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目次

マインドコントロール

 マインドコントロールとは、個人が自己自身の決定を行うときの人格的統合性を切り崩そうとするシステムのことである。

 マインドコントロールの本質は、依存心と集団への順応を助長し、自律と個性を失わせることである。これは行動・思想・感情・情報をコントロールすることによって、達成される。

 よって、マインドコントロールを良い方向へ使う場合と悪い方向へ使う場合が考えられる。マインドコントロールを悪用するのが、破壊的カルトである。

洗脳 vs. マインドコントロール

  • 洗脳(brain washing)
    • ある種の強制力を伴うものである。
    • 本人の意思に反して、無理に一定の思想などを植え付ける方法である。
  • マウンドコントロール
    • 本人はあたかも自発的な意思で、それをしているように見える。しかし、必ずしも、本人の利益になるとは限らない。マウンドコントロールをかける側が、利益を得るように仕組まれている。

 上記のように洗脳とマインドコントロールの区別が付くが、その境界線は曖昧である。

マインドコントロールの歴史

 第二次世界大戦以来、世界中の情報機関が積極的にマインドコントロールの研究と開発に携わった。CIAは、1950年代初期からMKウルトラ(MK-ULTRA)という暗号名のもとに、麻薬、電気ショック、催眠の実験を行ってきたことを認めている。その後、研究は他の分野へも拡大している。

 一世代前、心理学の人間潜在能力運動が、個人と集団の動態を支配する方法の実験を始めた。これらのテクニックは、まったく善意の動機から開発されたものであった。人々を弱らせている精神的袋小路から彼らをむりやり抜け出させて、自分がどんなに違った人間になれるかを教えてやろうという動機である。1960年代の後期に、感受性集会(sensitivity session)という集団治療の形態が人気を集めた。この集会では、人々は集団という場面で、自分の一番内面の個人的なことを他の人々と語り合うように促された。そのころ広く人気を集めたひとつのテクニックとして、熱い席(host seat)というものがある。熱い席とは、グループのメンバーのひとりが車座の真中に座り、他のメンバーがその人の欠点あるいは問題と思う点を挙げて彼に迫るのである。いうまでもないが、このようなテクニックは、経験を積んだ治療師の指導がないと、乱用される可能性がかなり高い。  

 多くの人々に影響を及ぼすようになったもうひとつの現象は、催眠術が神経言語プログラミング(NLP)というシステムを通じて大衆化したことであった。次第に多くの人々が、催眠によるトランスを引き起こすある種のテクニックを受けるようになった。しかし、多くの場合、無意識の心を扱うことの倫理的側面について、適切な配慮を欠いていた。

 これらの集団的方法は、元々自発的な参加者だけに用いられ、大勢の人々から好ましい体験が報告された。ところがやがて、これらのテクニックのあるものは、通俗心理学として一般文化の中に広がっていき、誰でも悪用するようになっていった。無節操な人々が、信奉者の集団を巧妙に操作して金銭と影響力を獲得するために、これを利用し始めたのである。

 元破壊的カルト集団だった人々の報告によると、特に熱い席がたびたび用いられていたそうである。

マインドコントロールと認知的不協和理論

 マインドコントロールは、認知的不協和理論として知られるようになった理論の中で心理学者のリアン・フェスティンガーが説明している3つの構成要素の分析を使うと、大体理解できるようである。

  • 行動コントロール
  • 思想コントロール
  • 感情コントロール

 それぞれの構成要素が、他の2つに対して強い影響力を持つ。ひとつを変えると、他の2つもそれにつられて変わる傾向がある。3つをすべて変えることに成功すれば、個人など吹き飛ばされてしまう。

 さらに、これに情報コントロールを含めるとさらにわかりやすくなる。

例:1956年、フェスティンガーは『予言が外れる時』という本を書いた。世の終わりを予告したウィスコンシン州の空飛ぶ円盤カルトについての本である。

 カルトのリーダーは、他の天体からの異星人と精神的接触をしたと言った。信者たちは家を売り、金を寄付し、指定された日の翌朝、洪水が世界を滅ぼす前に、空飛ぶ円盤に拾い上げてもらおうと、ある山腹に夜通し立っていたのだった。

