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目次

トランジスタ

  • 3本の線のうち、コレクタとエミッタの両端に電圧をかけても電流は流れない。ゲートから流れる電流の量に応じて、コレクタとエミッタ間の電流も大きくなったり小さくなったりする。つまり、ゲートに流す少しだけの電流でコレクタとエミッタ間の大きな電流をコントロールすることができるのである。これを増幅作用という。
  • また、ゲートに電流を流したり、止めたりして、スイッチング動作を制御することもできる。
  • 真空管に取って代わる部品として開発された。トランジスタは真空管から比べて、構造がシンプル・低消費電力・省スペース・長寿命といった長所がある。トランジスタの誕生後、真空管は姿を消していった。トランジスタは、現在における各種電子機器の設計に欠かせない存在となっている。
  • トランジスタを配線が便利なように複数個まとめたものが存在し、トランジスタアレイという。また、パワートランジスタをまとめたものでパワートランジスタモジュールという。このように複数のトランジスタをまとめていくと、ICになっていく。
  • 各端子はパッケージの大きさに関係なく、型番が書かれている面(平らな面)を下にした状態で左からE,C,Bとなっている。
    • 「エクボ」と語呂合わせにすると覚えやすい。

トランジスタの歴史

トランジスタの登場

 ウイリアム・ショックレは1936年にMITで学位を取得した後、米国のベル研究所に入所した。ショックレはこのときすでに「真空管と同じ働きをする固定増幅器を作りたい」という研究テーマを立てていた。

 当時ベル研究所の研究部長であったマービン・ケリーは「金属の接触によるリレーを用いた電話の交換機は、電子スイッチに置き換えるべきである」と固定増幅器の必要性を力説していた。

 そうした背景にあり、ショックレは半導体のグループを作り研究をスタートした。実験をしては失敗を繰り返していた。1947年12月16日に、失敗の原因を追求するために、結晶表面を調べる実験を行っていた。その最中に、チームのメンバーであるバーデンとブラッテンによって偶然に点接触型トランジスタが発見された(しかし、一般にはクリスマスイブの前日である12月23日が特許上の発明日になっている)。
 ショックレはこれを創造的失敗(creative failure)と呼んだ。新しいものを考えるには、失敗はつきものであり、原因を追求しつつ新しい考えについて再びチェレンジする、だがまた失敗といったことを行いながら生み出されていくことを意味する。

 この点接触トランジスタは固定増幅器として実用的ではないが、固定増幅木野実現できる可能性の扉を開いたのである。すでに8年固定増幅器に執念を持ち続けていたショックレは何かすっきりしなかった。新しい方法、即ち点接触ではないものはないか考えていた。やがて接合型という新しい方式について、1947年12月31日に思いつき、考えに考えたあげくやっと概念が完成したのは翌年1月23日であった。

 さらにこの理論が実際に実現したのは1年後の1949年4月7日である。

トランジスタの商業利用

  • トランジスタの最初の商業利用は補聴器であった。
    • 耳の不自由な人々のために生涯働いたアレキサンダー・クラハム・ベルの偉業を記念するために、AT&Tは補聴器メーカーに特許料の支払いなしにトランジスタ技術の使用を許可した。

トランジスタの由来

  • 最初からトランジスタという名前だったわけではない。
    • 研究員のしつこさ、つまりpersistenceをもじり、persistorと呼んでいた。
    • 発見後数ヶ月して現在の「トランジスタ」(transisotor:Transfer of a signal through a variable resistor)という名称になった。

トランジスタの種類の見分け方

 シリコンチップの内部で、III族の不純物元素の多い場所をP型領域、V族の不純物元素が多い場所をN型領域という。P、NはそれぞれPositive(正)、Negative(負)の頭文字である。

 N型半導体をP型半導体で挟んだ構造のトランジスタをPNP型トランジスタという。同じように、P型半導体をN型半導体で挟んだ構造のトランジスタをNPN型トランジスタという。

