代用有価証券評価額)÷建玉約定代金×100

例えば、保証金が300万円、建玉約定代金が500万円なら保証金率は60%、建玉約定代金が800万円なら委託保証金率は37.5%となります。

委託保証金率は、法令で約定代金の30%以上と決められています

例えば、信用取引で約定代金1,000万円の信用買いをする場合、約定代金の30%に相当する300万円を委託保証金として差し入れる必要があります。

証券会社では現在の保証金と保証金率を確認できるページがあります。楽天証券では次のように表示されます[3]証券口座によっては若干用語が異なります。

この画像の例について補足します。
保証金現金が14万円と少ない割に、保証金余裕額が1370万円あるのは、代用有価証券を割り当てているためです。
現在の時点では、信用取引の建玉がないので、信用新規建を保証金余裕額で割ると3.3…になります。レバレッジが約3倍(=3.3倍)ということを逆算できたわけです。

委託保証金率として30%ぎりぎり上をキープするのではなく、余裕を持たせたうえで売買しましょう。

一般信用と制度信用

信用取引は一般信用と制度信用に大別されます。本記事では一般信用のみに注目しますので、これらの違いについては軽く読み流す程度で構いません。

一般信用と制度信用はそれぞれ借りる場所が異なるので、貸株料(借りるときにかかるお金)が異なります。

  • 一般信用…自分の証券口座のある証券会社がお金や証券を貸してくれる。自分の親から借りるようなもの。
  • 制度信用…外部の証券金融会社である日本証券金融がお金や証券を貸してくれる。祖父母から借りるようなもの。
一般信用制度信用
貸株料高い(楽天証券では3.9% or 1.1%)
証券会社によって異なる[4]一般信用取引の金利は自由に決められるためです。
安い(1.15%程度。楽天証券では1.1%)
※ただし、逆日歩が発生する可能性がある。
借りられる期間無期限が多い[5]証券会社によります。楽天証券では、一日・短期(2週間)・無期限の3種類があります。選べるかは銘柄やタイミングによります。6ヶ月まで
銘柄多くの銘柄が対象優良銘柄のみ
一般信用と制度信用の比較

借りた株式の人気が高まってしまうと、制度信用の場合は逆日歩という費用が発生します。人気が高まるにつれて費用が大きな金額に跳ね上がり、結果的に制度信用による売建コストが増大するケースがたまにあります。

一方、一般信用は金利が割高ですが、逆日歩は発生しないので、コストが明確です。

よって、優待クロスをするのであれば、一般的には一般信用の方が向いています。特に初心者はそうです。

制度信用の逆日歩

制度信用の場合、証券会社の貸株残高(売建)が融資残高(買建)を上回り、株不足になった場合に売り方が買い方に対して株の品貸料を支払うことがあります。この品貸料を逆日歩ぎゃくひぶといいます。

逆日歩が起こるのか、金額がいくらになるかわかりません。過去の傾向からある程度推測はできますが、正確なことがわからないのです。

売建した銘柄に逆日歩がつけば、決済時に逆日歩を支払います。買建した銘柄に逆日歩がついた場合は、決済時に受取ります[6]これを逆手にとって、逆日歩が発生してそれを受け取ることを狙う投資法もあります。

制度信用で優待クロスした際には、売建の逆日歩なので支払う側になります。例えば、逆日歩が10円であれば、1日1株について10円かかるという意味です。逆日歩が付いたのが2日間で、100株であれば、計2,000円(=10円×100株×2日)かかることになります。

本記事では一般信用を用いるので、逆日歩のことを考慮する必要はありません。

もう少し逆日歩について知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

一般信用の長期と短期

一般信用では長期(楽天証券では「無期限」と表現する)か短期かを選べます。「短期の方が借りる期間が短いので、貸株料が安い」と思ってしまいますが、実際には逆です。楽天証券の一般信用の貸株料は次の通りです。長期の方が3分の1以上も貸株料が安くなっています。

長期1.10%
短期3.90%
楽天証券の一般信用の貸株料(年率)

よって、長期で借りられるなら、長期で借りた方が得ということです。これは優待クロスのときも同様です。

3分の1も差があるのであれば、短期で2週間前から借りるより、長期で6週間前から借りた方が貸株料が安く済むとういことになります。早めに注文できるということは在庫の観点からも余裕をもって取得できるということです。