 円盤も洪水もなく朝がやってきた(このグループについての数ある皮肉な話のひとつである)。そのとき、信者たちはさぞ幻滅し怒っただろうと思われるかもしれない。わずかの信者はそうだった。しかし、そうした信者はあまり時間や勢力を投資しなかった周辺的信者である。しかし、大部分のメンバーは、前よりもっと確信を深めた。ここで認知的不協和理論が影響した。

 リーダーは、異星人が彼らの忠実な徹夜を見て、この地球を今回は許すことに決めたのだと宣言したのである。メンバーたちは、世間のひんしゅくを買う劇的立場をとった後、かえってますますリーダーにうちこむ結果となったのである。

マインドコントロールの達成の3段階

 マインドコントロールの4つの構成要素を識別できることは大切だが、疑いを抱いていない人々の行動を変えるのにそれが実際どう使われるかを知ることは、それとはまったく別の問題である。

 マインドコントロールを達成するための3段階の過程は、表面上はごく簡単に見える。

解凍(unfreezing)

・誰かに急激な変革を起こさせるには、まずその人の現実をゆさぶらなければいけない。教え込みをする側は、彼を混乱させなければいけない。彼が自分と周囲の状況を理解する思考の枠組みに揺さぶりをかけ、それを壊さなければならない。現実に対する彼の見方を混乱させれば、彼の防衛本能も武装解除され、今までの現実を否定するようなカルトの諸概念でも受け入れてしまうようになる。

・「解凍」は、様々な手法を使って達成できる。生理的に混乱させることは極めて効果的である。睡眠を奪うのは、人格を崩壊させる一番普通で強力な技術のひとつである。食事の内容や時間に新しい制限を加えるのも、混乱を起こさせるのに効果がある。あるグループは、低淡白・高糖度の食事や長期にわたる減食で、その人の情緒的安定を崩す。

・「解凍」が一番よく達成されるのは、人里離れた施設のように完全にコントロールされた環境であるが、ホテルの広間のようなもっと簡単に行ける場所でも、それはできる。

・人を解凍してその防御機構をはぐらかすためのもうひとつの強力な手段は、催眠である。特に効果的なのは、相手の混乱を利用してトランス状態を引き起こす技術である。

・二重の呪縛(double binds)のような催眠技術もまた、現実感覚を解凍する助けに使われる。二重の呪縛とは、一方で本人がみずから選んでいるのだという錯覚を与えながら、実はコントロールする側が望んでいることを強制的に行わせてしまうというものである。

変革(changing)

・変革とは、ある人の古い人格が崩壊したために生じた空白に新しい人格を押し付けて、その空白を埋めることである。この新しい人格の教え込みは、セミナーや儀式のように形式ばって行われることもあるし、形式ばらずにに行われることがある。

・解凍の段階で用いられたのと同じテクニックの多くが、この段階にも持ち込まれる。

・反復、単調、リズムなどは、人をあやす効果のある催眠の衝動であり、形式ばった教え込みは、主にこの律動の中で行われる。教材は何度となく繰り返される。洗脳された講師は興味を持続させようとして話に変化を加えるが、趣旨は毎回同じである。

・変革の過程では、この反復はみないくつかの決まった中心的テーマに集中する。新会員は、世界がどんなに堕落しており、また心理を悟っていない人々はどんなにそれを正す道を知らないか、教えられる。それは、このあkるとの指導者がもたらした新しい理解を、一般の人々が持っていないためである。この指導者こそ、限りない幸福への唯一の希望なのである。新会員はこう教わる。

・変革のもうひとつの有効な方法は、霊的体験を誘発させることである。これは、しばしば実に巧妙に行われるようにできている。グループの中でその新入会員と一番新しい仲間が、彼のプライベートな情報を集めて密かに指導部へ渡す。後で、ある体験を作り出すのにぴったりの瞬間に、この情報が突然引き出される。多分何週間もたってから、別の状況の中で、リーダーは突然その新入会員の弟の自殺のことに触れる。そのことは、この新しい場所では確か誰にも話していないので、その新入会員は、リーダーが彼の考えを読んだか、あるいは霊界から直接情報を得ているのだと思う。彼は打ち負かされて、自分がもっとよい兄でなかったことに許しを乞うのである。

再凍結(refreezing)