 ○△□型トランジスタの○・△・□はそれぞれ、エミッタ領域・ベース領域・コレクタ領域の3つに対応している。

例:PNP型トランジスタは、エミッタ領域がP形、ベース領域がN形、コレクタ領域がP形である。

 どちらとも電流・電圧の関係は同じであるが、電流の向きが逆であり、端子間電圧もプラスとマイナスが逆になる。

例:シリコンチップ

近代科学資料館で撮影

トランジスタの型番について

 あるトランジスタがNPN型かPNP型なのか見分けるには、名称または記号を確認するのが一番楽である。

 例えば、トランジスタの名称は次のように付けられる。

2S英文字数字英文字

 2Sに続く英文字は、A,B,C,Dのいずれかで次のように決められている。

APNP型高周波用
BPNP型低周波用
CNPN型高周波用
DNPN型低周波用

 ただし、低周波用と高周波用の区別はそれほど厳密ではない。

例:オーディオアンプにも2SAタイプや2SCタイプが多く使用される。

 A,B,C,Dの右側に続く数字は登録順につける番号で、11から始めることになっている。

 最後の文字は改良品種を示すもので、改良品種が出るごとに、A,B,・・・,Kまで付けられる。

トランジスタの図記号について

 左側がNPN型、右側がPNP型のトランジスタの回路図における記号である。Cはコレクタ、Bはベース、Eはエミッタを意味している。

例:バーチャル電子ブロックを利用した、トランジスタを用いたランプの点灯の実験

 抵抗が接続されている端子をベース、電流が接続されている端子をコレクタ、下向きの矢印がある端子をエミッタと呼ぶ。

  • 各端子はパッケージの大きさに関係なく、型番が書かれている面(平らな面)を下にした状態で左からE,C,Bとなっている。
    • 「エクボ」と語呂合わせにすると覚えやすい。

トランジスタの種類

アロイ(合金)型トランジスタ

・アロイ(ally)とは合金のこと。アロイ型トランジスタとは、トランジスタのPN接合を作るのに、合金の作り方を利用するものである。

・N型ゲルマニウム(Ge)の単結晶の薄い板の両面に、P形不純物(わずか混ぜるとP型になるもの)のインジウム(In)の小さな粒を押し当てて、水素の中で600℃の高温に加熱する。すると、このインジウムの粒が溶けて、ゲルマニウム結晶の中に溶け込んでいくが、こうしてインジウムが入ってきた部分はN型ゲルマニウムだったのが、インジウムの入り込んだP型層になる。つまり、真中にN型、両側にP型というPNP型トランジスタを作られたことになる。

・このタイプのトランジスタは、1948年のショックレイの開発以来、70年ごろまで広く作られましたが、現在ではほとんど作られていない。

プレーナ型トランジスタ

・プレーナ(planer)は平べったく作られるタイプのトランジスタ。

・アロイ型との大きな違いは、半導体基板の両面から下降するアロイと違って、このプレーナ型は片面からの加工で済むという点。この加工には、写真技術を利用した細かいフォトエッチングなどが活用されて、シリコン基板の表面に、一旦丈夫な酸化膜を作り、それに感光すると変質するフォトレジスト(感光樹脂)を塗ります。この上に必要な窓穴パターンを書いたマスクをかぶせてから紫外線を当てて感光する。これを現像処理すると、窓穴部分のレジスタが除去されて、顔を出した酸化膜を薬品で溶かすとシリコンが出現する。

 これから不純物を作用させたり、もう一度酸化膜をかぶせたり、と何度も加工を繰り返して平べったいトランジスタのペレットができあがる。実際には10cm径くらいの薄板に何千個と同時に作られる。

エピタクシャル・プレーナ・トランジスタ

・プレーナ型から改良されたもので、現在のトランジスタの主流となっている。

エピタクシャル(epitaxial)とは、「結晶軸に沿って」という意味で、シリコン基板の結晶軸に沿って新しい結晶層を作りこむ技術である。

・例えば、気相エピタクシャルでは、P型とN型不純物の濃さなどを加熱しながら流すガスの成分を調整して細かく変えられている。おかげで違う結晶を組み込みヘテロ構造も作られている。