しかし、残念ながらみんな同じことを考えるのです。よって、一般信用(長期)の在庫はすぐになくなるのです。どうしても長期の在庫が復活せずに借りられなければ、短期で借りて優待クロスするしかなくなります。

一般信用の在庫が復活する時間【人気項目】

一般信用の在庫は決まった時間に補充されます。

証券会社補充される時間注文可能な時間狙うべき時間
SMBC日興証券平日17時前[7]日興証券は早朝、ザラ場中、夜に万単位で補充されるときがあります。17時0分0秒17時0分15秒~25秒
楽天証券平日19時前[8]17時ちょっと過ぎでは補充されておらず、18時半頃には補充されていることがあります。19時0分0秒19時0分2.5秒~3秒[9]1秒ではまだ早いとエラーが出てしまいます。戻っている間にライバルに在庫を取られるでしょう。
SBI証券平日19時直後19時0分20秒頃

SMBC日興証券での株主優待クロスについては次の記事で紹介しています。

優待クロスのコスト

株の取得コストは除き、純粋に優待クロスのコスト、すなわち経費について考えてみます。

次に示すのは一般信用の優待クロスのコストになります[10]制度信用の優待クロスのコストには逆日歩を考慮しなければなりません。これについては上級者向けなので別の記事にします。

  • 売買取引手数料…売りと買いの注文の取引手数料。
  • 貸株料…日割り計算。
  • 配当落調整金…売建については配当に相当分を払う。ただし、後で調整されて結局のところコストにならない。

よって、優待クロスのコストは次のようになります。

(優待クロスのコスト)=売買取引手数料+貸株料

このコストをいくら小さくできるかが、優待クロスではもっとも重要になります。いくら豪華な株主優待をもらったとしても、コストがそれを上回ってしまっては意味がありません。

優待クロスの方法は色々ありますが、本記事ではなるべくコストを安くするために「一般信用で売建(長期 or 短期)と買建(いちにち)のクロス注文を入れる⇒買建を現引する⇒権利付き最終日を越えたら現渡してクロス状態を解消する」という手法を採用しています。そのときのコストは次のようになります。

(優待クロスのコスト)

=買建(いちにち信用)の取引手数料※1+売建の取引手数料※2 ※3+買建の貸株料+売建の手数料+いちにち信用の現引き手数料※1+現渡手数料※4

=売建の取引手数料(0~395円)+買建の貸株料(1日分)+売建の手数料(権利付き最終日を超えるまでの日数分)

※1:楽天証券ではいちにち信用の現引き手数料、現渡手数料、取引手数料はゼロ円です。

※2:取引金額が10万円までなら手数料99円、20万円までなら手数料148円、50万円までなら手数料198円、50万円超なら手数料395円になります。

※3:楽天証券+大口優遇だと約定金額にかかわらず信用取引手数料はゼロ円です。そうでなければ、約定金額によって変化します。

※4:楽天証券では現渡注文の手数料はゼロ円です。

配当落調整金(配当落調整額)

優待クロスをしていると、数ヶ月後に株主優待が送られてくるタイミングで配当金計算書が届くはずです。つまり、その金額の配当金を受け取れるわけです。

しかし、喜んではいけません。信用取引で売建を保有したまま権利付き最終日をまたいでいるため、逆に配当金を支払わなければならないのです。よって、配当金についてはまったく得をしていません(後述していますが損もしていません)。

もう少し詳しく解説します。

一般信用売りの場合、配当落調整金として配当金の100%を証券会社に支払うことになります。一方、現物保有で受け取れる配当金は税調整後約80%です。よって両者の差額(配当金の約20%分)はコストとして負担する必要があります[11]これは配当金(配当利回り)の低い銘柄はコストが安いことを意味します。

もっともポピュラーな「特定口座、源泉徴収あり、配当金の自動受取(株式比例配分方式)」を選択していれば、「現物株の配当金」と「信用取引の譲渡損失(配当落調整金を含む)」は、損益通算されて、翌年1月に現物株の配当金への課税分が証券会社から還付されます。つまり、配当金と配当落調整金は完全に相殺されます

