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目次

エイリアンハンドシンドロームとは?

 エイリアンハンドシンドローム(alien-hand syndrome)とは訳すると「他人の手症候群」とも呼ばれている。

 古典的には、半側身体失認などの認知面を強調した、次の3徴候が挙げられる。

  • 感覚障害が無いのに一方の手が他方の手を自己に所属すると認識できない(見ないと自分の手だということがわからない)
  • 一方の手の動きが自己の制御下にないという感覚を言葉で訴える
  • 手の人格化

 だが現在では一方の手が自分の意志とは無関係に、あたかも他人の手のように、あるまとまった運動をするという点が重視され、定義も次のようになった。

一方の手が意志による統制から離れて動き、もう一方の(意思に従う方の)手や言葉で表現された患者の意思との間に乖離が生じた状態

道具の脅迫的使用現象と他人の手症候群

 『縮刷版 精神医学辞典』(弘文堂)H13.11.30初版1刷にエイリアンハンドシンドロームがなかったので、関連すると思われる事柄を調べてみた。

道具の脅迫的使用現象

 道具の脅迫的使用現象(compulsive manipulation of tools)は、右手が目の前に置かれたものを意志に反して脅迫的に使用してしまい、左手が意志を反映してこの運動を押さえるという現象のことである。

 例えば、患者の前に櫛を置いた場合、右手は意志に逆らってこれを持って髪をといてしまう。道具を使用しないでいるためには、左手が櫛を取り上げるか、左手が右手を押さえつける必要がある。

 右手には必ず強い把握反射や強制把握を伴っている。このため、右手は道具を使用しようとするわけだ。左手に見られる目的不明の不随意運動である他人の手徴候とは区別される。

 左前大脳動脈領域の脳梁で、左前東葉内側面(前部帯状回、補足運動野)と脳梁膝部の病巣に伴って観察されている。 

 道具の脅迫的使用現象は、病的把握現象の延長線上に位置付けられ、運動の抑制機構の障害によって、視覚刺激あるいは接触刺激に伴って、左半球内にある道具使用に関する運動のシークエンス(エングラム)が触発されて、右手に運動が表れたと考えられている。

 運動の抑制機構が保たれている右半球、即ち左手は右手の動きを抑制するように働く。

他人の手徴候

 他人の手徴候(alien hand sign)の記載は、Brionら(1972年)の仏語論文に始まる。しかし、この原著における他人の手徴候(le signe de la main etrangere)の症候内容は、後に英語圏で使われる他人の手徴候(alien hand sign)とは異なっている。原著における他人の手徴候は、背中に手を回し、左手を右手で掴んだ時に、左手が自分のものではないと感じる減少とされ、脳梁病変による体性感覚に関する半球間離断症状(interhemispheric disconnection syndrome)と考えられている。英語圏あるいは日本における他人の手徴候は、左手が他人の手のように、不随意で無目的な動作を行う現象を指し、後遺障害(behavior disorder)の中で捉えるべき症状であり、この点で原著と大きく異なる。  

 この他人の手徴候の病巣、機序には他説があり、右側(劣位側)前頭葉内側面病変による半球症状として考えられる場合と、脳梁病変による半球間離断症状として考えられる場合とがある。

参考文献

  • 『縮刷版 精神医学辞典』(弘文堂)H13.11.30初版1刷
  • 黒猫さん助言Thanks!