パワートランジスタ

・大きな電流を扱うものを特にパワートランジスタと呼ぶ。

・本体には放熱用の金属板がついているのが特徴である。

トランジスタの特徴

・電流を増幅するために使うことができる。

・NPN型とPNP型のTRは動作原理は同じだが、トランジスタに印加する電圧とTRの端子電流の方向(極性)が反対になる。

・トランジスタの記号の円内の矢印は通常の動作におけるエミッタ電流の方向、即ち極性を表す。

[補講]ここで通常といったのは、特殊な場合で逆向きに流すこともあるからである。

 特殊な場合を除いてはメリットが乏しく、不用意に逆電流を流すとTRが壊れる恐れもある。

・NAND回路の出力にトランジスタを繋ぐと、わずかなベース電流が増幅されて、大きなコレクタ電流となり、コレクタ側に繋いだLED(発光ダイオード)を点灯させることができる。

・トランジスタのベース・エミッタ間は(PN接合)ダイオードになっていて、整流作用がある。

[補講]PN接合とは、P形領域とN形領域の境界部分にごく薄い(1μmぐらい)層のこと。よって、トランジスタのエミッタ領域とベース領域の境目にひとつのPN接合があり、ベース領域とコレクタ領域の境目にもあるということ。そして、ベース・エミッタ間のPN接合をエミッタ接合、ベース・コレクタ間のPN接合をコレクタ接合という。

・PN接合に印加される電圧の極性に応じて順バイアスまたは逆バイアスと呼ぶ。

・トランジスタには2つのPN接合があり、各PN接合について順バイアスまたは逆バイアスの選択が許されるから、全部で4通りの組合わせがある。

動作状態エミッタ接合コレクタ接合
活性領域順バイアス逆バイアス
逆接続領域逆バイアス順バイアス
飽和領域順バイアス順バイアス
遮断領域逆バイアス逆バイアス

・今のトランジスタは高周波特性がよくなっているので、配線が長くなると、そのインダクタンス成分やストレー容量などで発振回路になってしまうことがある。

・ICとIBの比を直流電流増幅率といい、hEFと表記する。

h_{EF}~=~\frac{I_{C}}{I_{B}}

 これはトランジスタの増幅の性能をあらわすものである。ベース電流が何倍の大きさのコレクタ電流に増幅されるかを示す。

 このhEFのランクによって、IBに対するICの値が変化するばらつきが発生する。

 そのランクは次のように分かれている。

ランクhEF
O70〜140
Y120〜240
GR200〜400
BL350〜700

・周囲温度のTaが大きいとhEFが増える。これはPNP型・NPN型の区別なく成立する性質である。

 1℃の温度上昇に対して、0.5〜1%ぐらいhEFが増加する。ただし、温度係数は品種によって異なる。

・最適な動作点にコレクタ電流を定めても、温度が上昇すると、コレクタ遮断電流やベース-エミッタ電圧が変化し、動作点が変動してしまう。一般に、ゲルマニウム・トランジスタではコレクタ遮断電流、シリコン・トランジスタではベース-エミッタ電圧が、それぞれ問題となる。

・温度が上昇し、コレクタ電流が増加すると、接合部温度が上昇し、さらにコレクタ電流が増加する。そして、ついにはトランジスタを破壊するようになってしまう。このような現象を熱暴走という。

トランジスタの最大定格(絶対最大定格)

 素子に加えることのできる最大電圧や、流すことのできる最大電流などは決まっている。一瞬でもこの値を越えてしまうと、破壊の恐れがあるので注意が必要である。

電極間最大電圧:VCBO、VCEO、VEBO

  • トランジスタは3本ピンの素子なので、ピン間に加える電圧の組み合わせはVCB、VCE、VEBの3通りある。
  • このとき残った1本のピンをオープンにしたままにして測定したデータが規格表に載せられているVCBO、VCEO、VEBOである(Oはオープンの意味)。それは、これが耐圧の最も弱い状態だからである。

コレクタ電流:IC

  • コレクタに連続して流すことのできる電流がIC(DC)である。単にICと書いてあっても同じ意味である。
  • IC(pulse)は、パルス状に(瞬間的に)流せる最大電流値である。

全損失:PT

  • 周囲温度25℃において、そのトランジスタが動作に伴い発生する熱量の許容最大値のことである。
  • これは大部分がコレクタで発生する熱損失(コレクタ電圧×コレクタ電流)なので、最大コレクタ損失PCとしても表される。
  • 周囲温度が上昇すると、熱の放散が悪くなり許容全損失が減少する。
  • パワートランジスタのように発熱量の多い素子では、放熱板に装着することを前提に接合(コレクタ)温度○○℃における仕様で最大××Wなどと表示される。

