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*目次 [#s8ac5a8b]

#contents


*塩 [#aa83c1e1]

-世界の資源別塩生産割合として、[[岩塩]]が60%、[[海水]]が35%ぐらいである。
--ただし、岩塩も元はすべて海水である。
-[[アメリカ]]やヨーロッパは岩塩、[[メキシコ]]や[[オーストラリア]]は天日塩が多く採れる。
-塩が白くみえるのは光の乱反射による。本当は無色透明である。
-血液や[[汗]]を舐めても少ししょっぱいのは、体の中に塩があるからである。
--体の中に塩水があるのは、今から約40億年前に最初の生き物が海水の中で誕生したことの名残である。
--体重の約60%が水でできている。そのうちの2/3は筋肉などの細胞の中にある[[水]]であり、この中には塩はほとんど溶けていない。残りの1/3は血液やリンパ液などの細胞の外にある水で、''体液(細胞外体液)''という。この体液に塩が約0.9%の割合で溶けており、色々な働きをしている。
-[[血液]]の0.9%は塩分である。
-水に溶けているとき、塩はナトリウムイオンと塩化物イオンという2種類の電気を帯びた粒に分かれている。
-[[細胞]]の周りにある血液などの体液はいつも一定の濃さや温度になった塩水で、細胞がきちんと活動できるように守る働きをしている。
-[[日本]]で使われる塩は1年間に約960万トンである。
--そのうち調味料として過程で使われる塩の量はたった3%である。
---食品加工品と合わせても、食べ物で使う量は全体の15%にならない。
--塩のほとんどはソーダ工業などの工業に使われ、庵小名工業製品などに姿を変えて、我々の生活を支えている。
-日本で使われている塩は約85%を輸入に頼っている。
--その多くは[[メキシコ]]とや[[オーストラリア]で作られた天日塩である。
-塩は防腐・滅菌・浸透・脱水などの働きがある。
-江戸時代に大きな飢饉が何回か襲い、多くの人が亡くなった。ひどいときには食べられるものといえば草や木の根ぐらいになってしまったこともある。そんなときに塩を持っていたから、草や木の根を食べても中毒せずに生き延びることができた人がいたという。
-狩猟・採集時代は野生の動物や魚、植物をとっていた。当時の人々は狩りした動物の内臓や、骨の髄を好んで食べたという。この動物の内臓や骨の髄などの中には塩分が含まれているため、自然に塩分を補給できていた。
--一方、農耕時代になると、穀物を多くとるようになり、自然に補給できる塩だけでは足りなくなった。しかも、米などの植物にはカリウムが多く入っていることも関係する。米を食べるとカリウムが摂取され、余分なカリウムは体の外に捨てられる。このとき体の中の[[ナトリウム]]も一緒に捨てられるのである。よってナトリウム不足になる。
---おにぎりやじゃがいもに塩をかけて食べるのは、とても理にかなったことといえる。
-文明が進化する上で、塩を使い始めた大きな理由がある。それは人口が増え、人々がひとところに集まって生活するようになると、加工食品(特に保存食品)が大切になり、たくさん作られるようになった。この保存食をつくるときの主役が塩であった。塩には物が腐るのを防ぐ働きがある。動物の肉や野菜を塩漬けすると、塩は肉や野菜から余分な水分を吸い出すと共に、中に入り込み、細菌の繁殖を抑えるのである。
--保存食は交易でも利用された。
-四大文明のすぐ近くには大きな塩の生産地が存在していた。
--黄河のほとりには塩の湖がある。
--エジプトではナイル川河口の知覚の天日製塩に適した地中海沿いの地域がある。
-古代エジプトでは塩を保存食や、ミイラ作りに利用した。
--ミイラにする死体は約70日間濃い塩水に漬けた後に、薬で処理したという。これは塩の持つ防腐作用を利用したものである。
-[[地中海]]の東に住むフェニキア人も塩をよく利用した。
--フェニキア人はBC12世紀〜6世紀頃、地中海を中心に、遠くは[[インド洋]]にいたる広い海を航海し、海運・交易で活躍した。長い間、食料のない大海原を航海することができたのは、塩を使った保存食があったからである。
--フェニキア人は地中海沿いの港から塩や塩魚を積み出し、塩を求めるところに広く売りさばいた。
-ローマ帝国では、兵士たちの給料として塩が使われた。
--給料のことを「サラリー」というが、ラテン語の「サラリウム」(兵士の塩)という言葉に由来する。
-塩は古代から大変貴重なものとされてきた。
--アフリカではつい最近まで塩がお金として使われていたところがある。
-昔の家々には必ず塩を貯蔵するために、木をくりぬいた舟形といわれるものがあり、その大きさによってその家の資産の有無を推測したという。
-城には必ず塩蔵があり、天守閣の真下や城の一番重要な場所に設置され、他の食糧よりもっとも重要なものとされた。
-『古事記』や『日本書紀』には塩にまつわる神である塩土老翁【シオツチノオジ】が登場する。
--海幸彦【ウミサチヒコ】と山幸彦【ヤマサチヒコ】の神話の中では、兄の海幸彦を助けた神とされている。
--老人の姿をした海の神といわれる塩土老翁は、困る人を助ける物知りとして語られる。そして、この神は全国各地に塩作りの方法を伝え広めたといわれている。
--この塩土老翁は現在、宮城県の塩釜【しおがま】神社に祭られている。
---また、昔製塩をしていた場所を中心に、日本各地には塩作りの反映を祈った塩釜神社がたくさんある。
-山に住む人々にとって、塩を運ぶ人は重要であった。
--塩は雨にぬれると溶けてしまうので、運ぶのが難しかった。当時は稲わらの俵で塩を運んでいたからである。塩魚にすれば溶けることないし、塩魚を食べれば塩も補給できたというわけである。
--九州の山の中には、子供が生まれると、塩売りに名付け親になってもらうところがあった。
---苦労して塩を運ぶ潮売りと山の人には、商売の域を超えて、強いきずなで結ばれていた証である。
-浅野家と吉良家は塩作りの技術を巡って、以前から仲が悪く、これが忠臣蔵の原因となった。