・もとの人格を壊されて新しい信念体系を教え込まれたら、その人は今度は「新しい男」(または「新しい女」)として再び作り上げなければならない。自分の新しい人格を固めるため、彼は人生の新しい目的と新しい活動を与えなければならない。

・最初の2つの段階で使われたテクニックの多くが、再凍結の段階へも持ち込まれる。カルトのリーダーたちとしては、その人がこの直接的なカルトの環境(人格改造の場)を去るとき、新しいカルトの人格が強いものになっているという確信が持てないと困る。新しい価値と信念が、この新会員の内面のものとなければならない。

・「新しい」人間の最初でもっとも重要な仕事は、以前の自分をさげすむことである。一番いけないのは、その人が自分らしく行動することである。

・再凍結の間、新しい情報を伝えていく主な方法は、「型にはめること」(modeling)である。新しいメンバーは、古いメンバー(新メンバーにコツを教えるのが任務)とペアを組まされる。

・新しい人格の再凍結を促進するため、あるカルトはその人に新しい名前を与える。

マウンドコントロールの手順

 洗脳を含めて、広い意味でのマインドコントロールは一般的に次の3つの手順を取る。

  1. 外部情報を遮断する。
    • 外部情報が存在しない状態では、暗示を受けやすくなる(自動運動と関連する)。
  2. 一定情報を注入する。
  3. 生理的に不安定な状態に置く。

一定情報を注入する

 一定情報の注入には次の3つのレベルがある。

  1. 思想レベル
    • ある一定の思想を強く・繰り返し主張する。
      • 例:1950年代に朝鮮戦争があり、朝鮮戦争ではかなりな数のアメリカ兵の捕虜が出た。その捕虜が、本国(アメリカ)に帰ってきたときに、非常に強固な共産主義者になっている人たちが相当多数いた。そこで、洗脳という現象が注目を浴び始めた。
  2. 行動レベル
    • この方法は多くの宗教団体・思想団体・政治団体が取っている方法である。
    • 私たちはしばしば思想や考えがあって、それに基づいて行動すると思いがちである。しかし、実際はそうではなく、行動が先にあり、後から思想がついていくという場合が結構多い。
      • 例:断酒会に新しく入った人に「酒を止めよう」と説明しているうちに、本人の酒が止められるという現象がある。
      • 例:ある人が、ある宗教の完全な信仰者になっていない。そこに新しい人が入ってくる。完全な信仰者になっていない人に、「この宗教は実によい宗教だ。信じていると、こういういいことがありますよ」と、新しく入った人に向かって説明させる。説明しているうちに、不完全な信仰を持つ人たちの信仰が深まっていく。
    • フェスティンガーが提唱した認知的不協和の理論を応用する。
      • 例:オウム真理教のように、地下鉄にサリンをまくという極端な行動をさせる。一度そこに踏み込んでしまったならば、もう後戻りはできなくなる。オウム真理教という世界の中で、ひたすら前進する以外に方法はなくなる。
  3. 感覚・感情レベル
    • あらかじめ考えてから何かをやる。あるいは行動がまずあって、後から思想を行動に合わせる。これら以外に、感覚・感情のレベルで、「これは素晴らしい」あるいは「これは恐ろしい」ということで、思想・行動が付いていくことがある。
    • 感覚・感情レベルの注入の場合、薬物中毒の場合と同じようなフラッシュバック現象が見られることがある。
    • 「懺悔の儀式」「告白の儀式」を行う宗教団体がある。
    • 非常に恥ずかしい思い出は誰でも持っている。それを告白させるのである。
    • オウム真理教の場合、ある種の自白剤を用いて、本人が話したくないことも、話させたという。
    • 相手を説得するときに、相手の恥ずかしい部分を突く。「お前はこういう恥ずかしいことをしただろう」と繰り返し、つつく。すると、つつかれた人は、心理的に不安定になる。罪責感を持ち、暗示や説得を受けやすくなる。

