目次 †
アルミニウムの特徴 †
- 天然には金属として存在せず、結合力の大きい酸素などの化合物として地殻中に存在する。
- そのため、金属であることがごく最近まで認識されていなかった。
- 軽量。
- 廃棄処理・リサイクルもしやすい。
- アルミニウムは「リサイクルの王様」とも呼ばれる。
- 使い終わったアルミ製品を集めて溶かし、再び固めて再生地金とする。
- アルミニウムの融点は約660℃と低く、溶かしやすい。
- 再生地金を作るエネルギーは、鉱石であるボーキサイトから精錬する場合のわずか3%にすぎず、97%のエネルギーを節約できる。
- 熱伝導率が高い。
- 食料や飲料を冷やしたり温めたりするのに適している。
- 味を変えない。
- ビールや炭酸飲料などの飲料缶、レジャーなどの携帯用食器や食品を包むアルミホイルとして広く用いられている。
- ナポレオン3世はこよなくアルミニウムを愛したという。
- 当時アルミニウムを精錬するには非常に費用がかかり、金と同じぐらいの値段だったという。
- 空飛ぶ金属とも呼ばれる。
- 飛行機の全重量の80%がアルミニウムとその合金でできている。
- 1886年にホール・エルー法により製造法が確立されてから今日まで実用に共されて100年余りの若い金属である。
- アルミニウムを金属的に接合すること、つまり溶接が難しいため、その接合技術が工業的な規模で応用されるようになったのは、他の材料の長い歴史から比べれば最近のことである。
- アルミニウム合金のいくつかに5回対称パターンになっている準結晶が存在する。
- 5回対称の準結晶ができた理由の1つとして、急激に冷やすことで得られる合金が3次元空間の比較的密な(近似的な)空間充填形に固まる(結晶化される)ことが挙げられる。
- 人間がアルミニウムを発見したのは、今からわずか200年前ほどと最近のことであるが、昔から人間は知らず知らずのうちにアルミニウムを使っていた。
- アルミニウムを含んだ粘土、即ち含水【がんすい】ケイ酸アルミ粘土という粘土で土器を作って、火で焼くと石のように硬くすばらしい土器ができるのである。
- BC2000年頃のエジプトでは、アルミニウムを含んだ鉱物をすりつぶして、目薬や血を止める薬に利用していた。また、布を染めたり、皮をなめすときの薬にも使われていた。
- フランスの化学者ラボアジエが、明バン石【みょうばんせき】の中の「バン土」【ばんど】には、未知の金属元素がたくさん含まれていることを発見した。
- そして1782年に「しかし、この金属はとても強い力で酸素と結び付いているので、なかなか取り出せないのだ」という説を発表した。
- ここから、アルミニウムを取り出すための科学的な研究がスタートしたのである。
- 1807年、イギリスの化学者デービィは、発明されたばかりの電池を使って、明バン石からこの新しい金属と酸素の結びついた酸化物を取り出すことに成功した。
- この未知の金属に「アルミアム」という名前を付けた。
- デーヴィの取り出した金属は純粋なアルミニウムではなかったが、確かに新しい金属があるという明らかにしたのである。
- エルステッドが化学的な方法によりアルミニウムと塩素との化合物からアルミニウムを取り出すことに成功した。
- 1845年に、ドイツのベーラーが化学的な方法により、エルステッドのものよりさらに純粋なアルミニウムを取り出した。
- ナポレオン3世は世界で初めてのアルミニウム工場を作らせ、そこで外国の王を迎えるために使う、特別なスプーンやフォークをアルミニウムで作った。
- 1886年に、アメリカの学生ホールは大学の研究室で見たアルミニウムを電気分解によって作ろうと、自宅の小屋に閉じこもって研究していた。
- ホールはボーキサイトという土を溶かした液の中に電極を入れて、電気のスイッチを入れた。しばらくすると、マイナスの電極には白い金属が吸い寄せられるようにゆっくりときらきらとかがやきながら集まり始めた。これがアルミニウムであった。
- ホールの発明した電気分解によるアルミニウムの生産方法は、安く大量にアルミニウムができるだけではなく、それまでの方法に比べてずっと純度の高いアルミニウムを作ることができた。
- アメリカのホールがアルミニウムの電気分解法を発明した同じ年に、フランスでもエルーという化学者が偶然にも同じ方法でアルミニウムを作ることに成功した。
- 2人の発明したアルミニウムの電気分解法は、この2人の名を取って、ホール・エルー法と呼ばれる。
- ホールは1888年にピッツバーグにアルミニウム会社を作った。
- その後、アメリカではナイアガラの滝を利用した大きな水力発電所ができ、この電力を利用して、ピッツバーグは世界でも有名なアルミニウム生産地になっていった。