電力損失:PC

・規格表のPCは、トランジスタの内部で発生する電力損失(コレクタ電力損失)のことである。

・元々熱に弱いトランジスタは、使用時には温まってしまうため、温度上昇という攻撃を受けることになる。

・PCは、この値以下を使えば、温度上昇したとしてもトランジスタの働きに支障を及ぼさないということを示す。当然周囲の温度も関係するので、周囲温度は25℃という条件がついている。

・例えば、エミッタ・コレクタ間電圧VCE=9Vで、コレクタ電流ICが2mA流れたとき、電力損失PCはいくらになるか求めてみる。

 「電力=電流×電圧」より、次のように計算できる。

PC
=IC×VCE
=0.002×9 (∵2mA=0.002A)
=0.018W

 2SC458の場合、PCの最大定格は0.2Wだから、もしICが10倍になったとしても許容範囲に収まることになる。

 ところが、オーディオのスピーカーを鳴らすためのトランジスタになると、コレクタ電流が数Aになるものがあり、この場合は電力損失も10W前後の値になるので発熱量もぐんと大きくなる。そのため、トランジスタに放熱器を付けて、熱を上手に外部に逃がす工夫が必要となる。

ジャンクション(接合)温度:Tj

  • トランジスタのような半導体素子は熱に弱いので、周囲温度が常温であっても、全損失によって発生する熱でPN接合部が破壊されることがある。その許容温度限界がTjである。

保存温度:Tstg

  • 電流を流していない保存状態下でも、この温度範囲内に保たないと破損する恐れがあるという温度のこと。

トランジスタの3つの特性

  1. IB-IC特性
    • ベース電流とコレクタ電流の関係。
    • 比例関係に近い。
  2. VBE-IB特性
    • ベース・エミッタ間電圧とベース電流の関係。
    • 比例関係ではなく、2次関数に近い。
  3. VCE-IC特性
    • コレクタ・エミッタ間電圧とコレクタ電流の関係。
    • ベース電流の値によっていくつもの曲線になる。
    • この上にさらに負荷線という直線を引いて、ベース電流をいくら流すか判断の材料とする。負荷線によって、IBとICの値を決めることができる。

トランジスタの静特性

 エミッタ接地トランジスタの静特性を測定すると、次の図のようになる。

h定数

 トランジスタを使用するとき、h定数と呼ばれるものを用いる。h定数には次のようなものがある。

  • 出力アドミタンス:hOE
    • VCE-IC特性曲線の傾き、即ちIC/VCEである。
    • 単位はシーメンス[S]。
  • 電流増幅率:hFE
    • IB-IC特性曲線の傾き、即ちIC/IBである。
    • 単位はない。
  • 入力インピーダンス:hIE
    • VBE-IB特性曲線の傾き、即ちVBE/IBである。
    • 単位は[Ω]。
  • 電圧帰還率:hRE
    • VCE-VBE特性曲線の傾き、即ちVBE/VCEである。
    • 単位はない。

トランジスタの接地回路

 トランジスタには増幅の作用があるが、トランジスタに入力電流を加えたときに、それがどのくらいに増幅されて出てくるかを表すのが電流増幅率である。

 3つの電極のいずれかを接地させることによって、3種類の基本回路を作ることができる。

  • ベース接地回路
    • 電流利得(電流増幅度)が1以下。
    • この方式は、入力インピーダンスが低くて出力インピーダンスが高いので、エミッタ接地よりも周波数特性がよく、高周波増幅回路に使用されている。
    • 電力増幅に使用するとエミット接地より利得は低くなる。
  • エミット接地回路
    • トランジスタ増幅回路として、もっともよく使用される基本的な回路。
    • 入力電圧と出力電圧は逆相となり、入力電圧がβ倍(エミッタ接地の電流増幅率)されてコレクタ側に表され、利得も大きいので、受信機に使用される回路はほとんどがこの接地方式である。
    • 3つの接地方式の中で電力利得が最も大きく、入力インピーダンスも出力インピーダンスも同程度の値であるから、多段接続の際のインピーダンス整合の必要がないので低周波増幅回路として最も多く使用される。
  • コレクタ接地回路
    • 電力利得がほぼ1。
    • 入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低くなり、電圧利得はないが、100%の負帰還がかっているので、安定したひずみの少ない回路を作ることができる。
    • 特殊な回路に使用される。
    • エミッタホロワ増幅器として使用される。
      • エミッタホロワは電力利得は最も低いが、出力インピーダンスが短いので電圧よりも電流を必要とする回路に使用される。