よって、一時的に約20%相当を損しますが、最終的には実質的に損をしないことになります。そのため、優待クロスのコストとしては考えません。

なお、配当金と配当落調整金は相殺されるといいましたが、実際のところ若干得することがありえます。

配当落調整金は譲渡所得扱いです。信用売りで配当落調整金の差額が生じているということは、その分だけ譲渡損になります。よって、別の株取引で譲渡益がある場合、売買益が圧縮されて節税できるのです

さらに、優待クロスをすると、税法上の計算で1株当たりの買付単価が1円切り上がるケースが多いといいます。つまり、売買の出来高が多くなれば、節税効果も大きくなります。

ところで優待クロスが完全に終わった後に、すべての資金を証券口座から移動はできません(移動できても残しておかないといけません)。なぜなら、配当落調整金(配当金の100%分)は資金拘束されるためです。

ミジンコの優待クロス戦略

優待クロスは細かい計算(手数料や金利など)、スケジュール調整との闘いです。つまり、優待クロスで満点を目指そうとするとかなり大変です。「優待クロスが面白い」「相性がよい」と感じる方は優待クロスのスキルを追求するとよいでしょうが、ミジンコとしては60点ぐらいの結果を目指し、残りの力は別の副業に費やします。

日本マクドナルドホールディングス(2702)の優待

優待クロスの対象の銘柄を決定する際は、資金力、優待の充実さ、取得コストを考慮します。

日本マクドナルドホールディングス(以下、マクドナルドと略す)は優待の人気が高く、取引価格も安定し、一般信用で出てくる株数が多い傾向にあります。そこで、はじめて優待クロスに挑戦するにはもってこいといえるので、本記事ではマクドナルドの優待クロスに挑戦してみます。

マクドナルドは6月・12月権利の銘柄であり、優待の内容は次の通りです(記事の執筆時点)。1冊の優待食事券でバーガー類、サイドメニュー、ドリンクの商品お引換券が6枚ずつ入っています。

優待の価値

メルカリとヤフオクで検索すると次のようになります。相場は優待食事券1冊あたり3.8kぐらいです(コロナ禍で相場が下がっている)。5冊セットであれば17~18.5kぐらいになります。

クロス注文の資金について考察する

1株4,980円だったので、100株を買うのに約50万円必要になります。普通に優待の権利を得るだけであれば、50万円で十分ということです。

一方、優待クロスでは最初に信用の買建と売建で各100株を持つことになります。つまり、計100万円分の信用取引になります。

信用保証金(信用取引の保証金)は最低30万なければなりません。これは信用取引をする上での絶対条件です。

そして、信用取引では信用保証金の3倍まで売買できます。担保には株や投資信託を使えますが(こうしたものを代用有価証券という)、話を単純にするためここでは現金のみとします。

本記事では信用取引の買建と売建からスタートするので、単純に50万円÷3×2の信用保証金があればよいというわけにはいきません。先ほどの100万円分の信用取引をカバーするには40万円あれば、その3倍の120万円分の取引枠があり、100万円が収まります。

それに加えて、信用取引の買建を現物株に交換(現引きという)するため、現金50万円必要です[12]交換したら、信用口座の枠がそれだけ空きます。

よって、計90万円(=現物50万円+信用売り40万円)が必要となります。

ざっくりと2倍である100万円以上あればなんとかなるということです[13]心配であれば、信用担保余力の金額と照らし合わせましょう。

以上を踏まえて、優待クロスでマクドナルドの優待食事券5冊を入手しようとしたら、ざっくりと500万円近く必要になるわけです。

以上の話はかなりざっくりとした話です。資金にある程度余裕がある方は、この程度のチェックで十分でしょう。

資金がギリギリの方は後述することを考慮して、もう少し精密にやった方が安心でしょう。

私自身、計算が面倒なので「(50万円の株を対象とするなら)預り金に50万円以上、保証金現金に100万以上」のように、計3倍以上の資金を用意してやっています。
ただし、3月・9月のような優待豊作月では資金が足りなりがちですので、保証金維持率状況を見ながら調整しています。

