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【STEP02】反転増幅回路 — オペアンプのもっとも基本的な回路【オペアンプ入門学習キット編】

目次

はじめに

いつもブログをご覧いただきありがとうございます。

ミジンコに転生したIPUSIRONです😀

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「手と頭で覚える キットで遊ぼう電子回路シリーズNo.8 オペアンプ入門」(ADWIN CORPORATION)の実験記録です。
オペアンプを使った回路の中で、もっとも基本的かつもっとも頻繁に使われるのが反転増幅回路(Inverting Amplifier)です。
名前の通り、入力信号を増幅しつつ反転(位相を180°ずらす)する回路です。
この記事では、反転増幅回路の動作原理を「なぜそうなるのか」まで掘り下げて解説します。

前提作業

反転増幅回路の実験に入る前に、以下の2つを済ませておきます。

オシロスコープのプローブ補正

校正していないプローブでは正確な波形が測定できないためです。

正弦波発振回路の組み立てと調整

本キットでは内蔵のウィーンブリッジ発振器を信号源として使います。STEP17ですが、増幅回路の実験には信号源が不可欠なため、先に準備しておく必要があります。

反転増幅回路とは

反転増幅回路は、オペアンプに2本の抵抗(R1, R2)を接続した、もっともシンプルなオペアンプ回路です。

以下の2つの機能を同時に実現します。

  1. 増幅 — 入力信号の振幅を大きくする(R1とR2の比率で決まる)
  2. 反転 — 出力の極性が入力と逆になる(正の入力→負の出力、負の入力→正の出力)

たとえば、入力波形が「山→谷」なら出力波形は「谷→山」になります。波形を上下反転させたイメージです。

基本回路図

  • R1:入力抵抗(入力側の抵抗)
  • R2:帰還抵抗(フィードバック抵抗)— 出力から反転入力端子(-)に戻す
  • オペアンプの非反転入力端子(+)はGNDに接続

ここで重要なのは、R2が出力端子から反転入力端子(-)に接続されている点です。これが負帰還(ネガティブ・フィードバック)の構成であり、オペアンプ回路の安定動作に不可欠な要素です。

動作原理の理解:3つのステップ

ステップ1:仮想短絡(イマジナリーショート)を理解する

反転増幅回路を理解するうえでもっとも重要な概念が仮想短絡(Virtual Short / Imaginary Short)です。

仮想短絡とはオペアンプの(-)端子(a点)と(+)端子(b点)の間の電位差がほぼ0Vになる現象です。以降、(-)端子をa、(+)端子をbと呼びます。

なぜこうなるのでしょうか。オペアンプの性質から説明します。

  1. オペアンプの開ループ利得(増幅率Aは非常に大きい(理想的には無限大、実際には10万倍〜100万倍)
  2. 出力電圧 Vo = A × (Vb − Va) なので、出力が有限の値に収まるためには「Vb − Va ≈ 0」でなければならない
  3. つまり、負帰還がかかっている状態では、オペアンプは自動的に「Va ≈ Vb」となるように出力を調整する

本回路ではb点(+端子)がGND(0V)に接続されているため、a点(-端子)の電位も仮想的に0Vになります(Va ≈ Vb = 0V)

これが仮想短絡です。実際にa点とb点が導線で繋がっているわけではないですが、電位だけが等しくなります。電流はほとんど流れ込みません(オペアンプの入力インピーダンスは非常に高い)。

仮想短絡が成り立つ条件

仮想短絡は負帰還が正しくかかっている場合にのみ成立します。以下の条件が必要です。

  • 出力が飽和していないこと(電源電圧の範囲内であること)
  • 帰還経路が存在すること(R2が接続されていること)
  • 正帰還ではなく負帰還であること

ステップ2:仮想接地点を「シーソーの支点」として捉える

R1とR2の間の接続点(a点に繋がる点)をX点と呼びます。仮想短絡により、X点の電位は0V(GND電位)に固定されます。

この状態をシーソーの支点に例えると直感的に理解できます。

  • 入力電圧が上がる(正方向)→ 出力電圧は下がる(負方向)
  • 入力電圧が下がる(負方向)→ 出力電圧は上がる(正方向)

これが「反転」の直感的な理解です。

具体例:R1 = R2 の場合(増幅率1倍)

  • 入力 Vi = +1V のとき
  • X点は0Vに固定(仮想短絡)
  • R1で1V降下(+1V → 0V)
  • R2でも1V降下が必要(0V → -1V)
  • したがって 出力 Vo = -1V