*塩の結晶の形状 [#sb2d2926]

 塩の結晶は通常正六面体だが、条件によって塩の結晶の形状が変わる。

-トレミー
--逆ピラミッド型
-プレート
--薄い板状
-細い柱状
-球状


*カラーソルト [#u4c02757]

 塩の結晶の外を着色するのは簡単だが、色素を核に包むように内部から着色するには技術が必要である。


*塩の精製 [#g532955f]

**藻塩焼き [#l3ddd1de]

-海水の付いた海藻を天日に干して、表面に析出した塩を海水で溶かして濃い塩水を作る。その濃い塩水を煮詰めて塩を採る。
-また、焼いた海藻の灰(灰塩)から、濃い塩水を作るという方法もある。
-こうした採り方は『万葉集』にも「藻塩焼く」と表現されている。


**揚浜式塩田 [#l2e140b2]

-人力で海水を汲み上げて、塩田の砂に塩をかける。その後、塩田の砂に太陽熱と風により水分を蒸発させて塩分が付着した砂を作る。その砂を集めて海水で洗って、濃い塩分を作る。
-日本では、中世で利用されていた方法である。


**入浜式塩田 [#v8142262]

-潮の干満差を利用して海水を塩田に引き入れる。
-揚浜式塩田と比べて効率的が10倍に上がった。
-毛細管現象で砂層の上部に海水が供給され、太陽熱と風により水分を蒸発させ、塩分が付着した砂を集めて海水で洗って、濃い塩水を作る。
-日本では、江戸時代から昭和30年代まで利用されていた方法である。


**流下式塩田 [#e645d469]

-ゆるやかに傾斜した粘土地盤の上に海水を流し、竹の小枝などを組み合わせた枝条架【しじょうか】という装置にかけることにより、太陽熱と風の力を利用して濃い塩水を作る。
-入浜式塩田よりも効率よく濃い塩水を作ることができる。
-日本では、昭和27年から昭和46年まで利用されていた方法である。


**イオン交換膜製塩法 [#pde62b2b]

-日本で発明された方法。
-イオン交換膜と電気の力で、海水から濃い塩水を作る。
-日本では、昭和47年から利用されていた方法である。


**溶解再製法 [#d7e79006]

-海外から輸入した天日塩を、水に溶かして土砂などを取り除いて、製塩する方法。


*塩と味覚 [#q017d86b]

 人間の舌には味蕾【みらい】という部分があり、この部分では甘味・酸味・苦味・辛味・塩見を感じることができる。


*塩の応用 [#x67b40bc]