もう少し厳密な話【補足】

クロス注文は相場が始まる前に予約するので、その時点では株価がいくらになり、いくらの資金が使われるのかは正確にはわかりません。

ただし、株価の1日の動きが制限されています。つまり、株価の変動幅は決まっているわけです。よって、その幅を想定した資金を用意しておけば問題ありません。

では、その変動幅(制限値幅という)とは何なのかについて解説します。終値(前日の株価)を基準として、当日の上限価格と下限価格が決まっています。何らかの原因で大暴騰して上限価格を越えてしまうと売買がストップします。同様に大暴落して下限価格を越えてしまっても売買がストップします。

いずれにしても、その当日において上限価格と下限価格を超えた株価にはならないわけです。その当日に株価が範囲外であれば、その当日は終日ストップします。途中で株価が範囲内になれば、ストップが終わり売買が再開されます。

優待クロスの観点から、次の2つに注意すればよいことになります。

  • 当日売買が再開されなければクロス取引に失敗。売買が再開されれば、その時点でクロス取引に成功(成行のため)。
  • 優待クロスの資金は上限価格を参考にして用意しておけばよい(下限価格は気にする必要はない)。

それでは制限値幅の具体的な値を調べてみます。日本取引所グループのサイトから抜粋します。

マクロナルドを例にすると、終値が4,980円でした。上記の表では、5,000円未満の行に該当するので、制限値幅は上下700円になります。つまり、上限価格は5,680円(=終値+制限値幅の上値=4,980円+700円)になります。

この価格を基準にして資金を用意すれば問題ないことになります。

信用取引のコストのおさらい

  • 一般信用(短期)の貸株料:年3.9%
    • 短期は2週間前から注文可能。
  • 一般信用(無期限)の貸株料:年1.1%短期と比べて、3分の1未満。
    • 返済期限は無期限なので、早めに注文可能。
  • いちにち信用の場合、銘柄により特別空売り料がかかる。

手数料コースによる違い

  • 超割コース…一般信用の取引手数料がかかる。
  • 超割コース(大口優遇)…(約定金額にかかわらず)一般信用の取引手数料は0円。

かなりコストを削減できるので、資金力があれば事前に大口優遇を受けておくべきです。

取得コストを考察する

取得額に加えて、取得コスト(売買手数料+金利)も必要になります。優待クロスでは取得額は結局戻ってくるので、取得コストこそが最も重要です。

様々なサイトで取得コストが公開されていますが、私は以下のサイトを活用しています。

色々と数字をいじってみるとよいでしょう。100株、14日前のコストは次の通りになりました(株価は日によって変動するので数円の誤差はある)。大口優遇であれば「楽天証券(VIP・一日・長期)」[14]VIPが大口優遇、一日は「いちにち信用での買建」、長期は「一般信用の長期」を意味します。、大口優遇でなければ「楽天証券(超割・一日)」[15]超割は普通の手数料モード、一日は「いちにち信用での買建」を意味します。に注目します。

表の見方について簡単に説明します(私自身が最初悩んだので)。

まず「楽天証券(VIP・一日・長期)」を見てください。赤い「買い」が3つ並んでいます。「現物買い」は現物をいきなり買った場合のコストです。「信用買い」はいちにち信用での買建の取得手数料です。「信用金利」はいちにち信用での買建の金利のコストです。いちにち信用は当日のうちに処理(現引)しますが、1日分の金利が発生するのです。それがこれにします。この3つの赤い「買い」の金額を比較すると、最小値が25円です。よって、4行目に「信用有利」(いちにち信用したほうが得)、そのコストは25円と記載されています。

青い「売り」が2つ並んでいます。「信用売り」は一般信用(無期限)における売建の取得コストです[16]「無期限」を「長期」と表現していると思えばよいでしょう。。「貸株料(長期)」は一般信用(無期限)における金利コストになります。優待クロスでは売建を入手してから、最終的に売建を解消するまでの日々の金利が発生します。つまり、この2つの青い「売り」の合計値が、必要コストになります。

