軍事的偵察の実現法
目次
はじめに
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軍事的偵察とは
軍事的偵察は、敵や地形、施設などの状況を事前に把握し、作戦判断の材料を集める偵察行動です。戦闘そのものではなく、戦闘を有利に運ぶための「情報の先取り」が本質です。
現在は、目視による観察だけでなく、通信傍受・画像解析・ドローンなど多様な手段が使われます。
軍事的偵察の有用性
上空から広範囲を監視することは、敵の動向や異常を発見するうえで非常に有効な手段です。
偵察機や偵察衛星の登場、観測機器や画像処理技術の進化によって、偵察任務の様相は大きく変化しました。また、AIの登場により、情報の収集や分析能力は格段に向上しましたが、それでも人間の力は依然として重要です。たとえカモフラージュされた敵陣地を見破ったとしても、何が隠されているのかを確認するには、人間の目による偵察が不可欠です。
サイバー忍者にとっての軍事的偵察
サイバー忍者にとっては監視術は必須技術の1つです。バイバー忍者はスパイや探偵の監視術、軍隊の軍事的偵察の技術を包括的に取り扱います。詳細は『サイバー忍者入門』を参照してください。
偵察機による偵察
偵察機は、敵の情報を持ち帰ることを目的とする航空機です。
前線における敵軍の配備や移動の状況を偵察します。また、攻撃後の敵の損害状況を調べ、再攻撃の必要性を判断するための偵察も行いました。画像偵察の他にも、可能な限り敵の情報を収集しました。
偵察機は偵察機材を搭載する分、武装が手薄になります。高高度を高速で飛行することで戦闘能力の低さを補っていましたが、それでも偵察任務には大きな危険が伴いました。
歴史的には、冷戦期にアメリカがソビエト領内を偵察するために開発したU-2偵察機がその先駆けとされます。超高高度を飛行し、高性能カメラによって地上を撮影することができました。当時の迎撃戦闘機や対空ミサイルでは到達できない高度を飛行していたため、開発当初は迎撃不可能とされ、大きな成果を上げました。
その後、ソビエトが対空ミサイルを改良し、1960年にU-2偵察機が撃墜されました。これは米ソ両国間の国際問題へと発展しました。当時の日本の報道では、「黒いスパイ機」と呼ばれていました。U-2偵察機の撃墜事件以降、偵察衛星への需要は急激に高まりました。
なお、航空自衛隊の偵察機は、平時には地震による被害状況の確認や、火山噴火に伴う火山活動の観測にも出動しています。
偵察気球による偵察
気球による有人飛行が成功したのは、18世紀ごろのことです。上空から戦況を見下ろすことで、状況を正確に把握できる点が注目され、偵察兵器として活用されました。実際、偵察任務に初めて使用された飛行兵器は気球だったのです。
気球が戦いに大きな影響を与えたのは、19世紀の南北戦争および普仏戦争だといわれています。南北戦争では気球偵察隊が登場し、普仏戦争では偵察、測量、要人の脱出、手紙の輸送など、さまざまな用途で活用されました。
気球は武装していないため、敵の格好の的となりやすい存在です。そのため、地上に機関銃や対空砲を設置し、接近する敵の航空機を迎撃することで、偵察気球を守っていました。
2023年ごろには、中国の無人偵察気球が注目を集めました。高度20km以上を飛行するタイプであるため、戦闘機による撃墜が困難になるとされています。ある程度の重量物を搭載することが可能であり、電磁パルス攻撃や高高度電磁パルス攻撃に利用される可能性も指摘されています。このような攻撃は、電力や通信などの重要インフラ、および対象地域の電子機器に対して致命的な打撃を与える恐れがあります。
電磁パルス(Electro-Magnetic Pulse:EMP)攻撃とは、電磁パルスを用いて電子機器や電力インフラなどの電子システムを破壊・麻痺させる攻撃全般を指します。核兵器を高高度で爆発させるものを含みますが、それ以外にも非核EMP(通常爆薬や電子デバイスを用いたもの)も存在します。