具体例:R2 = 2×R1 の場合(増幅率2倍)

  • 入力 Vi = +1V のとき
  • R1(10kΩ)で1V降下(+1V → 0V)
  • R2(20kΩ)はR1の2倍なので2V降下(0V → -2V)
  • したがって 出力 Vo = -2V

ステップ3:抵抗分圧の復習から増幅率を導く

反転増幅回路の動作をより正確に理解するため、抵抗分圧の基本を確認しておきましょう。

抵抗1つの場合

3Vの電源に1つの抵抗Rを接続した場合、抵抗の両端で3V全体が降下します。抵抗値を変えても降下電圧は変わりません(3Vのまま)。

抵抗2つの直列接続

3Vの電源に2つの抵抗R1, R2を直列接続した場合、各抵抗での電圧降下は抵抗値の比率で分配されます。

R1 = R2 = 10kΩ の場合:

  • R1での降下:3V × 10k/(10k+10k) = 1.5V
  • R2での降下:3V × 10k/(10k+10k) = 1.5V
  • 中間点の電圧:1.5V

R1 = 10kΩ, R2 = 20kΩ の場合:

  • R1での降下:3V × 10k/(10k+20k) = 1V
  • R2での降下:3V × 20k/(10k+20k) = 2V
  • 中間点の電圧:1V

この分圧の考え方が、反転増幅回路の「シーソー」の動きと本質的に同じです。X点を0Vの支点として、入力側の電圧降下と出力側の電圧降下が抵抗比に応じて分配されます。

増幅率の数式による導出

ここからは数式で厳密に増幅率を導出します。

前提条件(理想オペアンプの仮定)

特性理想値意味
開ループ利得仮想短絡が成立する
入力インピーダンス入力端子に電流が流れない
出力インピーダンス0負荷に影響されず電圧を供給できる

導出

回路のX点(R1とR2の接続点 = a点)に注目します。

仮想短絡より、X点の電位「Va = 0V」です

R1に流れる電流 I1 を求めます。

$$I_1 = \frac{V_i – V_a}{R_1} = \frac{V_i – 0}{R_1} = \frac{V_i}{R_1}$$

オペアンプの入力インピーダンスは非常に大きいため、a点にはほとんど電流が流れ込まないと考えることができます。したがって、R1を流れる電流はそのままR2にも流れると見なせます(キルヒホッフの電流則)。

$$I_1 = I_2$$

出力電圧 Vo は次のようになります。

$$V_o = V_a – I_1 \times R_2 = 0 – \frac{V_i}{R_1} \times R_2 = -\frac{R_2}{R_1} V_i$$

増幅率(ゲイン)の公式

$$\boxed{V_o = -G \times V_i}$$

$$\boxed{G = \frac{R_2}{R_1}}$$

ポイント:

  • マイナス符号は信号が反転することを意味する(これが「反転」増幅回路の由来)
  • 増幅率Gは外付け抵抗R1とR2の比だけで決まる(オペアンプの特性に依存しない)
  • R1:R2 = 1:1 → G = 1(等倍、反転のみ)
  • R1:R2 = 1:3 → G = 3(3倍に増幅して反転)

これが負帰還回路の最大のメリットです。オペアンプの開ループ利得が多少バラついても、増幅率は抵抗の精度だけで決まります。

負帰還(ネガティブ・フィードバック)の本質

なぜこの回路が安定して動作するのか、負帰還のメカニズムをもう少し掘り下げます。

フィードバックループの動き

  1. 入力電圧Viが正に変化する
  2. a点の電位がわずかに上昇する
  3. オペアンプは(Vb − Va)を増幅するため、出力が負方向に大きく変化する
  4. 出力の負方向変化がR2を通じてa点に帰還され、a点の電位を引き下げる
  5. 結果としてa点の電位は元の0V付近に戻る(安定する)

この「ずれを検出→補正」のループが負帰還の本質であり、仮想短絡が成り立つ理由でもあります。

正帰還との違い

もしR2をb点(+端子)に接続してしまうと正帰還(ポジティブ・フィードバック)になり、出力は電源電圧の上限または下限に張り付いて発振します。これはコンパレータや発振回路で意図的に使う構成ですが、増幅回路としては使えません。

入力インピーダンスについての補足

反転増幅回路の入力インピーダンスはR1に等しくなります

なぜでしょうか。入力信号源から見ると、信号はR1を通じてX点(仮想接地点 = 0V)に流れ込みます。X点は常に0Vなので、信号源にとっては「R1を通してGNDに電流を流している」のと同じ状態です。

$$Z_{in} = R1$$

これは非反転増幅回路(入力インピーダンスが非常に高い)に比べるとデメリットになる場合があります。入力インピーダンスを高くしたい場合は、R1を大きくする必要がありますが、そうすると増幅率 G = R2/R1 を維持するためにR2も大きくしなければならず、ノイズが増加するトレードオフが生じます。