よって、買いで25円、売りで210円かかるので、合計で235円かかります。

次に「楽天証券(超割・一日)」を見てください。基本的な見方は先ほどと同様です。買いでは大口優遇の場合は変わりません。一方売りでは「信用売り」と「貸株料」が大幅にアップしています。大口優遇では信用取引の売り買いの手数料がゼロ円であること、金利の安い長期で売建を入手できることが影響しています。

したがって、大口優遇とそうでない場合で730円ぐらい差が出ています。

500株だったら

これは100株のコストです。優待クロスの利益を最大にするため500株にしたら、ざっくりと5倍のコストがかかります[17]厳密には貸株料だけが5倍になり、取得額が大きくなるので手数料である取得コストは逆に下がります。

500株を前倒しで入手した場合

権利付き最終日に近づいてから買えば、売建の貸株料を抑えられますが、在庫切れで入手できなくなる恐れがあります。コスト削減を狙って、最終的に入手できず、優待から得られる利益を失っては本末転倒です。

そして、入手できないリスクを避けるために、4週間以上前から狙いました。取得競争に負けてなかなか入手できませんでしたが、22日前あたりで入手できました。22日前から入手した場合のコストは次の通りです。

さらに、配当落調整金の差額コストを忘れてはいけません。

マクドナルドは1株当たり半年分の配当金が18円だったので、差額は3.6円(=18円×20%)になります。つまり、500株であれば、900円のコストが一時的にかかります。

どの程度の利益が期待できるか

大口優遇、一般信用(長期)で22日前から優待クロスをしたとします。

取得額(必要な資金力)500万円ぐらい[18]いちにち信用の買建を現引して、現物株を入手した後は、250万円分の信用保証金に余裕が出て、他の用途に使えます。
優待クロスにおける取得コスト1,650円[19]配当落調整金の差額コストは最終的に相殺されるので、ここではコストには入れません。
入手した優待優待食事券5冊
メルカリで売る想定価格18,500円
メルカリの手数料(システム手数料)2,500円
送料200円
コストとリターン

(今回の優待クロスでの金銭的リターン)=18,500-1,650-2,500-200=14,150円

何度か画面をポチポチして優待を入手して、メルカリで販売するだけで、約14kの利益になるということです。

楽天証券で日本マクドナルドを優待クロスする

以降は「大口優遇+信用(長期)+1日信用」で解説します。

1:対象銘柄の権利付き最終日等を確認する

対象銘柄の権利付き最終日や権利落ち日については、公式サイト等で確認しておきます。売買ミスが起きないように、しっかりと手帳やカレンダーにマークして日付管理しておきましょう。

権利付き最終日権利落ち日権利確定日
2021年6月28日(月)6月29日(火)6月30日(水)
この日のマーケットが終わるまでに現物株を保有すれば権利が得られる。この日以降に株を手放してよい。
日本マクドナルドの権利付き最終日等

2:クロス注文を入れる【マーケットが開いていない同日にやる】

2a:クロス注文は売建注文から予約します。なぜなら売建注文はいつでもできるものではなく、売建注文に失敗した状態で買建注文してしまってもクロス取引になりません。

楽天証券では19時に一般信用の在庫が補充されます。そこで、19時前に売建注文のページを開いて、後は[注文]ボタン[20][注文内容を確認する]ボタンではありません。こちらを押してしまうと確認画面が出てしまい、争奪戦に負けてしまうことがあります。を押すだけという状態を作っておきます。

  • 売買:売建
  • 市場:東証
  • 信用区分:一般(無期限)
    • 権利確定日が近づき2週間以内になると「一般(14日)」を選ぶしかない。
    • 無期限より14日の方が貸株料が高くなり、損をする。よって、可能であれば2週間以上前から「一般(無期限)」で確保しておきたい。
  • 数量:この例では500株
  • 価格:「成行で執行する」
    • 概算約定代金を確認して、保証金の担保で賄えることを確認する。
  • 執行条件:寄付
    • ここを「寄付」にすると、市場でSORのチェックボックスが消える。
  • 口座:特定
  • 同時にセット注文を:予約しない

