高校英語”I’d like you to be my wife.”と実用表現”Will you marry me?”とのギャップ
目次
はじめに
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
ミジンコに転生したIPUSIRONです😀
『高校英語を5日間でやり直す本』を再読していて、point 12「V+O+to不定詞①」(P38)で紹介されている英文が気になりました。
実際の英文は以下のとおりです。
“I’d like you to be my wife."(君に、ぼくの妻になってほしい)
文法的には正しいかもしれないが、実際のプロポーズ表現としてどうなのだろうと思い、調べました。
その結果、実用表現"Will you marry me?"のほうが好ましいことが判明しました。
本記事はその調査結果になります。
【文法的な骨格】V+O+to不定詞
まずは文法の整理からです。
“I’d like you to be my wife."は、典型的な次の構文です。
I’d like + 人 + to do
分解すると、以下のようになります。
- I’d like
→ I would likeの短縮形
→ I wantに置き換えられるが、I would likeで控えめな希望 - you
→ その行為をしてほしい相手 - to be my wife
→ 私の妻である状態になること
→beは状態動詞。「変化」ではなく、「そうである状態」
構文"I’d like + O + to不定詞"を用いた例
この構文は、次のような文でも頻繁に使われます。
- I’d like you to help me.
- I’d like you to sit here.
- I’d like you to be honest.
「相手に何かをしてほしい」「ある状態でいてほしい」という意味を表す、非常に重要な構文です。
文法教材としては、きわめて良い例文だと言えます。
構文"V + O + to不定詞"を用いた例
- tell + O + to do 「Oに~するようにいう」
- advise + O + to do 「Oに~するように勧める」
- ask + O + to do 「Oに~するように頼む」
tellとaskは、後ろに置く形によって意味が変わります。
一方向の希望表明を表わすことの問題性
これは英語で、「私は、その人に〜してほしい」という一方向の希望表明を表します。
重要なのは、この構文が本質的に
- 自分の内側の感情・希望を述べる文
- 相手の反応を文法的には要求していない
という点です。
likeの代わりにloveに言い換えても本質は変わらない
ここで使われているlikeは、単なる動詞ではありません。感情を表す動詞(emotion verb)です。
- like(好む)
- love(愛している)
- hate(嫌う)
- want(欲する)
これらはすべて、「自分の気持ちがどうであるか」を述べるための動詞です。
つまり、
I’d like you to be my wife.
I’d love you to be my wife.
どちらであっても、
- like → 控えめな感情
- love → 強い感情
という違いはあっても、構文の性質は同じです。
どちらも「私はこう思っている」「私はこう望んでいる」という自己完結型の文です。
reallyで強調しても、本質は変わらない
次に、強調表現を見てみます。
I’d really like you to be my wife.
I’d really love you to be my wife.
reallyは、確かに感情の強度を上げます。
しかし文法的には、
- 希望文であること
- 宣言文であること
- 相手の意思を直接問わないこと
は一切変わりません。
つまり、強調しても、感情を深くしても、文の向きはずっと「自分→相手」のままです。
一方、疑問文は「構造そのものが違う」
ここで対照的なのが、疑問文です。
Will you marry me?
この文は、構造的にまったく別物です。
- 希望の表明ではない
- 感情の宣言でもない
- 意思の有無を相手に問いかける文
になっています。
文法的に見ると、以下のようになります。
- 主語:you
- 動詞:will marry
- 問題にしているのは「あなたの意志」
話の主導権が、完全に相手側に移っています。
will は「未来」ではなく「意志」
学校英語では、「will = 未来」と最初習いますが、ここでは違います。
“Will you ~ ?"は、「~する意志はありますか?」「~するつもりはありますか?」という意思確認です。
そのためこの文は、未来予測ではなく、意思決定の確認文になっています。
なぜ 4語なのか:重要な意志決定は短く
Will you marry me?
この文が4語しかないことにも意味があります。
- 修飾語がない
- 感情語がない
- 曖昧さがない
重要な意志決定ほど、
- 短く
- 明確に
- 解釈の余地を残さず
というのが、英語の基本姿勢です。
感情は前後で語ればよいのです。決断そのものは、削ぎ落とした形で問うべきです。その結果、残ったのがこの4語です。
【小まとめ】文法が語っていること
整理すると、こうなります。
- like / love + to不定詞
→ 自分の感情・希望を述べる構文 - really を足しても
→ 一方的であることは変わらない - 疑問文にすると
→ 主導権が相手に移る - marry
→ 状態ではなく行為 - Will you marry me?
→ 最短・最明確な意思確認文
文法は「使い分けの理由」を説明してくれる
ここで大事なのは、高校英語の例文がダメなのではなく、使われる場面が違うという点です。
- 構文理解の教材として
→ I’d like you to be my wife. - 人生の重要な意思決定の場面では
→ Will you marry me?
文法を「正誤判定の道具」ではなく、表現選択の理由を説明する装置として見ると、英語は一気に立体的になります。
英語で命令文が避けられる理由
英語学習をしていると、「文法的には命令文で書けるのに、実際には使われない」という場面にたびたび出会います。
たとえば、文法的には可能です。
Be my wife.