入力インピーダンスについての補足

反転増幅回路の入力インピーダンスはR1に等しくなります

なぜでしょうか。入力信号源から見ると、信号はR1を通じてX点(仮想接地点 = 0V)に流れ込みます。X点は常に0Vなので、信号源にとっては「R1を通してGNDに電流を流している」のと同じ状態です。

$$Z_{in} = R1$$

これは非反転増幅回路(入力インピーダンスが非常に高い)に比べるとデメリットになる場合があります。入力インピーダンスを高くしたい場合は、R1を大きくする必要がありますが、そうすると増幅率 G = R2/R1 を維持するためにR2も大きくしなければならず、ノイズが増加するトレードオフが生じます。

実験:反転増幅回路を組んで確認する

実験条件

パラメーター
R110kΩ
R233kΩ
増幅率 G33k / 10k = 3.3倍
入力信号正弦波(キット内蔵の発振器、周波数780Hz)

確認すべきポイント

  • [ ] 回路を組めたか
  • [ ] 出力信号が入力に対して反転しているか(位相が180°ずれているか)
  • [ ] R1, R2の抵抗値を変えると増幅率は変わるか

実験結果の読み方

オシロスコープで入力波形と出力波形を同時に観測します。

  • 入力波形:Vi = 2.8Vpp(ピーク・トゥ・ピーク)
  • 出力波形:Vo = 9.4Vpp

実測の増幅率は 9.4 / 2.8 ≈ 3.36倍で、理論値3.3倍とほぼ一致しています。

出力波形は入力波形に対して上下反転していることが確認できます。

実験で躓いたポイント:出力が正弦波にならない!

症状

回路は教材通りに組んだはずです。オシロスコープで確認すると以下のようになりました。

飽和で矩形波になった出力
  • CH1(入力・赤): きれいな正弦波 ✓
  • CH2(出力・黄): 矩形波(台形波)になっている

正弦波の山と谷が切り取られたような波形が出ています。これは明らかに異常です。

原因の特定

落ち着いて計算してみます。

キット内蔵のウィーンブリッジ発振器(OUT4端子)の出力は約4Vppです。

これを反転増幅回路(G=3.3倍)に入力すると、以下のように計算できます。

$$4\text{Vpp} \times 3.3 = 13.2\text{Vpp(必要な出力振幅)}$$

ところが、このキットのオペアンプ(4558D)の電源電圧は±6Vです。オペアンプの出力は電源電圧を超えられないため、実際の出力限界は約±5V(= 10Vpp)です。

よって、13.2Vppを出したいのに10Vppしか出せなかったため、はみ出した部分がクリップされて矩形波(台形波)になってしまったのです。

最初に試した対処(失敗)

ウィーンブリッジ発振器のVR1(半固定ボリューム)を回して出力を下げようとしました。

結果:不安定で使い物になりませんでした。

VR1は発振回路のゲインを調整する素子です。振幅を下げようとしてゲインを落とすと、発振条件ギリギリになって波形が歪んだり、発振が止まったりします。VR1はあくまでも「きれいな正弦波が出る位置に固定する」ためのものであり、振幅調整ノブではありません。

半固定ボリュームの劣化によって内部がさびたりして微調整がうまくいかないのかなとも思い、新しい半固定ボリュームへの交換も検討しました。
※誤った解決アプローチ

解決策:抵抗分圧回路の追加

根本的な解決は発振器とオペアンプの間に分圧回路を入れて、入力振幅を落とすことです。

手持ちの抵抗ケースから適切な値を選び、基板のジャンパーピン端子を利用して分圧回路を挿入しました。ハンダ付け不要です。

解決後の波形

成功:入力(赤)に対して反転・増幅された出力(黄)
  • CH1(入力・赤): 正弦波 ✓
  • CH2(出力・黄): 正弦波、位相180°反転、約3.3倍に増幅 ✓

理論通りの反転増幅動作が確認できました。

分圧回路を追加した基板全体

練習問題

条件:R1 = 10kΩ、R2 = 33kΩ

問1:入力信号電圧が直流の +1.0Vdc のとき、出力電圧はいくらか?