さらに取引暗証番号を入れて置き、確認画面を省略するにチェックを入れます。こうしておけば、確認画面を飛ばして、素早く注文を入れられます。

なお、楽天証券はしばらく放置するとタイムアウトするので気を付けてください。

在庫獲得の争奪戦に勝てば、エラーメッセージが出ません。

2b:買建注文を予約します。

  • 売買:買建
  • 市場:東証
  • 信用区分:一般(1日)
  • 数量:500株
  • 価格:「成行で執行する」
    • 概算約定代金を確認して、保証金の担保で賄えることを確認する。
  • 執行条件:寄付
    • ここを「寄付」にすると、市場でSORのチェックボックスが消える。
  • 口座:特定
  • 同時にセット注文を:予約しない

この注文は急ぎでやる必要はないので、確実に行ってください。

3:翌営業日にいちにち信用を現引する

3a:マーケットが開始されたら、「注文照会」画面にてクロス注文が約定していることを確認します。

3b:「信用建玉一覧」画面を開くと、次のように売建と買建が表示されます。

買建はいちにち信用なので、本日中に現引しなければなりません。これを忘れてしまうと、優待クロスの利益が吹っ飛ぶほどのコストのペナルティがあるので注意してください。買建の現引を押します。

現引注文を入れます。その際、現引数量で「全現引」にチェックを入れて、[確認]ボタンを押します。次の画面で暗証番号を入力して[注文]ボタンを押します。

3c:「注文照会」画面と「信用建玉一覧」画面を開いて、現引注文が通ったことを確認します。

4:現渡注文【権利付き最終日の15:30~権利落ち日の9:00】

株を持った状態で権利付き最終日を終えると、株主優待の権利を取得したことになります。

この時点で以下の2つの株を持っています。

  • 現物保有の株
  • 信用取引の売建株

現渡【げんわたし】[21]品渡とも呼ばれます。という処理をすることで、この2つの株を相殺させるのです。

信用売りを精算する方法には「反対売買による返済」と「現渡による決済」のどちらかを選択します。

前者は返済買へんさいかい買戻かいもどしという方法です。信用取引で売却している株式を信用取引のまま買い戻して、借りた株式を返済する方法です。この場合、「信用取引売買手数料がかかる」「売買差額が発生する」[22]建玉を売却して売却金額を受け取るためです。「保有している現物株が残る」[23]信用取引の売建を単独で処分するためです。残った現物株を売却しても、そのときに別の売買手数料が発生します。という特徴があります。

後者は保有している現物株で相殺する方法です。優待クロスでは後者の方法を選びます。

現渡の予約注文は15:30以降にしてください楽天証券では15:30までに現渡としてしまうと、当日の処理になってしまうからです。その結果、権利付き最終日に株を保有していないことになり、株主優待ももらえません。当日のマーケットが終わってもすぐに現渡するのではなく、少し経ってからやるのが安全といえます。

証券会社ごとに現渡の予約注文すべき時間が違うので注意してください。

証券会社時間帯
楽天証券権利付最終日の17時15分以降(~権利落ち日の15時30分)
SBI証券権利付最終日の18時以降(~権利落ち日の当日取引終了)
日興SMBC証券権利付最終日の17時以降(~権利落ち日の当日取引終了)
auカブコム証券権利付最終日の15時15分以降(~権利落ち日の15時14分)
現渡可能な時間帯

4a:楽天証券の「信用縦玉一覧」画面を表示します。対象銘柄の「現渡」というリンクを押します。信用取引の注文画面が表示されるので、「全現渡」のチェックを入れます。すると現渡数量に持ち株数(ここでは500)にセットされるので、数量が合っていることを確認して、[確認]ボタンを押します。

4b:「注文確認」画面が表示されます。内容に間違いないことを確認してから、暗証番号を入力して[注文]ボタンを押します。「注文照会・訂正・取消へ」を押して、現渡の予約注文の内容を見てみます。取引銘柄に間違いなく、取引が「現渡」、注文数量が500になっていればOKです。

改めて「信用建玉一覧」画面を表示すると、注文列から「現渡」が空になっていることがわかります(さっきは「現渡」というリンクがあった)。

4c:以上でやるべきことは完了しました。

5:現渡注文の約定を確認する【権利落ち日】

5a:うまくいっていればもうやることはありませんが、念のために現渡注文が約定していることを確認します。

5b:保有商品から対象の銘柄の現物株が消えているを確認します。さらに「信用建玉一覧」画面で売建株が消えていることを確認します。もし残っていれば、大問題なので急いで処理します[24]現渡すべきところを返済していたりすれば、現物が残っているという状況になります。