各接地方式の特性

項目ベース接地エミッタ接地コレクタ接地
入力インピーダンス
出力インピーダンス
電流増幅度小(≦1)
電圧増幅度大(負荷抵抗が大の場合)小(≦1)
電力利得小(ほぼ1)
高周波特性最もよい悪いよい
入・出力電圧位相同相逆相同相
代表的な用途高周波増幅増幅(一般用)インピーダンス変換

トランジスタの増幅作用

 トランジスタには電流などを増幅する機能を持つ。増幅回路のほとんどが、真空管かトランジスタを利用して作られている。

 例えば、プレーヤーのピックアップから取り出されるのは、音の波形をしたごく小さな電流なので、これをスピーカーからきちんと聞こえる音にするには、大きく増幅する必要がある。

トランジスタのバイアス回路

 トランジスタ回路にエネルギー源として直流を供給することを、バイアスを与えるという。

 そのための回路をバイアス回路といい、VBEバイアス電圧という。

 B〜E間に与えたVBBはIBを流すためのものであるから、次の図のようにVBBを除いてもIBを流すことができる。つまり、回り込むことによって、電源がひとつだけでBEに電流を流せるわけだ。

 多く用いられているバイアス回路に、電流帰還バイアス回路がある。この回路の動作は次の通り。

1:バイアス電圧VBEは、次の式で表すことができる。

V_{BE}=V_{RA}~-~V{RE}~=~R_A~I_A~-~R_E~(I_C~+~I_B)

2:温度の上昇によって、ICが増加すると、IEも増加し、VREも増加する。ところが、VRAが一定であるため、VBEが減少し、IBを減少させる。したがって、ICも減少する。

3:以上の動作により、この回路は温度変化によるICの変化をVBEに帰還させ、常にICを一定の値に保つ負帰還作用を持つ。

バイアスをかける

 次に示すのはトランジスタのエミッタ接地回路である。

 このベースに小さな電流変化を入れると、コレクタ電流はそれにつれて大きく変化する。つまり増幅されるのである。そのとき、ベースに電流を流しておくこと(これをバイアスをかけるという)を忘れてはならない。バイアスをかけないと波の形で半分が切れてしまうからである。適当なバイアスをかけておけばきちんと増幅(拡大バージョンの相似)されて出力される。

  • トランジスタアンプでは、トランジスタのベースからエミッタに入った音声信号がコレクタとエミッタの間に増幅されて出てくる。この電圧を次のアンプへつないで目的の大きさにしていく。
  • マイクからの音声信号をベースに与え、トランジスタで増幅するが、マイクからの信号がベースに入っただけでは、ベース-エミッタ間はダイオードと同じ働きをして、マイナス側の信号がカットされてしまう。
    • そのため、電源とベースの間に抵抗を挟み、ベース-エミッタ間に電圧(普通は0.6V)をかけて、信号尾プラス側に持ち上げる。
  • このことをバイアスをかけるといい、ベースに流れ込む電流をベース電流と呼ぶ。
    • ベース電流が流れると、コレクタからエミッタに増幅された電流が流れる。これをコレクタ電流と呼ぶ。
      • コレクタから電圧を取り出すために抵抗などを用いるが、このような抵抗を負荷と呼ぶ。

 実際の回路では音の波形成分(低周波)に対する交流負荷と直流負荷の両方を考えて決めることになる。

 バイアスの掛け方といっても色々ある。例えば、固定バイアス・電流帰還バイアス・自己バイアスなどである。

  • 固定バイアス
    • ベースに抵抗Rを1本繋ぐだけで済むが、温度変化でトランジスタの特性が変化するとか電池の電圧が下がるとかすると直に出力に影響してしまい、不安定になりやすい。
  • 電流帰還バイアス
    • エミッタEに抵抗が入れてあって、コレクタCの電流が増えようとするとここの電圧降下も増え、それだけベースBの電位とEの電位の差が減って、ベース電流が減り、ひいてはコレクタ電流を押さえる。
    • やや回路は複雑になるが、安定な方式である。
  • 自己バイアス
    • 固定バイアスに似ているが、2つの抵抗を使う。
    • 簡単なわりに安定な方式といえる。