解答:

$$V_o = -\frac{R_2}{R_1} \times V_i = -\frac{33k}{10k} \times 1.0 = -3.3 \text{ Vdc}$$

負符号はマイナスの反転電圧を表します。Vdcは直流電圧の意味です。

問2:入力信号を交流の 1.0Vpp(ピーク to ピーク)とすると、出力電圧はいくらか?

解答:3.3Vpp

ここで注意が必要です。単純に Vo = -G × Vi の公式に代入すると -3.3Vpp になりそうですが、これは誤りです

Vo = -G × Vi は瞬時値(ある瞬間の電圧値)に対する式であり、Vpp(波形の振幅幅)にそのまま適用するものではありません。

正しい考え方は、瞬時値で追いかけることです。

入力 1.0Vpp → 瞬時値は +0.5V ~ -0.5V を往復

瞬時値 +0.5V のとき → Vo = -3.3 × 0.5 = -1.65V
瞬時値 -0.5V のとき → Vo = -3.3 × (-0.5) = +1.65V

出力の振幅幅 = |+1.65 - (-1.65)| = 3.3V
∴ 出力は 3.3Vpp

ポイント:Vppは波形の「山から谷までの幅」を表す量であり、距離や長さと同じく常に正の値をとります。 反転によって波形は上下ひっくり返りますが、幅そのものは変わりません。マイナスの長さが存在しないのと同じ理屈です。

結果的に Vpp(出力) = G × Vpp(入力) で計算は合いますが、それは「幅にゲイン倍をかけた」という意味であり、符号(反転)の情報はVppには含まれません。

問3:入力信号電圧 Vdc が -3.0V のとき、出力電圧はいくらになるか?(電源電圧 ±6V)

解答:

理想的な計算では:

$$V_o = -\frac{33k}{10k} \times (-3.0) = +9.9 \text{ Vdc}$$

しかし、このキットのオペアンプの電源電圧は±6Vです。オペアンプの出力は電源電圧を超えることができないため、飽和出力電圧は約±5V程度に制限されます(電源電圧から1V程度低い値が一般的)。

したがって、実際の出力は 約+5Vdcで飽和(クリップ) します。

分圧回路を組み込む前に私が陥った罠が、問3と関連したことに後で気づきました。

飽和についての補足

オペアンプの出力が電源電圧付近に達すると、波形がクリップ(頭打ち)されます。これは歪みの原因になるため、実用回路では以下に注意してください。

  • 増幅後の信号振幅が電源電圧の範囲内に収まるよう設計する
  • Rail-to-Rail出力のオペアンプを使えば、電源電圧ぎりぎりまで出力可能
  • 一般的なオペアンプでは電源電圧より1〜2V低い範囲が出力限界

反転増幅回路の利用場面

反転増幅回路は、信号が反転しても問題ない場面で広く利用されます。

  • オーディオ回路 — プリアンプ、ミキサー回路(複数入力の加算に応用可能)
  • センサー信号の増幅 — 微弱な信号を扱いやすいレベルまで増幅
  • アクティブフィルター — R2をコンデンサーに置き換えると積分回路になる
  • 反転が必要な信号処理 — 位相反転、符号反転

ただし、反転しても問題ない場合でも、入力インピーダンスがR1に制限される点は留意すべきです。高インピーダンスの信号源を扱う場合は、非反転増幅回路やボルテージフォロワーを前段に入れるのが定石です。

本実験から学んだこと

  1. オペアンプ実験では「入力振幅の管理」がもっとも重要。回路を組む前に「増幅後の出力が電源電圧の範囲に収まるか」を必ず計算する
  2. 発振器のゲイン調整(VR1)で振幅を下げるのは悪手。発振条件が崩れて不安定になる。振幅を下げたいなら分圧回路を使う
  3. 「回路は合っているのに期待通りの出力が出ない」ときは、入力信号を疑う。回路の問題ではなく入力条件の問題であることが多い
  4. 問題3(練習問題)で学ぶ「飽和」は、教科書の中だけの話ではない。実験で最初にぶつかる壁がまさにこれ

まとめ

項目内容
出力電圧Vo = −G × Vi
増幅率G = R2 / R1
増幅率の決定要素外付け抵抗の比のみ(オペアンプ特性に非依存)
入力インピーダンスR1
位相入力に対して180°反転
帰還方式負帰還(ネガティブ・フィードバック)
重要概念仮想短絡(イマジナリーショート)

反転増幅回路がなんとなく理解できたので、次の非反転増幅回路に進みます。
反転増幅回路との違いと、それぞれの使い分けを学ぶことで、オペアンプの基本を習得したいところです。