【後日談】優待が届いたのでメルカリで売ってみた ~最終利益発表

9月下旬に優待が届いたので、記事にしました。
コロナ禍の影響なのか、徐々に優待食事券の価値が下がっているようです。

優待クロスの応用技を習得する

最初は手探りなのは当たり前です。本記事の手順をなぞりながら何度か試えば、優待クロスの基本が習得できるはずです。慣れてきたら新たな手法を導入して、利益をさらに伸ばすことに挑戦するのもありでしょう。

  • 別名義の口座を活用する。
    • 家族名義の証券口座を活用すると、少ない資金で優待を入手できる。
  • 証券会社を使い分ける。
    • 証券会社によってコストが異なる。
    • 優待クロスをしやすいインタフェースを提供するところもある。
    • 証券会社によって一般信用銘柄が異なり、在庫が復活する時間帯が違う。在庫数も異なる。
    • 一般の取引と優待クロスがごっちゃになっていると紛らわしいので、口座を分ける。
  • コストをさらに削減する。
    • 権利付き最終日まで、現物株を持っている間貸株金利が発生して、わずかながらその分をもらえる。
    • 過去のデータから売建注文の最適な時期を見極める。
  • 在庫問題を考える。
    • フライングクロス
    • 売り禁を回避する。
  • 制度信用を活用する。
    • 逆日部の発生を見極める。
  • 優待をなるべく高く現金化する。
    • 一度に多く売って、売買のコミュニケーションの効率化、送料を安くする。
    • 譲渡禁止の優待もあるで注意して出品すること。
  • 優待クロスの管理を効率化する。
  • 優待クロスを簡素化あるいは(一部)自動化する。

おわりに

優待クロスの応用手法はまだたくさんあります。
これらの手法についてはいつか記事にする予定です。お楽しみに。

References

References
1 証券会社によっては「つなぎ売り」「両建取引」とも呼ばれます。
2 証券会社にとっては取引数が多ければ多いほど儲かります。
3 証券口座によっては若干用語が異なります。
4 一般信用取引の金利は自由に決められるためです。
5 証券会社によります。楽天証券では、一日・短期(2週間)・無期限の3種類があります。選べるかは銘柄やタイミングによります。
6 これを逆手にとって、逆日歩が発生してそれを受け取ることを狙う投資法もあります。
7 日興証券は早朝、ザラ場中、夜に万単位で補充されるときがあります。
8 17時ちょっと過ぎでは補充されておらず、18時半頃には補充されていることがあります。
9 1秒ではまだ早いとエラーが出てしまいます。戻っている間にライバルに在庫を取られるでしょう。
10 制度信用の優待クロスのコストには逆日歩を考慮しなければなりません。これについては上級者向けなので別の記事にします。
11 これは配当金(配当利回り)の低い銘柄はコストが安いことを意味します。
12 交換したら、信用口座の枠がそれだけ空きます。
13 心配であれば、信用担保余力の金額と照らし合わせましょう。
14 VIPが大口優遇、一日は「いちにち信用での買建」、長期は「一般信用の長期」を意味します。
15 超割は普通の手数料モード、一日は「いちにち信用での買建」を意味します。
16 「無期限」を「長期」と表現していると思えばよいでしょう。
17 厳密には貸株料だけが5倍になり、取得額が大きくなるので手数料である取得コストは逆に下がります。
18 いちにち信用の買建を現引して、現物株を入手した後は、250万円分の信用保証金に余裕が出て、他の用途に使えます。
19 配当落調整金の差額コストは最終的に相殺されるので、ここではコストには入れません。
20 [注文内容を確認する]ボタンではありません。こちらを押してしまうと確認画面が出てしまい、争奪戦に負けてしまうことがあります。
21 品渡とも呼ばれます。
22 建玉を売却して売却金額を受け取るためです。
23 信用取引の売建を単独で処分するためです。残った現物株を売却しても、そのときに別の売買手数料が発生します。
24 現渡すべきところを返済していたりすれば、現物が残っているという状況になります。