- 1934年に日本でもアルミニウムの地金【ぢがね】ができるようになった。
- アルミニウムの原料であるボーキサイトが日本では全く採れないため、1934年に始まった日本のアルミニウム生産は世界でも例のない明バン石を原料にしてアルミニウムを作るという日本独自の方法だったのである。
- 1936年に日本で超超ジュラルミンという大変丈夫なアルミニウム合金が発明された。
- 超超ジュラルミンとは、1906年にドイツのウィルムが発明した丈夫なアルミニウム合金であるジュラルミンよりも、もっと丈夫なジュラルミンである。
- ドイツの飛行船ツェペリン号はジュラルミンでできていた。
- 日本の超超ジュラルミンは零戦などの飛行機の材料になった。
- 電線に使う金属には、よく電気を通すことが大切である。一番電気をよく通す金属は銀や銅である。
- しかし、銀は高価すぎというデメリットがある。
- 同じ太さの電線ならアルミニウム電線は銅電線の60%くらいの電気しか流すことはできない。しかし、アルミニウムは銅の3分の1くらいの重さしかない。
- そのため、高圧送電線にはアルミニウムが使われている。また、変電所にあるブスバーという板もアルミニウムが使われている。
- アルミニウムの鉱石ができるまでには、他の金属の鉱石とは違った、もうひとつの条件が必要であった。
- それは何億年という長い間、アルミニウムを含んだ岩石が熱い太陽にあぶられ、激しい雨に洗われて風化していかなければならなかったのである。こうするうちに岩石が、アルミニウムをたくさん含んだボーキサイトという赤っぽい土に変わっていた。
- そのため、ボーキサイトは暑く、雨の多い赤道の近くからたくさん採れる。
- アルミニウムは地球に一番豊富にある金属である。
- アルミニウムは低温にも強い。マイナス200℃になっても強さを失わない。
- 気体を低温の液体にして蓄えるタンクにぴったりである。
- 天然ガスをマイナス160℃の低温で液体にして運ぶLNGタンカーなどにアルミニウムが使われている。
- アルミニウムが酸素に触れるとあっという間に表面に酸化アルミニウムの薄い膜ができる。
- 厚さは1万分の1mmくらいである。この薄い膜がそれ以上アルミニウムが酸化するのを防ぐ役目をしてくれる。また、これくらいの薄さだと、膜は光を通す。アルミニウムがいつまでも銀色に輝いているのはこのためである。
アルミニウムの化合物 †
アルミニウムの接合 †
- アルミニウムの接合、とくにろう付けや半田付けが難しい理由は、その表面が化学的に安定な酸化膜で覆われているために半田が濡れにくいからである。
- 近年では真空ろう付け法、雰囲気ろう付け法、超音波半田付け法などによってアルミニウムの接合もできるようになってきた。
アルミニウムとアルミニウム合金 †
- 1000シリーズ:純粋なアルミニウム
- 合金よりも柔らかく、溶接や加工がしやすく、化学装置や反射器、建築材料などに使われている。
- 2000シリーズ:アルミニウム・銅合金
- 強度や硬さの増したアルミニウム合金である。
- 割合加工しやすい。
- ジュラルミンはこの代表で、トラックのパネルや飛行機に使われている。
- 3000シリーズ:アルミニウム・マンガン合金
- アルミニウムに1.2%ほどのマンガンを加えた合金で、最も広い用途を持っている。
- 純粋なアルミニウムよりも20%ほど強度が高く、加工もしやすく、錆にも強い。
- 台所用品や建材によく使われている。
- 4000シリーズ:アルミニウム・ケイ素合金
- 5000シリーズ:アルミニウム・マグネシウム合金
- アルミニウムに0.3〜5%ぐらいのマグネシウムを混ぜて作る。
- 強度が高く、それに硬い。
- 特にさぶにくいことから、缶詰の缶や船などに使われている。
- 6000シリーズ:アルミニウム・マグネシウム・ケイ素合金
- 押し出し加工しやすく、溶接も簡単である。
- 錆に強いためサッシなどの建築材料に広く使われている。
- 7000シリーズ:アルミニウム・亜鉛・マグネシウム合金
- アルミニウムに3〜8%くらいの亜鉛、それにマグネシウムを少し加えた合金である。
- とても高い強度と硬さを持っている。
- 飛行機や自動車などの大きな力のかかる用途に使われる。
- 8000シリーズ:アルミニウムにビスマス・鉛・ボロン・クロム・ニッケル・チタンなどを加えた合金
- ボロンを加えた合金はより電気を伝えやすい合金である。
- チタンを加えた合金は高い強度とよく伸びる性質を持った合金である。
参考文献 †
- 『元素を知る事典』
- 『元素はすべて元祖です』
- 『はんだ付のおはなし』
- 『エッシャーとペンローズ・タイル』
- 『「もの」と「ひと」シリーズ9 アルミニウム』