ディオフォントスの『数論』の第4巻の問題29に、次のような問題がある。これは現代風に直したものである。
[問題]与えられた数nに対して、4つの数x1,x2,x3,x4でとなるものを見付けよ。
[解答]n+1を次のように展開できる。
一方、n+1を4つの平方数の和として表し置いて、次のようにおけばよい。
ディオフォントスはn=12とした。
上記から、13を4つの有理数の2乗の和に表して、以下を得られる。
なお、上記のように13を4つの有理数の2乗の和に分解する代わりに、13=22+22+22+12と合わせば次の解を得る。
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[補講]ディオフォントスの『数論』の第5巻の問題14においても、与えられた数を4つの平方数の和として書いている。 ◇
[定理]すべての自然数は4つの平方数の和として表される。
平方数に02も入れて数えている。もし、02が平方数としないならば、「4つの平方数」ということろを「高々4つの平方数」と変えなけらばならない。
[証明](オイラー)
オイラーの恒等式が成り立つため、4平方和の積は4平方和になる。
後は、すべての素数が4平方和になることを示せばよい(自然数は素数の積であるため)。
[1]素数2の場合、12+12+02+02と書ける。
[2]奇数の素数の場合
pを奇数の素数として、次の2つの集合を考える。
まず、Sに含まれる2つの数x2とy2が、pを法として合同とならないことを示す。
ここで、x>yとしても一般性は失われない。
つまり、pを法として合同にならないなら、x2-y2=(x+y)(x-y)はpで割り切れないことを示す。
だから、0<x+y,x-y≦p-1である。
よって、x+yもx-yもpでは割り切れない。
つまり、x2-y2もpで割り切れない。
次に、Tに含まれる2つの数-1-x2,-1-y2も同様の理由で、pを法として合同とならない。
一方、どんな整数もpを法として、0,1,…,p-1のどれかに合同である。
即ち、pを法とした合同類の数はp個である。
そのため、集合SとTを合わせるとp+1個の元があるから、同じ合同類に入る元がSとTにあることになる。
よって、x2∈S,-1-y2∈Tで、pを法として合同になる値、即ち次を満たす値が存在する。
(例えば、p=7とする。S={0,1,4,9},T={-1,-2,-5,-10}で、SとTの両方に存在する値は、4≡-10 (mod 7)と9≡-5 (mod 7)の2組ある。
上記の式を書き直すと、次のようになる。
これは左辺がpの倍数kpに等しいということを意味する。
さらに、次の大小関係が成り立つ。
よって、k<pである。
x1=x,x2=y,x3=1,x4=0が次の方程式の解であることがわかる。
←(*)
[1]k=1の場合は明らかに成り立つ。
[2]k>1として、kを小さくすることを試みる。
(i)kが偶数の場合
(*)の左辺が偶数でなければならないから、以下の3つの場合のどれかになる。
(c)の場合、順番を適当にとれば、x1,x2が偶数、x3,x4が奇数としてよい。
そうすれば、すべての場合に、が整数である。
(*)の両辺を2で割ると、次のように書ける。
これで、kをk/2に置き換えたときの(*)の解を得る。
(ii)kが奇数の場合
xiを次のようなyiで置き換える。
(xiをkで割った余りがk/2より小さければそれをyi、大きければそれからkを引いたものをyiとすればよい)
そうすると、次のように展開できる。
(∵(*))
よって、はkの倍数、即ち次が成り立つ。
←(**)
だから、
よって、k'<kである。
オイラーの恒等式をそのまま使えば、(*)と(**)から次が成り立つ。
←(***)
一方、だから、次が成り立つ。
よって、z1,z2,z3,z4はすべてkで割り切れる。
そこで、(***)をk2で割ると次が得られる。
これで、(*)のkよりも小さいk'に対して、解を得たことになる。
このように、(*)のkを次第に小さくして、1に到達するまで続ければよい。 □
[別証][定理]「いかなる自然数も高々n個のn角数の和として表される」において、n=4を適用する。 □