高高度電磁パルス(High-altitude Electromagnetic Pulse:HEMP)攻撃とは、高度40~400kmの高高度で核爆発を起こすことで強力な電磁場を発生させる攻撃手法です。この影響により、上空および地上の広範囲に電子パルスが降り注ぎます。人体に直接の影響はありませんが、電線などの導体にエネルギーが集中し、電子機器を破壊する恐れがあります。
UAVによる偵察
21世紀に入ると、国家間の大規模戦争は減少し、代わりにテロ組織との戦いへと移行しました。テロ組織がゲリラ戦や自爆テロを展開し、アメリカ軍を中心に人的被害が増加しました。このような状況の中で、新たな兵器として無人機の需要が高まりました。ちょうどコンピューター技術の発展とも相まって、無人機が本格的に活躍し始めたのです。
実戦で成果を挙げた史上初の無人兵器は「ゴリアテ」です。これは単純な自爆兵器で、地雷原の啓開や敵陣地の爆破などを目的に開発されました。有線による遠隔操作も可能で、1942年には東部戦線で実戦投入されました。限定的ではあるものの、無人兵器が成果を挙げたのは画期的な出来事でした。
現代の戦場では、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)による偵察が主流になっています。空飛ぶロボット兵器とも呼ばれています。
乗員が搭乗しないため、安全装置を必要としません。安全な場所から敵を攻撃できるという点が、無人機の最大の利点です。操縦装置や燃料、偵察装置だけを搭載すればよいため、生産コストも低く抑えられます。
UAVは遠隔操縦や自律飛行も可能です。特に空中には障害物が少ないため、自律飛行に非常に適しています。また、垂直離着陸が可能なUAVも存在し、限られたスペースからの発着や、市街地での空中停止といった運用が可能です。
通常の制空権とは無関係に活動できるのも、UAVや小型ドローン(後述)の強みです。これらが飛行する高度は、戦闘機の飛行高度よりもかなり低い空域であるためです。たとえ戦闘機がこれら飛行物体を発見し攻撃しようとしても、地上に着陸されてしまえば、攻撃は困難になります。
UCAVの活躍
今日では、無人攻撃機(UCAV:Unmanned Combat Aerial Vehicle)と呼ばれる武装型のUAVが実戦で活躍しています。偵察用UAVとUCAVが連携することで、精密攻撃を可能にする「ハンター・キラー戦術」が誕生しました。この戦術では、UAVが攻撃目標を発見すると、ミサイル誘導用レーザーを照射します。その後、管制ステーションからUCAVに攻撃指令が出され、ミサイルを搭載したUCAVが攻撃目標に向かってミサイルを発射するという仕組みです。
しかし、UCAVには以下のような課題も指摘されています。
- モニター越しの遠隔操作であるため、誤爆のリスクが高まること。
- 敵に対して過剰な殺傷力(オーバーキル)を行ってしまう傾向があること。
- 操縦者が精神的ストレスを抱える可能性があること。
Bayraktar TB2
トルコのBaykar(バイカル)製の軍用固定翼型ドローン「Bayraktar TB2」は、中高度・長時間飛行クラスのUAVです。Bayraktar TB2は、各国で実戦配備が進んでいるUAVです。搭載可能な兵装には、レーザー誘導式ミサイルなどが含まれ、精密攻撃にも対応しています。
Bayraktar TB2の翼幅は12メートル、全長は6.5メートルになります。最大で150キログラムのペイロードを搭載可能で、エンジン駆動によって巡航速度は時速130キロメートル、飛行高度は約5,500~7,500メートル、飛行時間は最大27時間におよびます。また、最大通信距離は約300キロメートルとされ、高高度からの偵察、情報収集、攻撃支援が可能です。各種センサーや暗視カメラも搭載しており、敵軍の戦車が発する周波数を特定することもできます。実際に、同機はロシアの対空火器を無力化するのに成功しました。
UAV以外の無人機
無人機には、空を飛行するタイプ以外にもさまざまな種類が存在します。
UGV(Unmanned Ground Vehicle)
地上を走行する無人地上車両です。地雷を撤去して爆破する自動走行車両も含まれます。