固定バイアス回路

電子ブロックminiによるアンプ回路(固定バイアス1石+ICアンプ)

  • マイクから入力した音声を増幅して鳴らす。

ブロック配置図

  • ブロック配置図のようにブロックを並べて、マイクを差し、メインスイッチをオンにする。
  • マイクに向かって声を出すと、スピーカーから大きくなって聞こえる。
    • 「ピー」という発振音が出る場合は、ハウリングが起きているので、マイクとスピーカーを離すか、ボリュームを下げる。

回路図

  • 固定バイアス方式の増幅回路である。
    • 電源電圧から1MΩの抵抗を通してベースにバイアスをかける。
  • 自己バイアス方式に比べてやや不安定な回路になるが、簡単であるためよく使われる。
  • コレクタの4.7KΩは負荷抵抗、アンプに向かう80Kオームは音量調整用抵抗である。

自己バイアス回路

 トランジスタを活性化させる(作動させる)ためには、ベース電流を流す必要がある。しかし、トランジスタは温度が高くなると、増幅度が大きくなる特徴を持つ。これでは設計どおりのベース電流を流していても、温度変化によりコレクタ電流が大幅に増えたり減ったりして、設計通りの動作をしなくなってしまう。
 このために考えられたのが自己バイアス回路である。

 自己バイアス回路ではベース電流がコレクタの抵抗を通して流れるようになる。コレクタ電流が増えると、ベース電流が減ることになる。すると、そのベース電流を増幅したコレクタ電流も減る。こうして、コレクタ電流は安定する。
 この仕組みはフィードバックといわれる。自らをコントロールする、それが自己バイアスと呼ばれる所以である。

電子ブロックminiによるアンプ回路(自己バイアス1石+ICアンプ)

ブロック配置図

  • 固定バイアスのブロック配置図と比べると、ベースにバイアスをかけるはずの1MΩの抵抗が、電源電圧から直接繋がるのではなく、コレクタに繋がった4.7KΩの抵抗から分岐する。
    • このように接続された回路を自己バイアスと呼ぶ。

回路図

  • 4.7KΩのコレクタの抵抗、1MΩのベースの抵抗を通して、トランジスタのベースにバイアスをかけている。
    • これは自己バイアスで、平常時のベース電流が2.3μA、コレクタ電流が345μAと少な目であり安定する。
  • マイクからの信号電流が±0.5μAだとする。仮に電流の増幅度を150とすると、2.3±0.5μAのベース電流が、345±75μAのコレクタ電流となり、負荷であるコレクタの抵抗には1.6±0.35Vが発生する。
    • こうして、最終的に±0.35Vの電圧を発生させることができる。

エミッタフォロワー回路

  • 2段目のトランジスタの増幅回路は、コレクタに負荷抵抗がなく、エミッタに負荷抵抗が入っている。
  • エミッタの抵抗の値にまったく関係なく、信号電圧の増幅率は1倍で、電流は150倍に増幅する。
  • 常にベースの電圧より約0.6V低い電圧が出力する。
  • 電圧は増幅しないが、極めて安定した出力が実現できるが、直結回路だけでなく、スピーカーモーターの駆動、高品質アンプの増幅回路などにも使用される。

電子ブロックminiによるアンプ回路(2石+ICアンプ・直結式)

  • 2つのトランジスタのベースとコレクタが直接繋がっているため、直結式という。

ブロック配置図

回路図

  • まずマイクからの音声信号が初段のトランジスタのベースに流れ増幅される。
    • 初段のコレクタは2段目のトランジスタのベースに直結しており、さらに信号が増幅される。
  • 2石+ICアンプはバイアスの掛け方に特徴があり、自己バイアスよりもさらに安定した増幅回路として使われる。
  • 温度変化などで初段のベース電流が増加すると、コレクタ電流が増加し、コレクタ電圧は低下する。
  • 2段目のベース電圧、さらにはエミッタ電圧が減少し、1MΩを通して初段のベースの変動を抑える。
  • この一巡した流れで最初の状態に素早く戻るので、トランジスタに変化が起こり始めても、安定したバイアスがかかる。