-タンパク質の溶解
--魚肉のタンパク質を水に溶けやすくさせて、粘り気や弾力を持たせることができる。
---ソーセージやかまぼこなどがそうである。
-発酵作用
--潮によって不要な雑菌の繁殖を防ぐことができる。つまり、繁殖を防ぎ、発酵に必要な微生物の繁殖を調整する。
---醤油、チーズ、味噌
-紫外線分光器
--純粋で透明な塩の結晶は、紫外線をほとんど吸収せずに通す。
-塩のプリズム
--製作が難しく、保存に手間がかかるので、現在はほとんど使われていない。
-グルテンの形成
--塩水を加えてこねることで、小麦に含まれるタンパク質が絡み合い、粘り気のあるグルテンができる。
-脱水作用・防腐作用
--塩漬けにすることで、水分が吸い出され、雑菌の繁殖が抑えられて腐りにくくなる。
--漬け物、塩辛
--皮を塩漬けにすることで腐敗を防げる。また、なめし剤の調整にも使われる。
---皮製品
-調味料
--食卓塩
-医療用
--[[生理食塩水]]や[[リンゲル液]]などの医薬品原料として使われる。
-塩析作用
--原料の液体に混ぜると、溶解度が低下して、[[石鹸]]の成分が分けられ、不純物を分離することができる。
-生体維持
--[[牛]]などの餌に混ぜたり、自由に舐められるように塩を固めて使われる。
-イオン交換樹脂の再生
--硬水を軟水化するイオン交換樹脂を再生するために使われる。
-ソード工業用
--苛性ソーダ
---紙やレーヨンの原料であるパルプを作るために、木材と溶かすときに塩が使われる。
---アルミホイルの素を作るために、原料のボーキサイトを溶かすときに塩が使われる。
--[[塩素]]
---塩素を[[次亜塩素酸]]にして、水道の消毒などに使われる。
---[[石油]]からできる[[エチレン]]と塩素で[[塩化ビニル]]が作られる。
--ソーダ灰
---[[ケイ砂]]や[[石灰石]]と一緒に塩を熱することで、ガラス製品を作れる。
---高温で鉄にガラスを焼き付けるホーロー製品作りに使われる。


*塩と人体 [#ye5aa184]

-食べ物を消化する消化液は塩から作られる。
--塩化物イオンは胃酸の主成分となり、消化を助けたりばい菌を殺す。
--ナトリウムイオンは[[小腸]]で栄養素の吸収を助ける。
-[[細胞]]を保つ。
--塩は細胞外液の中に含まれていて、細胞が縮みすぎたり、ふくらみすぎないように調整する役割を持つ。
-神経細胞での電気信号の伝達ではナトリウムイオンが働いている。


*塩と調理 [#t15800f5]

**酵素の抑制作用 [#q0132c3d]

 リンゴ・桃・レンコン・ジャガイモ・ゴボウなどは酸化しやすいポリフェノール系物質が含まれているので、空気に触れると褐色に変色しやすい。塩はこの酸化を抑える働きがあり、0.3〜0.6%の塩を加えると変色を抑えることができる。

**浸透圧による脱水作用 [#nf9f1956]

 [[トマト]]や[[キュウリ]]をパンに挟むとき、あらかじめ塩を振って脱水させておく。そのためには野菜に塩を振って15〜20分放置しておくと、水分が外に出る。

**味の抑制効果 [#u9e2516b]

 酸味と塩味が出会うと、塩味は酸味を弱める働きが生まれる。寿司ご飯に少量の塩を加えるのはそのためである。

**味の対比効果 [#i3062798]

 甘味と塩味が出会うと、甘味を強める働きが生まれる。スイカに少量の塩をかけると、スイカの甘味が強められるのはそのためである。

**クロロフィルの退色効果 [#d162c47f]

 青菜を炒めるときに、熱した油に塩をひとつまみ入れてから炒めると、色鮮やかに仕上がる。これは[[ナトリウム]]が組織内に浸透し、[[クロロフィル]]が安定するからである。

**茶渋落とし [#ba86bba0]

 塩を少量振りかけてこすると、湯のみ茶碗についた茶渋を落とすことができる。これは[[陶磁器]]や[[ガラス]]よりも塩の粒の方が軟らかいという性質を利用している。塩の[[モース硬度]]は2〜2.5である。つまり、[[石膏]]と[[方解石]]の中間の強さである。

*お梶【かじ】の塩の逸話 [#ha7c9f9c]

-家康が伏見屋敷の縁側に座り、本田正信、平岩親吉、大久保忠常らの近臣【きんしん】に焚き火をさせて雑談をしていた。話題が尽きた頃、ふと家康が「世の中で一番うまいものはなんだろう」と言い、一同はこれはと思う食い物を挙げてみよといった。皆様々なことを言った。その場にお梶もいて、家康の背後に座ってなにやらさかしらげに微笑していた。家康は「笑うているところをみると、なんぞ仔細【しさい】があるか、言うてみやれ」とお梶にいった。お梶は「塩だと存じまする」といった。世の中で塩ほどうまいものはないというのである。塩がなければ肉や魚、野菜も味がととのわない。吸い物もただの湯と同じになる。
「逆に世の中で一番まずいものはなにか」と問い重ねるとお梶はすかさず「塩でございます」といった。どのような食べ物でも塩を入れすぎるとからくて食えないから。


*参考文献 [#h8a8e2fb]

-『塩のミニ知識』
-『人間の知恵24 塩のはなし』
-『福島県謎解き散歩』