生理的に不安定な状態に置く

  • 断食、睡眠制限、息を止めさせる、熱い湯につけるなど
  • 生理的な不自由が与えられると、心理的に不安定になっていく。
  • 持続的な苦痛、長時間の苦痛を与えられた場合、その苦痛をある程度やわらげる身体の働きがある。
    • ランナーズハイ
    • 頭脳の中にエンドルフィンというモルヒネに似た麻薬物質が分泌される。これは幻覚材のLSDによって、輝くばかりの光を経験したりするのに似ている。
      • これにより、「真っ白な光が見えた」「身体全身が光に包まれた」と述べる信者があくさん出てきて、「厳しい修行に耐えた結果、悟りを開いた。自分は高いステージになった」と錯覚してしまう。
    • ストレスには「快」と「不快」の2種類があって、不快なストレスを克服することによって、快ストレスを得ることができる。

マインドコントロールの具体的手法

宗教的方法

  • ヨガと座禅
    • 例:蓮華座という言葉はオウム真理教事件のときに、しばしば用いられていたが、オウム真理教の発明した言葉ではない。仏教に昔からある言葉である。
  • 軟酥【なんそ】の法
    • 現在の心理学の用語でいえば、一種のイメージ療法である。
  • お題目と写経
  • 観【かん】

心理学的方法

CM(コマーシャル)的方法

  • 広告などで用いる方法を、宗教の布教などのために用いる方法である。
  • 美男・美女を使う。
    • 美男・美女の話していることは、正しいと思ってしまう。少なくとも好感を持つ。
    • ところが、内容と形式とは必ずしも一致しない。
      • 美男・美女の悪魔もいる。あるいは鬼のような顔をしていて、仏さまのような人もいる。
    • 宗教団体などでも、美男・美女や、タレント・女優・有名人などをしばしば前面に立てる。
  • シンボルマークを用いる方法
    • 会社でもコーポレート・アイデンティティ(CI)などといって、ロゴタイプやカラーなどを一定のものに統一することを行う。あるいは、社名を変更して、社会にアピールしやすいものにする。

生理学的方法

  • 宗教団体が、内部に医者を抱え、このような薬を投与すれば、信者のほうは宗教のおかげで心の状態がよくなったのかと錯覚する。
  • 宗教的難行苦行を行うと、脳内にエンドルフィンなどの脳内モルヒネ様物質が生じる。
    • エンドルフィンはモルヒネに近い作用を持つ。

脳外科的方法

  • ロボトミー
  • 脳の一部を凍らせる方法がある。
  • 電気ショック療法
    • オウム真理教では、主に記憶を消すために電気ショックを与える方法を用いた。

肉体的方法

  • 暴力を加える、拷問を与えるなど、肉体に苦痛を与えていうことを聞かせる方法である。
  • 人間は肉体という、極度の苦痛には耐えられない容れ物を持つ存在である。

政治的マインドコントロール

  • 1947年にフリーマンの友人でスウェーデンの神経外科医のイェスタ・リランデルが、一部のロボトミー患者で政治活動に対する熱意が減退することに気付いた。
    • ニューヨークで開かれた神経精神疾患研究学会でリランデルが報告したところによると、ストックホルムで手術をしたある患者は、それまで社会主義から共産主義へと左傾化を強め、世界情勢を懸念し、共産主義運動が社会の数々の過ちを正す方向であると考え、カール・マルクスやアプトン・シンクレアを熱心に読んでいた。ところが、精神外科手術後は、ほとんど関心を示さず、核戦争の脅威さえ気にかけなくなった。
  • 1961年に、反共活動家のフランク・S・マイヤーは「共産主義的精神外科」について語っている。
  • アメリカ連邦政府は精神外科を政治的手段として利用する研究を秘密裏に行っていた。
    • 1952年にCIAは、精神外科のヘンリー・P・ラフリンに依頼して、ロボトミーなどの精神外科手術で共産主義者の考えに影響を及ぼす、または無能力化する可能性について報告を出させた。

参考文献

  • 『マインド・コントロールの恐怖』
  • 『世界史有名人 ホントはこんな人だった!』
  • 『空間感覚の心理学』(新曜社)
  • 『誰もが気になる性格の不思議』
  • 『空間感覚の心理学 左が好き?右が好き?』(新曜社)
  • 『図解 スパイ戦争 諜報工作と極秘テクニック』(並木書房)
  • 『現代の犯罪心理』(講談社ブルーバックス)
  • 『凶悪テロ防衛マニュアル 無差別テロから個人襲撃まで』(青春出版社)
  • 『学研まんが伝記シリーズ マルコ=ポーロ』
  • 『説得の科学』
  • 『ロボトミスト』