iDeCo+小規模企業共済の出口戦略【フリーランスのための老後資産運用】
目次
はじめに
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
コーストFIRE中のIPUSIRONです😀
はじめに
個人事業主には退職金がなく、受給金額が少ない国民年金しかありません。よって、老後資産を確保するには、現役時代から老後資金を自分で準備をしておく必要があります。
過去に関連記事を書いたので参考にしてください。
一時金(一括でもらうこと)と年金(分割でもらうこと)のどちらが得か
結論から言えば、(iDeCoや小規模企業共済の場合は)一時金の方が圧倒的にお得です。
どちらも所得税の課税対象ですが、一時金だと退職金として扱われて、課税される方式が有利だからです。その結果、税負担はゼロになったり、負担があったとしても年金よりもはるかに低くなったりします。
結論さえわかれば、以下の説明を飛ばしても構いません。
本記事のテーマは一時金を選ぶ上でどう受け取るのがよいのかという点です。
一時金が有利な理由
一般には一時金でもらうと、会社から退職金を受け取った場合と同様に扱われます。
退職金は長年の労働による功労を一時的にもらうことから、金額が大きくなりがちです。そういった金額に累進課税(金額が大きくなるにつれて税率が上がる課税方式)を適用すると不利になってしまいます。また、退職金は一般に老後資金に充てられるケースが多いといえます。こうしたことを考慮して、他の所得よりも税負担が小さくて済むようになっているのです。
退職所得=(退職金-退職所得控除)÷2
退職所得控除は、勤続年数が20年以下の部分については年40万円、20年超の部分は年70万円になります。
さらに、退職所得は分離課税なので、他の所得(給与所得や事業所得など)と合算しないで税率が掛けられます。そのため、他の所得を持つ人にとっては税率を抑える効果があります。
年金が不利な理由
年金で受け取ると、公的年金等の雑所得になります。
国民年金などと合算されて、そこから一定の公的年金等控除を差し引きます。そして、他の所得との合計金額について累進課税が適用されます(総合課税)。
小規模企業共済
小規模企業共済は中小零細事業者のための退職金制度です。
細かい特徴はよいとして、ここでは本記事を読むために以下の特徴を抑えておいてください。
- 60歳まで加入できます[1]2022年以降は65歳未満まで延長される予定です。。
- 加入資格は個人事業主、小規模企業の経営者など。会社員は加入不可。
- 掛金は月額1,000円~7万円。
- 500円単位でいつでも増額・減額できる。
- 掛金の全額が所得控除の対象。
- 所得税と住民税が安くなる。
- 引退して個人事業を廃止したり、65歳以上で掛金の払込期間が180ヶ月以上になったときに、一時金や年金形式で共済金を受け取れる。
- 受け取るときに全額が課税対象になるが、一時金でもらうと退職所得になるので税金が安くなる。
- 退職所得は勤続年数(小規模企業共済は加入期間)に応じて1年間につき40万円(20年を超過した分は年70万円)だけ控除できる。
【例】課税所得が400万円で計算してみる
このとき、所得税20%、住民税10%、(330万円超の部分に)[2]所得税は超過累進課税であり、階段状に税金が高くなります。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm合計30%の税金がかかります[3]この他にも2037年まで復興特別所得税として2.1%がかかります。。
小規模企業共済の掛け金が月3万円であれば年間36万円(=3万円×12ヶ月)になります。その金額の30%である、10万8,000円(=36万円×30%)分の税金が安くなります[4]言い換えると、課税所得が36万円減るということであり、その分税金が安くなるわけです。。
20年間加入して一時金で受け取った場合を考えてみます。一時金でもらえる共済金は、797万6,400円(=3万円×12ヶ月×20年+基本共済金+付加共済金)になります。それに対して、退職所得控除は800万円(=40万円×20人)です。
控除額の方が大きいため、一時金に一銭も税金がかからない計算になります[5]一時金が退職所得控除を上回っても、その2分の1が退職所得になります。計算式はすでに言及済みです。。
よって、毎年節税でき、退職金も無税になります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは掛金の運用先を選ぶ積立制度です。
細かい特徴はよいとして、ここでは本記事を読むために以下の特徴を抑えておいてください。
- 個人事業主の場合は年間の上限は81万6,000円[6]ただし、国民年金基金との合算額がこれを超えるようにはできません。。
- 掛金の全額が所得控除の対象。
- 運用期間中は課税されない。
- 一時金としてもらえば退職所得になる。
iDeCoと小規模企業共済の出口戦略
iDeCoのみに加入 | 一時金としてもらう |
小規模企業共済のみに加入 | 一時金としてもらう |
iDeCoと小規模企業共済の両方に加入 | 一時金としてもらうが、受け取るタイミングをずらす |
会社員で確定拠出年金を支払っていて、会社の退職金がある場合も同様に考えます。
一定期間に複数の退職金をもらうと退職所得控除が満額控除にならない【退職金の5年ルール】
退職金は受け取る前年以前4年内に別の退職金がある場合、それらの勤続年数の重複期間を含めずに退職所得控除を計算するというルールがあります。
逆に言えば、5年以上空ければ、それぞれの退職金はそれぞれ最大の退職所得控除が使えて最もお得になります。
よって、2つの退職金があれば、5年以上空けるべきです。
重複制限期間を考慮して退職金を受け取る順番を考える
それではiDeCoと小規模企業共済の一時金をもらうタイミングを5年空ければ、どちらを先にしてもよいのかというとそう単純ではありません。
満期 | 重複制限期間 | |
---|---|---|
iDeCo | 60歳 | 前14年 |
小規模企業共済 | 65歳 or 引退時期 | 前4年 |
iDeCoの重複制限期間が前14年というのは、前年以前14年以内に退職金を受け取っていると、退職所得控除の重複分を差し引くというルールがあるのです。
つまり、iDeCoの一時金より先に小規模企業共済の一時金(別の退職金も同じ)を受け取ってしまうと、15年以上を空けない限り退職所得控除の枠が小さくなって損をするのです。
一方、小規模企業共済の重複制限期間は前4年なので、5年以上空ければよいことになります。
iDeCoは60歳で満期であり、その時点でiDeCoの一時金を受け取ります。その後65歳以降になれば、小規模企業共済の一時金を受け取るのです。
こうすることで、もっともお得に受け取れることになります。
国民年金基金を使い分ける
国民年金基金はフリーランス向けの国民年金の上乗せ制度です。
- 掛金の年間の上限は81万6,000円[7]ただし、iDeCoとの合算額がこれを超えるようにはできません。。
- 元本割れは絶対にない(ただし、国民年金基金自体が解体した場合は別)。
- 掛金は所得控除の対象になる。
- 受取は年金形式でもらうので、退職所得のような控除枠はなく税金がかかる。ただし、国民年金の受給額と同様な課税が適用されるので、税負担はかなり軽減される。
References
↑1 | 2022年以降は65歳未満まで延長される予定です。 |
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↑2 | 所得税は超過累進課税であり、階段状に税金が高くなります。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm |
↑3 | この他にも2037年まで復興特別所得税として2.1%がかかります。 |
↑4 | 言い換えると、課税所得が36万円減るということであり、その分税金が安くなるわけです。 |
↑5 | 一時金が退職所得控除を上回っても、その2分の1が退職所得になります。計算式はすでに言及済みです。 |
↑6 | ただし、国民年金基金との合算額がこれを超えるようにはできません。 |
↑7 | ただし、iDeCoとの合算額がこれを超えるようにはできません。 |