UAVと比べると、実戦投入はまだ難しい段階にあります。整備された道路であれば自動運転が可能ですが、荒地、河川、森林などの複雑な地形はすべて障害物となります。自動運転はもちろん、遠隔操作であっても、それらを乗り越えるには多くの課題が残されています。
USV(Unmanned Surface Vehicle)
海上を航行する無人水上艇です。カメラによる海上監視や、センサーを用いた水中情報の収集が可能です。
UUV(Unmanned Underwater Vehicle)
海中を移動する無人潜水機です。危険海域においてソナーを用いて水中情報を収集します。海中ではGPSが使用できないため、海上のUSVと水中音響通信を行うことで、位置情報の補正が可能となります。
小型ドローンによる偵察
ドローンとは、一般に小型で、遠隔操作や自律飛行が可能な無人航空機を指します。UAV(無人航空機)もドローンと呼ばれますが、本書で「小型ドローン」と記載する場合は、民生用のマルチローター(マルチコプター)型の無人航空機を指すものとして解釈してください。
小型ドローンは、持続的な偵察やターゲットの監視・追跡など、多岐にわたる運用が可能です。取得した映像やデータは、無線通信を通じてリアルタイムで指揮所に送信されます。
頭部装着ディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)を使用すれば、小型ドローンに搭載されたカメラ映像を見ながら、自分が飛行しているかのように遠隔操作することができます。
さらに、小型ドローンに武器や爆弾を搭載して、武装化することも可能です。例えば、ロシアとウクライナの戦争では、さまざまな小型ドローンが使用され、戦車や隠れた兵士を攻撃する際に大きな成果を挙げました。数万円の機体で、数億円の戦車すら破壊できることが証明されたのです。従来の戦争において小型ドローンは脇役とされてきましたが、ウクライナ戦争では主役に躍り出たといえるでしょう。
偵察衛星による偵察
人工衛星にはさまざまな種類がありますが、その中でも偵察に特化したものを偵察衛星と呼びます。偵察衛星は、迎撃や妨害がほぼ不可能であったため、安全かつ確実に偵察を行うことができました。特に、軍事施設などの構造物の偵察に威力を発揮しました。
アメリカは1950年代末、「ディスカバラー」という人工衛星にカメラを搭載し、地球表面を撮影したフィルムをカプセルに入れて地上へ投下するという計画を進めていました。
その後、CIAとアメリカ空軍が共同で進めたのが、ソビエト国内の偵察を目的とした「コロナ計画」です。1959年にはKH-1衛星が打ち上げられました。この衛星もディスカバラーと同様、フィルムカプセルを地上に投下する機能を備えていました。初期段階ではカプセルの回収に失敗することもありましたが、その後は回収率が向上し、アメリカにとって極めて貴重な情報源となったとされています。
フィルムカプセルを地上に投下するタイプの偵察衛星に対抗するには、あらかじめ回収予定地点に部隊を配置することが効果的とされていました。
1976年には、本格的な画像伝送を可能にするための衛星、KH-11が打ち上げられました。この衛星は、反射式望遠カメラで撮影した画像を電気信号に変換し、地上の受信局へリアルタイムで送信するという方式を採用していました。
偵察衛星は打ち上げられるたびに改良が重ねられ、現在では数十センチメートル級の高い地上分解能を有する機体も運用されています。これにより、地上の小さな物体まで識別可能となっています。
1回の撮影で十数キロメートル幅(数十平方キロメートル程度)の範囲をカバーできるうえに、複数の偵察衛星を連携運用することで、同一地点の監視頻度が向上し、ほぼリアルタイムでの情報提供も可能になりつつあります。
また、光学センサーに加え、赤外線センサーやその他特殊なレーダーを搭載した衛星も存在しており、これにより夜間や悪天候下でも宇宙空間から地上の様子を観測することが可能です。
ただし、軍事用の偵察衛星は民間の観測衛星に比べて格段に高性能であり、その詳細は機密扱いとなっており、一般には公開されていません。
