段間接合

 低周波増幅のトランジスタの前の段、また増幅して出てくる出力を次のトランジスタにというような信号を伝えるつなぎ方を段間接合【だんかんせつごう】という。

トランス結合

・段間接合に低周波トランスを使う方法がトランス結合である。

・低周波トランスは鉄心(普通パーマロイ、大型でケイ素鋼などの板を重ねてある)に1次側と2次側の2つのコイルを巻いたものである。1次コイルに低周波を流すと磁力線の変化がコアを通って2次コイルの中に流れる。すると磁力線変化につれて2次コイルに電流が作られる。この1次と2次のコイルの巻き数を変えるとインピーダンス(交流に対して抵抗として働く成分)を増減できる上、直流抵抗が小さいので能率がよく利得の高い増幅ができる。

・しかし、周波数によって特性が違ってきたり、歪んだりもしやすい。特に小さいトランスでは問題となる。

抵抗接合(抵抗コンデンサ接合、RC接合)

・段間接合に抵抗とコンデンサの組合わせを使う方法が抵抗接合である。

・トランス結合に比べて利得は低くなるが、簡単で安上がりにできるうえ、周波数特性のよいのが特長である。

トランジスタの等価回路

 次の図は実際の回路である。

 これをh定数を用いた等価回路で表すと次の図のようになる。

 これより、回路の増幅度および入出力インピーダンスを求めると次のようになる。

電流増幅度Ai

電圧増幅度Av

電力増幅度AP

入力インピーダンスZi

出力インピーダンスZo

トランジスタのスイッチ作用

  • トランジスタがラジオやテレビの中で用いられるときには、主にアナログ信号を増幅する働きをしている。コンピュータの回路の中では、デジタル信号を素早く切り替えるスイッチング作用をしている。
  • ベースへ流れる電流をスイッチのON/OFFで変化させるとコレクタ側の電流も大きく変化する。
  • トランジスタはスイッチ作用(スイッチング作用)を持つ。
    • トランジスタのスイッチ作用とは、ベースに流す小さな電流変化でスイッチをオンにしたり、オフにしたりすることである。

バーチャル電子ブロックによるトランジスタのスイッチ作用

 バーチャル電子ブロックにおいて、トランジスタのスイッチング作用によってランプの点灯を実験してみた。

電子ブロックminiによるトランジスタのスイッチ作用

ブロック配置図(リード線の端子を接触させない場合)

ブロック配置図(リード線の端子を接触させる場合)

  • リード線を差して、電子ブロックminiのメインスイッチをオンにする。このときはLEDは付かない。
  • 次に、2本のリード線の端子を接触させる。するとLEDが付く。
    • これはリード線の端子を接触させることで、ベースに流れる電流が増えて、トランジスタのスイッチ作用が働いたためである。

回路図

トランジスタの故障

 電子機器の故障としては、トランジスタによるものが非常に多く見られる。

 トランジスタの特性を表すパラメータは色々あるが、第1にそれが不良品かどうかを調べ、第2にhFEの値を調べることが有効である。

測定の種類テストに使う器具内容
コレクタ電流・ベース電流の測定電流計、可変抵抗、抵抗類
hFEの静的測定トランジスタチェッカーあらかじめ計器に決められた条件の基で、hFEを測定する。
特性の自動測定カーブトレーサー(オシログラフ、階段波発生器)測定条件を自動的に変えて、特性をブラウン管に表示する。
指なめテストテスター、指、唾最も簡単なhFE測定法
回路電圧の測定エミッタ抵抗、コレクタ抵抗の電圧降下の測定トランジスタが正常なら電圧が降下する。トランジスタをはずさないで計れるのが長所。

不良品の判定

電子ブロックminiのトランジスタ検査機

ブロック配置図

回路図

  • 電源ONにした後に、Aに右手の親指、Bに右手の人差し指で挟みこむ。すると、トランジスタが正常であればLEDが点灯する。
    • 指による抵抗は大きいので(個人差があるかもしれないが10MΩぐらい)、LEDは弱く光る。
  • LEDの明かりは暗いため、見えにくい場合は暗い場所で試す。
  • もしLEDが点灯しなければ、トランジスタが異常であるか、いずれかのブロックが断線している可能性が高い。
    • LEDはすでに正常であることを確認済みの場合。

