こうした死後変化、特に冷却・硬直・腐敗などの現象は、気温や湿度などの環境条件によって大きく左右される。
法医学の領域では、様々な事件の際に被害者は何時頃に殺されたかが問題になり、それが事件解決のための重要なポイントとなることがしばしばある。
ところが角膜や筋肉の変化は、死体内で起こる化学変化によるものなので、温度や湿度などの環境条件によって支配される。また次のような他の要因にも大きく影響される。
・目の角膜は普通の場合死後半日ないし1日くらい経つと、全般に霞がかかったように半ば混濁する。
・さらに1日半から2日経つと、強く混濁し、瞳孔を見ることができなくなる。
・環境に大きく依存するという欠点がある。
・死後一旦弛緩するが、普通の場合数時間経つと、全身の筋肉に硬直がみられる。これを死後硬直という。
・半日経つと、硬直が極めて強くなり、手足を曲げることが困難になる。
・不行性型硬直(番号の順に進む)
・常温に近いほど誤差は少ない。環境に大きく依存するという欠点がある。
・冷凍状態では死後硬直が起こりにくい。
・死後20時間ぐらいで、硬直は最強度。
・スポーツ中の急死のように筋肉が疲労状態にあると、これらの化学反応が強く早く反応して、硬直は死亡直後に出現する。
・死後硬直の原因は、主に筋肉内のATPの分解、つまり、一種の化学反応が原因。
・正常人の平均の直腸温は摂氏37.2度ぐらいであるが、死亡すると体熱産生の化学反応が停止し、死体は次第に冷却する。
・この死体冷却は一般物体の場合と同様に、環境温度によってもちろん異なり、暑いときはゆっくり冷却し、寒いときは早く冷却するということはあるが、いずれの場合でも環境温度から3〜4度高いところまでは気温の時間的変動とはほとんど無関係にかなりゆるやかな規則的な逆S字型の効果曲線を示す。
・よって死亡時刻不明の死体が発見されたら、死体をできるだけそのままの状態にして、棒状温度計などで直腸温の測定を続ける。するとある時点からの直腸温降下曲線が得られる。そしたらその曲線をゆるやかな逆S字型に逆に延長して、直腸温の平均値37.2度の線との交点を求めて、その点からx軸を見ると簡単に死亡時刻を推定できる。
・この際、測定時間が長いほど正確な時間が得られるが、2時間ぐらいの測定でも推定可能。
・直腸温にも個人差はあるが、従来の方法よりは推定精度は高い。
・死後体温低下は一般的に気温が摂氏20度の時、はじめの7時間は毎時間1度、以後毎時間0.5度低下する。
・空気中に置かれた死体の腐敗の進行度を1とすれば、水中死体の腐敗度は2倍遅くなり、土中に埋めた場合は8倍遅い。