しかし、これは英語圏ではほぼ使われません。なぜでしょうか。
命令文は「相手の選択肢を消す」文型
命令文の本質はシンプルです。
- 主語が省略される
- 動詞が文頭に来る
- 相手に行為を強制する
つまり命令文は、文法構造そのものが「あなたは、そうする」と決め打ちしています。
英語では、相手の意思決定が重要な場面ほど、命令文は不適切とされる傾向があります。
結婚のような人生の重要事項で命令文を使うと、以下の印象を強く与えてしまいます。
- 高圧的
- 支配的
- 相手の自由意思を無視している
英語は「文法でポライトネスを表現する言語」
英語では、丁寧さや配慮を言葉遣い・文法構造で表現します。
そのため、
- 命令文 → 強すぎる
- 希望文 → 一方的
- 疑問文 → 相手の意思を尊重
という使い分けが、文法レベルで自然に行われます。
よって、"Will you ~ ?"という疑問文が多用されるのは、偶然ではありません。
命令文が使われるのは、責任の所在が明確な場面
逆に言うと、英語でも命令文が使われる場面はあります。
- Fire!(軍・警察)
- Stop!(緊急時)
- Please sit down.(形式的命令)
これらはすべて、以下の条件が揃っています。
- 判断の余地がない
- 指示者が責任を負っている
- 即時性が求められる
結婚の申し出は、その真逆です。
英語では、感情と意思決定が文として分離される
英語の定番プロポーズ表現は、非常に短い疑問文です。
Will you marry me?
この文には、
- love
- really
- forever
といった感情語は含まれていません。
しかしそれは、感情が軽いからではありません。
結婚という意思決定を問う文は、それ単体で明確に置くという考え方があるからです。
感情は、その前後で別の文として語られます。
I love you.
Will you marry me?
感情の表明と、行為の選択。それぞれが別の役割を持ち、文として切り分けられています。
感情語を混ぜると、問いが歪む
感情と意思決定を一つの文にまとめると、問いの性質が変わってしまいます。
たとえば、
I love you, so will you marry me?
この文は文法的には成立しますが、
- 感情が理由になっている
- 相手に心理的な圧がかかる
- Yes / No の対称性が崩れる
という問題が生じます。
英語では、意思決定の問いは、できるだけ中立であることが好まれます。
希望文も「分離されない」
I’d like you to be my wife.
I’d love you to be my wife.
これらの文は、
- 感情(like / love)
- 希望(~してほしい)
が一つの文にまとまっています。
そのため、
- 自分の気持ちを伝える文
- 相手の意思を問う文
としては、構造的に異なります。
英語では、希望の表明と意思決定の確認は、別の文型で扱われるという違いが見えてきます。
他の言語でも見える「分離」の発想
ここまで、英語では感情と意思決定が文として分離されやすいという点を見てきました。
では、これは英語だけの特徴なのでしょうか。他の言語も、同じ視点で眺めてみます。
スペイン語の場合
スペイン語の定番表現は、次の形です。
¿Quieres casarte conmigo?
私と結婚する意志はありますか?
ここで注目したいのは、
- quieres(~したいか/意志)
- casarte(結婚するという行為)
という構成です。
この文自体には、感情語は含まれていません。
英語と同様に、
- 行為の選択
- 相手の意志
だけを、疑問文で直接問っています。
感情を伝える場合は、別の文になります。
Te amo.
あなたを愛している。
¿Quieres casarte conmigo?
感情と意思決定が、文として明確に分けられている点は、英語とよく似ています。
中国語(普通話)の場合
中国語では、次のように言います。
你愿意嫁给我吗?
あなたは私に嫁ぐ意志がありますか?
ここでも、
- 愿意(進んで~する気がある)
- 嫁给(結婚する行為)
- 吗(疑問文マーカー)
という構造になっています。
この文は、
- 感情の説明ではなく
- 意志の有無を確認する問い
です。
感情は、別の文で語られます。
我爱你。
你愿意嫁给我吗?
中国語でも、感情と意思決定は混ぜないという構造が自然です。
ドイツ語の場合
ドイツ語では、次の形が一般的です。
Willst du mich heiraten?
あなたは私と結婚したいですか?
ここでも、
- willst(~したいという意志)
- heiraten(結婚する行為)
が文の核になっています。
感情語は含まれていません。
Ich liebe dich.
Willst du mich heiraten?
このように、感情と意思決定はやはり別の文として表現されます。
共通点:感情は語るが、決断は問う
これらの言語を並べてみると、共通点がはっきりします。
- 感情は否定されていない
- しかし、意思決定の問いには混ぜられない
- 結婚は「状態」ではなく「行為」
- 行為は、疑問文で、相手の意志として問われる
つまり、
- 感情は語るもの
- 決断は選ぶもの
という役割分担が、複数の言語にまたがって見えてきます。
英語だけが特別なのではない
“Will you marry me?"が特別に冷静だったり、感情に乏しい表現だったりするわけではありません。
むしろ、
- 感情と意思決定を分離する
- 重要な選択ほど短く、明確に問う
という考え方が、英語を含む多くの言語に共通している、と見る方が自然です。
まとめ
- “I’d like you to be my wife."は、感情や希望を述べる文で、構文理解の教材として優秀
- “Will you marry me?"は、相手の意志を問う疑問文で、実用表現として自然
- 英語では、感情の表明と意思決定の問いを同じ文に混ぜない傾向がある
- 結婚のような重要な選択ほど、短く明確な表現が選ばれる
高校英語と実用英語の違いは、正誤ではなく役割の違いとして見ると理解しやすくなります。






