コレクタ電流・ベース電流の測定

  • 測定法の中で一番基本的な方法である。
  • ベース電流を流したときのコレクタ電流を測るというものである。
  • この測定法でhFEが測定できるが、もしこの測定中にベース電流が流れなかったり、逆に異常に多く流れたりしたときはベース-エミッタ接合がオープンまたはショートしていると考えられる。
  • また、ある程度ベース電流は流れているのにコレクタ電流が流れなかったり、逆に異常に多く流れたときはコレクタ-ベース接合に異常があることがわかる。
  • よって、これはhFE測定法であると同時に不良検査法でもある。

hFEの静的測定

  • 市販のトランジスタチェッカー、即ちhFEがメーターで接続できる装置を使う。
  • トランジスタチェッカーには色々な種類がある。

特性の自動測定

・これはベース電流とコレクタ電圧を自動的に順次増加し、そのときのコレクタ電圧とコレクタ電流とをブラウン管に表示させる装置である。表示部にカーブが表示される。これを見れば、トランジスタの特性がわかり、同時に不良品かどうかの識別も行うことができる。

・これは多数のトランジスタを専門的に測定するための方法で、一般に使うには高級すぎる。

指なめテスト

・この方法はトランジスタの特性を詳しく知ることはできないが、トランジスタが使えるかどうかの判定はできる。

・何よりも、手軽に測定できることが長所である。

・ポイントは、トランジスタはダイオード2個と同じということ。テスタの黒棒(−)には電気的に(+)、赤棒(+)には電気的に(−)が来ている。

・導通試験は次のようにやる。これはNPNの場合であり、PNPの場合は逆になる。

エミッタ、コレクタを調べるエミッタに黒、コレクタに赤導通があってはいけない
エミッタに赤、コレクタに黒導通がなければならない
コレクタ、ベースを調べるコレクタに黒、ベースに赤導通があってはいけない
コレクタに赤、ベースに黒導通がなければならない
エミッタ、ベースを調べるエミッタに黒、ベースに赤導通があってはいけない
エミッタに赤、ベースに黒導通があってはいけない

・簡単なhFEの測定は次のようにやる。これはNPNの場合であり、PNPの場合は逆になる。

 エミッタにテスターの赤、コレクタに黒をつなげる。指をちょっとなめてベースとコレクタに同時にさわる。そのとき、テスターが振れればOK。テスターのR×100レンジくらいにしておく。

回路電圧の測定

  • トランジスタを外さないで良否の判定を行うには、回路電圧の測定が便利である。
  • この方法によれば、基板パターンを切ったりする手間をかけずに済む。

トランジスタを用いたコンピュータ

  • 1957年にControl Data社により1605コンピュータが発表された。
    • このコンピュータはトランジスタを25,000本使っている。
  • 1961年に沖電気によりOKITAC 5090コンピュータが発表された。
    • このコンピュータはゲルマニウムトランジスタを用いており、日本で好評を博した。
  • 1964年にシャープにより数千個のトランジスタを使った電子卓上計算機が売り出され始めた。
  • 1965年にリレーをトランジスタに置き換えた電子交換機NO-1 ESSが組み立てられた。

参考文献

  • 『LSIのはなし』
  • 『実験で学ぶ最新トランジスタ・アンプ設計法』
  • 『たのしくできるやさしいアナログ回路の実験』
  • 『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 電子』
  • 『ペンローズのねじれた四次元』
  • 『新版 絵で見るエレクトロニクスのABC オーディオ・ラジオ・テレビ編』
  • 『ズバリ出る4級アマチュア無線問題集 '92〜'93』
  • 『はじめて学ぶ手ほどきデジタル回路』
  • 『初級アマチュア無線 問題と解説』
  • 『第3級ハム国試 要点マスター』
  • 『まるごと覚える4級アマチュア無線 ポイントレッスン』
  • 『電子工作ハンドブック2 回路設計 入門編』
  • 『図解・わかる電子回路』
  • 『図解雑学 電子回路』
  • 『はじめてのテスター』
  • 『電子工作ハンドブック2 回路設計 入門編』
  • 『CODE コードから見たコンピュータのからくり』
  • 『DD1種実戦問題 09秋』
  • 『大人の科学magazine Vol.32』